映画「国宝」がヒットするも日本の伝統芸能が存亡の危機…未来に繋げていくためには?和泉元彌が狂言の魅力を熱弁
2026.03.19(木)
06:50
TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では、狂言師の和泉元彌さんを迎え“日本の伝統芸能の未来”について議論。前半の今回は、和泉さんが狂言の魅力を熱く語りました。
◆最悪の場合、日本の伝統文化消失も…
歌舞伎界の愛憎劇を描いた映画「国宝」が大ヒットする一方、歌舞伎を含めた日本の伝統芸能をとりまく環境は変化し、今、大きな岐路に立たされています。

公益社団法人 能楽協会の会員数は2002年度は1,545人でしたが、2021年度は1,078人にまで減少。さらに、地方で農村歌舞伎を行う団体は危急存亡の秋を迎えています。

その要因は少子高齢化や娯楽の多様化。加えて、伝統芸能で使われる言葉の難しさや作法の有無など鑑賞へのハードルも。

このまま継承者が途絶えてしまったり、鑑賞者が減ると最悪の場合は日本独自の文化が失われることもあり得ます。

そんな日本の伝統芸能を守っていくためにはどうすればいいのか。今回は社会起業家の白井智子さん、統計家の西内啓さん、哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さん、そして狂言師で俳優の和泉元彌さんとともに議論しました。

まず和泉さんは「伝統芸能は“無形の芸術”といわれる世界で、形があって残っていくものではないからこそ、演じる人・見る人がいて時間・空間を共有するからこそ姿を現す」とその本質に言及しつつ、「(芸を)次の世代の担い手に渡していけることが一番の幸せ。それができないのはたまらないと思います」と当事者としての率直な思いを吐露。

他方で白井さんは「自分は最初、能や歌舞伎に学校で連れて行ってもらった。そうやって誰もがそこにアクセスできることが出発点だと思う」と自身の経験を振り返り、義務教育の一環で伝統芸能に触れることを提案。

西内さんも「自分も(最初は)人に誘われて行った。それぐらいしか行く機会がないことを考えると、最初のきっかけをいかに設計するかは大事で、すでに行かれている方はいかにファンコミュニティを作っていくか。これはいろんなエンタメ業界が頑張っているところで、すごく重要」と追従します。

“話題作り”という点では以前、お笑いコンビ「チョコレートプラネット」の長田庄平さんが和泉さんの狂言のモノマネをし、大きな注目を集めましたが、和泉さん自身、これは「とてもいいきっかけだった」と言います。

「狂言師が『狂言は面白い』というのは当たり前。でも、それを全く違う分野の人が興味を持って、特に長田君のように“モノマネ”という形でやると(それを見て)『自分でも声に出してみようかな』、『声を出してみたら面白い』と思う。そういうのは自分たちではできない広がり方なのでいいきっかけだったと思います」と和泉さん。

また、この日初めて和泉さんの狂言を間近で見た萱野さんは「圧倒された。やっぱりその場で見ることが大事。そうするとマネしてみようと思ったり、マネをしてみるとそのスゴさ、奥行きなどがわかる。なので、やはり直接触れる機会をどう増やすかが重要」と主張。

キャスターの堀潤からは「映画『国宝』では、直系の一門の息子と外の世界から入ってきた人の2人がいて “誰が受け継ぐのか”、“誰が受け継げるのか”という問題があったが、これは非常に大きなテーマなんじゃないか」と伝統芸能に関する疑問が。これに和泉さんは「基本的に(一門の)家の子しかできないものではないことは理解していただきたい」と返答します。

さらには、「特に狂言の場合は外から入ってきた人も舞台に立てますし、1曲のシテ(主役)を演じる機会も多く与えられます。そういう意味では個人の勝負」と語る傍ら「ただ、それぞれの時代に横に広がっていく起点になるのは家の芸を受け継いだ人間。これは致し方ない部分でもある」とも。

◆鑑賞への4つの高いハードル
演じる側だけでなく、観る側の問題もあります。近年、伝統芸能の鑑賞機会が減少しています。国立劇場の入場者推移を見ると、1980年は約30万人でしたが、閉館前の2022年は15万人と半減。なお、国立劇場は2021年に民間資金活用による建て替えが決定しましたが事業者が決まらず、現在は2033年度の再開を目指しています。加えて、伝統芸能が観られるその他の会場、新宿朝日生命ホールや前進座劇場、横浜能楽堂なども閉鎖や老朽化による改修工事などで休館が相次いでいます。

また、伝統芸能の鑑賞にも課題が。“若年層との接点不足”や“難しい言葉と独特の間”、何を着て行けばいいのか、いつ拍手をすればいいのかなど“作法への不安”、あらすじや歴史など“予備知識の必要性”など「鑑賞にハードルを感じる」との意見もあります。

なお、2024年の文化庁の調査では直近の1年で外出を伴う形で伝統芸能を鑑賞した人は 2.7%にとどまっています。

キャスターの田中陽菜は、映画「国宝」をきっかけに始めて歌舞伎を鑑賞したが、この4つの不安が付きまとっていて、歌舞伎が好きな人に連れられて初めて行くことができたと明かします。

こうした不安は和泉さんが若い頃も必ず言われていたそうで「自分たちが『気軽にきてください』ともっと発信しなければ」、さらには「今であればSNSで、お客様目線で共感していただける発信を」と決意を新たに。

◆狂言師・和泉元彌さんが語る狂言の魅力
一方、西内さんからは「予備知識という意味では、我々は最近時代劇を観ていない。かつては時代劇や講談で自然と学んでいた歴史を今の若者は知らなかったりする」との指摘が。

これに和泉さんは「狂言はどこどこの誰と(具体的に)言わない演目が多く、“この辺りの者でござる”といい、実は皆さんの身近で起きている話として600年演じている」と言います。
そのため「伝統芸能は変わらずに残ってきたから伝統芸能と言われるようになったんですけど、ひとつ壁になっているのが(今まで)“変えずにきた”と思っている方が多いが“変える必要がなかった”と思っていただきたい」と説明。

さらに「形を変えずに残ってきたというのは、それぞれの時代の人が共感して“面白いな、素晴らしいな”と思っているので後世に残していこうということ。なので、そのまま観ていただいて、100%理解することよりも“考えるな、感じろ”なんですね。音を聞いて『人間の声の力って』と思ったり、『衣装って昔からこの色使いがあったんだ』というのもそうですし、昔の人が作ったものを観て、狂言は喜劇なので笑っている自分に驚くと思うんです」と見方を伝授。
そして和泉さんは、狂言の演目を観ることで「(狂言が生まれた西暦)600年以降の歴史上の人物も観ている可能性がある。憧れの人物と同じものを見て笑っている(かもしれない)。それぞれの時代と同期するという、伝統芸能でしかない経験ができる」と狂言の魅力を熱弁していました。

後半では、伝統芸能の深刻な現状を踏まえ、日本の伝統芸能をどう守っていけばいいのか、識者がさまざまな提言を行います。
<後半はコチラ>
<番組概要>
番組名:「堀潤激論サミット」
放送日時:毎週金曜 21:00~21:25 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
「TVer」で放送後1週間Tverにて無料配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx





