「介護前のトリセツのような作品」中瀬ゆかり激推しの1冊! 80代の父との生活をユーモアたっぷりに昇華したジェーン・スーの新書「介護未満の父に起きたこと」

2025.09.13(土)

11:50

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。8月28日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。8月28日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【“中瀬親方”による2025年8月のおすすめ作品】

◆関脇
漫画「めじとやも」
著:しけたいぬ(KADOKAWA)

自然界で暮らすメジロの「めじ」とヤモリの「やも」の2匹の主人公が、周囲の人間やネコの様子を面白おかしく観察する様子を描いた、漫画家・しけたいぬによる話題作。

<注目ポイント>
脱力系なのに哲学的? 動物版・上方漫才

中瀬親方のコメント「例えば、人間のことはキショキショ縦長生物って呼んだり、人間がネコのトイレ掃除のときに袋にうんこを入れているのを見て『人間は、ネコのうんこが欲しくて同居しとるんちゃうか』って仮説まで立てたり、人間やネコの様子をユニークな視点かつ、関西弁の軽妙なやり取りで面白おかしく表現していて、そのかわいらしさに思わず声を上げて笑ってしまう場面が何ヵ所もありました。

とにかく終始楽しく読み進められる作品ではあるんですが、一見くだらない雑談のなかにも何気ないひと言が妙に哲学的なところも特徴のひとつで、例えば、人間がキショい理由を聞いためじが『やもは、非合理的な行動から来る不可解さをキショいと表現してんねや』と言う部分があるんですけど、ほのぼのとしてかわいいなと思いながら楽しく読んでいると、急に哲学的になっちゃったりするんで、読み終わった後にどこか考えさせられるような不思議な読後感も魅力的です。ほのぼのとした会話のなかにユーモアと哲学が潜む日常譚、動物版・上方漫才をぜひ体験してみてください!」

◆大関
映画「ラスト・ブレス」
9月26日(金)より全国ロードショー

若き飽和潜水士のクリス(演:フィン・コール)が、ベテラン隊員のダンカン(演:ウディ・ハレルソン)や先輩隊員のデイヴ(シム・リウ)らとともに、北海の海底に張り巡らされたガスのパイプラインを補修するミッション中に巻き込まれてしまった海難事故の様子を描いたサバイバル・スリラー。極限状態のなかで起きた救出劇を描いた、実話に基づく作品。

<注目ポイント>
仲間との絆が生んだ息詰まる救出劇

中瀬親方のコメント「潜水装置で3人は水深91mの真っ暗な海底に降り立って、デイヴとクリスがそこから出てパイプラインの補修を行うんですが、作業開始直後に海上にいる船にシステム異常が起こるんです。しかも、運悪く暴風雨も到来して船が流されてしまう。そして、2人は作業を中断して避難しようとするんですけど、クリスの潜水服に酸素を送り込んでいたケーブルが作業場に引っかかるという恐ろしいトラブルが起きてしまい、先輩・デイヴが『緊急ボンベに切り替えるんだ!』と指示するも、暴風雨の影響で今度は命綱が切れて、クリスは深海へと落ちてしまうんです。

緊急用ボンベの酸素はもっても10分で、通信も途絶えて船も流されるという絶体絶命のなか、深海で消えたクリスの一刻一秒を争う救出が始まります。とにかく手に汗握りまくりの展開になってきて、気がつけば私は終始前のめりの姿勢で固唾を呑んで見守っていました。

実話をもとにした作品なので、心拍数爆上がりの緊迫感が溢れるのはもちろん、閉所空間とか深海で繰り広げられる人知の限界を超える救助を見事に手に汗握るサスペンスに昇華させていて、しかも(本編は約)90分と短いながら、まるで自分がそこに居て自分の身に起きているかのような、観ていてちょっと呼吸が浅くなるような、深海に取り残されてるような、体験没入型の映画に仕上がっています。絶体絶命の全身が冷え切るこの作品、ぜひ劇場で鑑賞してください」

◆横綱
新書「介護未満の父に起きたこと」
著:ジェーン・スー(新潮新書)

82歳でひとり暮らしを始めた“老人以上、介護未満”の父と、作者である娘のジェーン・スーとの七転八倒の5年間を描いたノンフィクション作品。

<注目ポイント>
軽妙な筆致で綴られた「介護前夜」トリセツ

中瀬親方のコメント「この作品は、要介護には至ってないけれども、家事がほとんどできない父親のためにスーさんが実践してきた生活のサポートを、当時の心情とともに綴っています。

唯一の家族であるスーさんは、毎食の手配から炊事、洗濯、掃除まで、あえてビジネスライクにサポートするんですが、この“ビジネスライクに”というところがとにかくポイントなんです。

まずスーさんは、父のサポートのゴールを『父が精神的・肉体的に穏やかなひとり暮らしを1日でも長く続けられること』と設定して、そこからそのために必要なこと、父がひとりでできること・できないこと、誰かに頼みたいこと……と細分化することで課題を可視化していき、家事代行サービスや配送アプリなども上手く取り入れながらスマートにミッションを運行していくんです。

ここで私が感じたのがLINEの力で、うちの90歳の母にも早めに覚えさせておいたので助かってるんですけど、この本のなかでも大活躍していて、本当に今から親御さんにも絶対教えたほうがいいアイテムだと思います。

普通は、年取った気難しい父の面倒を見るなんて、ましてや父と娘の関係だったら衝突しそうじゃないですか? でも、スーさんはすごくて、父のことをミック・ジャガーだと思って接してるんです。というのも、言うことがコロコロと変わる気難しい海外のビッグタレントと思えば、何を言われても衝突せずに上手くやっていけるから、という理由で。もちろん頭にくることもたくさんあるし、そういった場面も出てきますが、そこはさすがスーさんで、軽妙な筆致でとてもユーモラスに描いて、親の老いと向き合うスーさんのリアルな体験を笑いで包んだような1冊に仕上がっています。

今の高齢化社会で多くの人が直面している社会的なテーマなんですが、私はスーさんの立場というより、いつの間にか父親の立場のほうに自分を置いて読みふけっていました。なぜなら、老後の自分を考えたときに、私にはスーさんのような子どももいないわけで、自分の来たるべき未来図を考える上でも“あぁ、そうか……”といろいろ考えさせられた大切な1冊になりました。

(題材的にも)誰も無関係ではないというか、子どもの立場でも親の立場でも。切実でありながらも、とにかくユーモアたっぷりに書かれた、介護前のトリセツのような作品になっています。ぜひ、いろんな年齢層の方々にとって考えるヒントにしてもらいたい1冊です」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回9月のエンタメ番付は、9月25日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
メインMC:垣花正、大島由香里          
アシスタントMC:ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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