TOKYO MX(地上波9ch)朝の情報生番組「おはリナ!」(毎週月~金曜7:00~)。「TOKYO LENS」のコーナーでは、TOKYO MXの曹蒙記者が外国人記者の視点から、江戸時代から続く「日本の涼」を取材しました。

◆外国人が聞く「風鈴」の音色
風に揺れて鳴るガラスの「風鈴」の音。エアコンましてや扇風機もない時代から、日本人は風鈴の音にいっときの涼を感じていました。
しかし、来日した外国人に風鈴の音を聞いてもらうと、フランスから来た男性は「私の父親が料理している時の音を思い出すよ」と、意外な感想を口にします。また、アメリカからの観光客は「良いね。聞くと嬉しくなる」「ダンスしたくなるような音ね」と、涼しさとは異なるイメージを抱いたようです。
彼らに、風鈴の音で日本人が涼しさを感じていることを伝えると「驚きね。音を聞いて涼しくなるなんて素晴らしいわ」と、その風情に驚いていました。
◆職人技が支える「江戸風鈴」の涼やかな音
東京・台東区にある江戸風鈴の工房「篠原まるよし風鈴」では、約300年前から続く江戸風鈴を今に継承しています。
職人の篠原孝通さんは、型を使わず、息を吹き込む「宙吹き」と呼ばれる技術で江戸風鈴を作ります。「(厚みが)均等にいなるように回しながら息を吹くのがポイント」といい、「薄すぎるとガラスが溶けちゃう。かといって分厚すぎると音が悪くなっちゃう」とその秘訣を明かします。
職人の技で一つ一つ丁寧に作り上げる江戸風鈴。その特徴は、音を生み出す口の部分にあります。「ここがギザギザになっている、このギザギザが江戸風鈴の特徴」といいます。
「つるつるの風鈴は当たった時しか出ない。でもギザギザなので弱い風でも擦れるだけで音が出る」といい、「ちょっとした風を音にする、それが大事。風鈴なのでね」と篠原さん。
この江戸風鈴、近年はお土産品として外国人に人気です。この日も店には外国人客の姿が。
風鈴のどんなところに惹かれたのか聞くと、アメリカから来た女性は「音が本当に心地よくて、東京の喧騒の中でもなぜか注意を引きます。個性があって、「これを作った人の手のぬくもりが音になっているんだ」と思えます」と笑顔に。
国を超えて外国人にも魅力が伝わる風鈴の音色。しかし今、職人の担い手不足が問題となっています。
現在、江戸風鈴の工房は2軒しかありません。「風鈴職人はこの辺にもいっぱいいたらしいんですよ。いっぱいいたけど、どんどんなくなっちゃった」と篠原さんは語ります。
◆もう一つの「涼」~江戸扇子の粋な魅力
風鈴と同じく、約300年の歴史を持つと言われる「江戸扇子」。
その特徴は、扇子の骨組みにあたる扇骨の数です。武家文化から生まれた質素倹約の精神を反映し、京扇子に比べて骨の数が約半分となっています。
この道50年以上の職人、松井宏さんは、1本に1週間近くかけて繊細な作業で江戸扇子を作り上げます。「繊細さが求められますよね。きちんと揃ってなけれはいけないし、でっぱりがあると手に触れても違和感があるから、その辺もきちんと作業していかないと」と語る松井さん。
江戸扇子は基本的に全ての工程を一人で行うため、卓越した技術が求められます。ただその技術も、今や現代に受け継ぐのは松井さん含めて数人のみに。
松井さんは扇子の手作り体験などを開催して担い手を探し、技術を次の世代につなごうとしています。「私の代で終わってしまったら残念ですし、文化が途切れてしまう」と危機感を抱く松井さんは、未来へ技術を繋ぐため、手作り体験のワークショップなどを開催しています。「少しでも子どもに興味を持ってもらえたら、そこが第一歩ですかね」と話します。
担い手不足が懸念される江戸扇子ですが、近年海外からの人気が高まっています。中央区にある扇子の老舗「伊場仙」では、客の約4割が外国人だといいます。
特に人気なのが「桜の扇子」や縁起の良い「馬の扇子」。「(江戸扇子は)骨が少ないので絵がよく見える、そういったところが特徴かなと」と店の代表は語ります。
中国から来た男性たちは、この日江戸扇子を4本も購入しました。
江戸扇子の魅力について尋ねると、「工芸とデザインが魅力。伝統的な技術が生かされているだけでなく、かわいらしいデザインも取り入れられている」と、その魅力を的確に捉えていました。
日本の伝統的な「涼」の文化。その感性や職人の技術は、国境を越えて多くの人々を魅了しています。この素晴らしい文化を未来へどう継承していくのか。海外からの注目が、伝統を守る新たな力になることが期待されます。
<番組概要>
番組名:おはリナ!
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
キャスター:山本里菜、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/oharina/
番組X(旧Twitter):@oha_rina
番組Instagram:@oharina_mx