TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。7月31日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【“中瀬親方”による2025年7月のおすすめ作品】
◆関脇
ルポルタージュ「全員タナカヒロカズ」
著:田中宏和(新潮社)
自身の平凡な名前を嫌っていた作者・田中宏和氏が、たまたま自分と同姓同名の人を見つけて感動したのをきっかけに、30年にわたって同姓同名の人を募る「タナカヒロカズ運動」を続ける姿を綴った作品。
<注目ポイント>
明日から探したくなる!? 同姓同名の他人
中瀬親方のコメント「最初は年賀状とかを通して、周囲の人を巻き込みながらタナカヒロカズさんを募るという、いわばタナカヒロカズ大捜査網を張って見つけていくんですけど、あるとき、糸井重里さんのウェブサイト『ほぼ日』にこの活動を記載したところ、かなりの反響があったんです。
それで、活動9年目にして同姓同名のタナカヒロカズさんと会う決意をして、ここからこの運動がどんどん大きくなっていって、やがて“ギネス挑戦”にまで広がっていきます。初めて同姓同名の人に会うときも面白くて、名刺交換でお互いが『タナカヒロカズです』と言ってひと笑いあって、その後は同姓同名の有名人の話とか、幼少期のあだ名の話とか、そういう普通の人の初対面でのやり取りにはない展開が非常に面白く綴られています。
しかもこの作品は、ただいろんなタナカヒロカズさんを紹介するわけじゃなく、キラキラネームについてや世界の名前事情など、名前に対するうんちくが盛り沢山で、めちゃくちゃ勉強になるんですよ。例えば、日本の(一番多い名字の)1位は佐藤さん、2位は鈴木さんで、田中さんは4位なんですね。そういうことが勉強になるのと、あとこの本の頭のほうで、名前が同じというだけで他人の人生を生きられるみたいな気分という表現が出てくるんですけれども、読んでいくうちに不思議と共感を覚えてくるんですよね。
自分の名前にここまでエネルギーを使えるのってすごいなと感心するのはもちろんのこと、自分の名前についてもつい考えてしまう不思議な1冊となっています」
◆大関
映画「アイム・スティル・ヒア」
8月8日(金)より全国公開中
1970年代の軍事政権下のブラジルを舞台に、夫ルーベンス・パイヴァ(演:セルトン・メロ)を奪われた妻エウニセ・パイヴァ(演:フェルナンダ・トーレス/老年期 演:フェルナンダ・モンテネグロ)が、過酷な抑圧のなかで家族と共に強く生き抜く姿を描いた話題作。
<注目ポイント>
不条理な悲劇と子を守る強き母
中瀬親方のコメント「夫で元国会議員のルーベンスとその妻のエウニセは、5人の子どもたちとリオデジャネイロで穏やかな暮らしを送っていたんですが、あるとき、スイス大使誘拐事件が起きたのを機に軍の抑圧が市民へとどんどん押し寄せてくるんです。
ある日、ルーベンスが軍に連行されてそのまま居場所が分からなくなって、妻のエウニセは夫の行方を必死で追って待ち続けるんですけれども、その後、彼女も娘も軍に拘束されて過酷な尋問を受けることになるんです。
その後、ようやく解放されるんですが、軍や警察からは夫の消息を一切知らされることもなく、ただただ自由を奪われて絶望の淵に立ちながらも、エウニセは諦めずに夫の名前を叫び続けるうちに、その声が時代を揺るがす思わぬ方向に進んでいく展開になっています。
本作はウォルター・サレス監督と親交のあったパイヴァ家で実際にあった話に基づいた作品なんですけれども、妻エウニセの記憶を辿っているという感覚を伝えるために、ホームムービーのようなざらつきのある(質感の)Super 8というフィルムを使っていたり、暴力描写も直接映像で映すんじゃなくて、暗闇に響く音だけで臨場感を出すなどして伝えたり、そういう不条理な悲劇の表現が見事なのと、終始エウニセの視点で作品が描かれていて、終盤にかけて彼女の子どもを守る母としての強い決意は本当に胸を打たれるような作品になっています。
本作は、1970年代の歴史の再現に留まらず、いまのブラジル社会における民主主義の脆弱さにも警鐘を鳴らしている作品になっていて、ブラジル国内ではあの社会現象になるぐらいヒットした作品なので、皆さんぜひ劇場でご覧になってください」
◆横綱
小説「ババヤガの夜」※文庫版
著:王谷晶(河出文庫)
暴力が唯一の趣味の依子が暴力団会長の娘・尚子のボディーガードとして裏社会を生きる姿を描いた作品。反発しつつも変わる2人の関係性と尚子の婚約者との間で起こる騒動が物語を揺るがせていく。世界的に権威のあるイギリスのミステリー文学賞であるダガー賞を受賞した王谷晶による話題作。
<注目ポイント>
容赦のない暴力描写と無駄1つない展開
中瀬親方のコメント「何といっても見逃せないのは、女性2人(依子と尚子)の関係性で、男女でも男性同士でもなくて、女性同士じゃないと成立しない、何とも言えないシスターフッドの感情の機微や、依子の容赦のない暴力描写をはじめ、王谷さんの文章から立ち上がる“映像力”がものすごくリアルで、読んでいてまるで本当に1本の映画を観せられているような感覚になるぐらい、視覚にも訴えかけてくる文章がすごいです。
しかもそれでいてストーリーに何1つ無駄がないので、これだけの濃い内容を短くまとめ上げる文章力とテンポの良さは、どれを取っても一級品なんです。しかも全員のキャラクターも立っていて、一気読み間違いなしの傑作シスターバイオレンスアクションです!
200ページを切っているとは思えないぐらいのコンパクトさのなかに内容の濃さはもちろん、終盤に誰もが騙されるであろう内幕があって、読んだ後に友達と語り合いたくなること必至の1冊になっています。この圧倒的な作品をぜひ味わってください。本当にオススメです!」
中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください!
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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
メインMC:垣花正、大島由香里
アシスタントMC:ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu