世界に問うべくイランから…中瀬ゆかりが「本当に命がけの作品」と舌を巻いた衝撃の映画「聖なるイチジクの種」

2025.02.22(土)

11:50

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。1月30日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。1月30日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【“中瀬親方”による2025年1月のおすすめ作品】

◆関脇
小説「嗤(わら)う被告人」
著 前川裕(新潮社)

「クリーピー 偽りの隣人」として映画化されたデビュー作「クリーピー」でも知られるミステリー作家・前川裕が紀州のドンファン事件をモデルに書き下ろした長編ミステリー。主人公の新人女性弁護士が「銚子のドンファン」の異名を持つ老資産家殺しの容疑者・由起(ゆき)の弁護をしながら事件の全貌を解き進めていくさまを描いた実話系ミステリーがここに誕生!

<注目ポイント>
モデルは紀州のドンファン! 知っているからこそ裏切られる

中瀬親方のコメント「(作品の)モデルが紀州のドンファン事件ということで、(多くの人が)聞き馴染みがあって、大体どういう事件なのか分かっているかと思います。ノンフィクションではないんですけど、事件の概要などはほぼ本家と同じなので、あの事件をおさらいする意味でも勉強になること請け合いです。(主人公の)弁護人は、由起被告との最初の接見から“犯人は元妻であるこの人なんじゃないか”と疑っていたんですけど、由起被告の言動に徐々に翻弄されながらも調査を重ねていくうちに別の疑惑が深まっていくんです。

そして、終盤の大きな展開を経て、最後に真犯人を突き止めるというストーリーになっています。序盤は“元妻(の由起被告)が犯人だ”みたいな感じで読み進めてしまうんですけれども、由起被告から出てくるヒントや供述に、主人公と同じく読者も翻弄されます。中盤、終盤に訪れる急展開の描き方は、さすが前川先生で、実際の事件を想起しながら進めていったが最後、見事にそれを裏切ってくるんですね。

何といってもこの本がすごいのは、この本はまだ(紀州のドンファン事件の)裁判も始まってないときに書き下ろして原稿ができていたんですけれども、本家の裁判における一審の無罪判決がすでに予言されていたというすごい本です。読む前から誰もが(モデルとなった)事件の大体の概要を知っているからこそ、読んだ後に思わず“あっ、やられた!”って(裏切られた気持ちに)なるような実話系ミステリーの到達点とも言える意欲作になっています。ぜひ読んでみてください」

◆大関
映画「愛を耕す人」
2月14日(金)より全国ロードショー

ニコライ・アーセル監督と主演:マッツ・ミケルセンのタッグによる話題作。物語の舞台は、18世紀のデンマーク。貧窮にあえぐ退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉(演:マッツ・ミケルセン)は、貴族の称号を得るためにたった1人で荒野の開拓に名乗りを上げる。しかし、それを知った有力者フレデリック・デ・シンケル(演:シモンベンネビヤーグ)が、自身の勢力が衰退することを恐れ、さまざまな手段を使いケーレンの開拓を阻止する。

ケーレンは、シンケルからの非道な仕打ちに抗いながら、シンケルのもとから逃げ出した使用人の女性アン・バーバラ(演:アマンダ・コリン)や両親に捨てられた天涯孤独の少女アンマイ・ムス(演:メリナ・ハグバーグ)と出会い、それをきっかけに彼が頑なに閉ざしてきた心に大きな変化が芽生えてゆくさまを描いた感動の物語。

<注目ポイント>
目の演技が圧巻! 我らがマッツ・ミケルセン!

中瀬親方のコメント「この作品ですが、実は実在の人物がモデルと聞いてビックリしたほど。とにかく極貧、極寒、飢えなど悪環境で、大切な人との死や別れなど、涙なしには観られないぐらい残酷な試練が次々と彼を襲うんです。ハラハラするストーリー展開ももちろんなんですけれども、我らがマッツ・ミケルセンさまの目の演技がとにかく圧巻で、閉ざされた心が徐々に開かれていくという様子を、見事に目だけで表現していてめちゃめちゃかっこいいんです。“こんなことまでできるの!?”って改めて惚れ直してしまいます。

この主人公は、決して好感を持てるキャラクターというわけではなくて、結構気難しいキャラクターで、共感できるなと思ったら嫌な部分も見えるという難しい役どころなんですけれども、マッツ・ミケルセンさま本人が“自分の最も嫌うものの一部になりたい”という思いから、自ら監督に志願して演じたらしいんです。そんなイケオジ界のエース、マッツ・ミケルセンさまのかっこよさだけではない役者魂もたっぷりと味わえる感動作を、ぜひご覧ください!」

◆横綱
映画「聖なるイチジクの種」
2月14日(金)より全国ロードショー

第77回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞したイラン人監督モハマド・ラスロフによる衝撃の話題作。作品の舞台は、市民による政府へのデモで揺れるイラン。国家公務に従事する一家の主・イマン(演:ミシャク・ザラ)とその家族を描いた物語。

<注目ポイント>
監督が亡命 命をかけて世界に問いたかった作品

中瀬親方のコメント「主人公のイマンは20年に渡る勤勉さと愛国心を買われて、裁判所のいわゆる調査判事に昇進するんです。家族が『よかった!』と(昇進を)喜ぶんですけれども、その仕事は実は反政府デモの逮捕者の起訴状を国の指示通りに捏造するという汚い仕事で、この反政府デモがどんどん激化したこともあって、国から『お前もそういう立場だから、(デモに参加している市民などから)狙われるかもしれない』ということで護身用の銃を渡されるんです。

イマンはこの仕事内容に戸惑いながらも、家族のために任務を遂行するわけですけれども、ある日、その護身用の銃が(自宅に)隠していた場所から忽然と消えてしまうんです。(市民による)抗議活動がどんどん進んで、日々の汚い仕事の影響とか、ネットでいろいろと詮索されたりして、段々とイマンの生活やメンタルが壊れていくんです。

それで、奥さんと娘2人に徐々に『お前らの誰かが銃を盗んだんだろ』って疑いの目を向けてしまうんです。やがてそれは、予想を大きく裏切る大きな問題へと発展していきます。物語自体はフィクションなんですけれども、イラン当局によって鎮圧された2020年から2023年の抗議活動の実際の画像を(劇中に)入れていて、今のイランの実情がすごくリアルに描かれていますし、モハマド監督は、過去の映画が政府との対立を招いたとして有罪判決を受けていたんですね。

だからパスポートを没収されていたそうなんですけれども、それでも“この映画を世界に広めたい! 世界に届ける!”という一心で亡命して、1ヵ月かけて(フランスに)たどり着いてカンヌ映画祭に出席したらしいんです。そんな信念がこの映画の魂の抜けるような“えっ!?”っていうラストにまでつながっているのがすごく心揺さぶられます。

まさに命がけで世界に問いたかったというこの作品の重みもさることながら、イラン政権に対する痛絶な批判をここまでストレートに表した作品はなかなかないと思います。本当に命がけの作品です。このモハマド監督はもちろん、キャストの一部の人も今国外で住んでいるらしいんですけれども、その本気をとにかく劇場で体感してみてください!」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回2月のエンタメ番付は、2月27日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
メインMC:垣花正、大島由香里          
アシスタントMC:ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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