TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。11月28日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【“中瀬親方”による2024年11月のおすすめ作品】
◆関脇
マンガ「ぼっち死の館」
著 齋藤なずな(小学館)
第28回手塚治虫文化賞「マンガ大賞」の候補作にもなっている、齋藤なずな渾身の最新作。高度経済成長期に建てられた団地を舞台に、入居してくるさまざまな“ぼっち高齢者”のリアルな日常を描く。
<注目ポイント>
ぼっちも意外と悪くない! シニア世代のリアルな日常
中瀬親方のコメント「齋藤なずなさんは78歳の漫画家さんで、本作は自身の実体験をもとに描いた短編集です。妻を亡くしたぼっち男性の話では、ひとり暮らしを心配する近所の人たちに心を閉ざして周囲から孤立しているんですけど、最後はちょっとした人との会話をきっかけに心を開いていくことになるんです。人間というのは、誰もひとりでは生きていけないですから、心を開くことできて始まる“人とのつながり”が大切なのはもちろん感じられるんですけれども、何より“シニア世代の生活って意外と楽しそうだな”って、このマンガを読んで思いました。
寂しさと楽しさが表裏一体になっているというか。(この団地に住む)おばちゃんたちは、いつも井戸端会議をやっているんですけど、見た目が鳥に似ているマダムを『マダム・シャモ―』とあだ名で呼んだり、みんなとにかく噂が好きで楽しそうに暮らしています。
私も50(歳)のときにパートナーを亡くして、“20年後はぼっちで結構寂しくなるのかな”なんて思って怯えていたんですけれども、“シニアのこういう暮らしも結構楽しいじゃん”って思えるくらい、描いていること自体は“ぼっち”についてなんですが、明るい作品なんです。でも、何ヵ所か、私は落涙してしまったところもありました。
高齢者が住む団地って聞くと暗いイメージを抱きがちですけれども、読んだ後に“歳を取るのも悪くないな”って感じることができる、シニアをテーマにした作品は、今後、マンガや小説など、いろいろなところで新しいジャンルとして増えてくると思います。特に若い世代の人はみんな歳を取るとか老後とか心配していると思うんですけど、“何とかなるよ”っていう感じで読んでほしい1冊になっています」
◆大関
映画「山逢いのホテルで」
11月29日(金)より全国ロードショー
スイス出身の若き新鋭マキシム・ラッパズが監督・脚本をつとめた長編デビュー作。スイスアルプスをのぞむ小さな町で障害のある息子・バティスト(演:ピエール=アントワーヌ・デュベ)を育てるシングルマザー・クローディーヌ(演:ジャンヌ・バリバール)が自分の幸せと育児との間で生じる葛藤を描いた大人のラブストーリー。
<注目ポイント>
ダイアナ妃との対比で描く「母と女」のニ面性
中瀬親方のコメント「主人公のクローディーヌは、毎週火曜日に決まって山あいにあるホテルに出かけて、ひとり旅の男性を選んでは、その場限りのアバンチュールを楽しむという、もうひとつの顔を持っているんです。そんな一見娼婦のような行動をするなかでも品格を失わず、凛とした佇まいすら見え隠れする中年女性を演じるのは、フランスの名優ジャンヌ・バリバールです。
最初はあんまり冴えないおばさんだなって思っていたんですけど、どんどんストーリーが進むにつれて美しく、セクシーに見えてきたのが、さすが名優さんだなと思いました。(彼女は)そのホテルである男性(ミヒャエル/演:トーマス・サーバッハー)とアバンチュールを楽しむんですけど、その男性に恋をしてしまって、彼女の日常は大きく変わっていくんです。
最初は息子の介護と恋を両立しながら過ごしていたんですけれども、その男性が仕事でアルゼンチンに行くことになって『一緒に来ないか』と誘われて、息子の介護と自身の幸せとどちらを取るのかという最大の決断を迫られる展開となっていきます。
劇中で、あるとき逢瀬を楽しむあまり、家に帰るのが遅れてしまって、息子から『僕を忘れてしまったんだね』って言われるシーンがあるんですけれども、胸が締めつけられるようなやりとりがありました。その構成力が素晴らしくて、この息子はダイアナ妃のことが大好きで、ダイアナ妃が母と女を両立した象徴としてクローディーヌと対照的に描かれているという完璧な構図にも感動を覚えます。
ラストの彼女の哀しい選択っていうのか、それにも強く心を揺さぶられて、何とも言えない余韻に浸って、作品を観終わった後、しばらくその場を動けなくなりました。母と女という多くの女性が直面する二面性の葛藤を、緻密な構成力と描写力で肯定的に描いていく素晴らしい作品です。“これ、本当に監督さんのデビュー作なの!?”って疑うぐらい完成度が高いので、ぜひ皆さん、劇場でご覧ください」
◆横綱
小説「虚の伽藍」
著 月村了衛(新潮社)
バブル期の京都を舞台に、25歳の若き僧侶が京都を牛耳る腐敗した闇社会の地上げ戦争を制してのし上がっていくさまを描いた、作家・月村了衛による圧巻の社会派巨編。
<注目ポイント>
地面師たちもびっくり! 「坊主版アウトレイジ」
中瀬親方のコメント「主人公の若き僧侶・志方凌玄は、あるとき寺の所有地の売却に関するある不正に気づくんです。で、その不正に関わった上層部の人たちによって、凌玄は早々にお寺から追い出されてしまいます。そんな窮地のなか、凌玄はある人物と出会うんですけれども、その人が何とヤクザとつながっている京都のフィクサーで、四面楚歌の凌玄は、迷いこそあれども、彼らと組んで腐敗した闇社会と戦うことを決意して、壮絶な利権争いを起こしていくんです。
欲望にまみれた寺を正しい道に戻すために、あえて自ら悪に染まっていってヤクザを利用して京都の支配者へとのし上がっていく様子は、まさに坊主版アウトレイジ! 登場人物全員が悪者みたいな感じで……そして、息を呑むような展開のオンパレードで、あっという間に読み終わりました。
ちなみに、五木寛之先生が偶然書店でこの本を手に取って『いやぁ、徹夜しちゃったよ。これは山崎豊子や松本清張に匹敵する超一級のエンタメだ!』と激賞されていたそうです。92歳を徹夜させるくらいの本なので、これは絶対に読んでいただきたい。政治や公権力が及ばない闇社会を舞台に、欲望に翻弄される人間たちを圧倒的な筆力で描いています。既に各方面から『今年読んで一番興奮した超ド級のエンタメ』っていう感想もどんどん届いているので、皆さんも五木寛之先生に続いて徹夜してハマってください!」
中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回12月のエンタメ番付は、12月19日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。
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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
メインMC:垣花正(月~金)、大島由香里(月~木)
アシスタントMC:ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組Twitter: @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu