TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。10月24日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【“中瀬親方”による2024年10月のおすすめ作品】
◆関脇
映画「対外秘」
11月15日(金)より全国ロードショー
「悪人伝」のイ・ウォンテ監督による最新作。1992年の釜山を舞台とした、国家を揺るがす壮絶な権力闘争の表と裏を描いたサスペンス映画。党の公認候補を約束されたはずの主人公・ヘウン(演:チョ・ジヌン)が、正義を貫く国会議員を目指し、総選挙への出馬を決意する。ところが、陰で国をも動かす黒幕のスンテ(演:イ・ソンミン)が、公認候補を自分の言いなりになる男に変えてしまう。これに激怒したヘウンは、スンテが作成した極秘文書を手に入れ、チームを組んだギャングから選挙資金を得て無所属で出馬をして対抗する。今度はスンテが逆襲を仕掛け、この選挙を皮切りに2人が壮絶な権力闘争を繰り広げていく。
<注目ポイント>
騙し合いと裏切りの心理戦。まさに韓国版JOKER、爆誕!
中瀬親方のコメント「韓国のクライム映画ってグロいシーンがかなり多いんですけど、本作はそんなことなくて、主人公の少し間の抜けた要素だったり、明るめの音楽でドロドロとした政治・権力闘争を割とポップに描いているんですけれども、見応えのない映画というわけではなくて、非常に迫力とスリルとサスペンスが中盤から後半にかけててんこ盛りで、へウンとスンテの裏切り、騙し合いのテンポ感が最高で、あっという間の116分でした。
騙し合いと裏切りに加えて、結末に訪れる大どんでん返しが、まさに韓国版JOKERが爆誕と言うべき映画になっています。この数年、韓国映画が勢いづいていますけれども、本作もそういった流れに乗った期待を裏切らない作品になっていますので、ぜひご覧ください」
◆大関
マンガ「路傍のフジイ」
著 鍋倉夫(小学館)
「リボーンの棋士」でもお馴染みの漫画家・鍋倉夫による、現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中の作品。職場では全然目立たない地味でちょっぴり変わった中年男性・藤井が、1周回ってカッコイイとも思えてしまう生き様に、周りの人たちが影響されていく様子を描いた人生劇場。
<注目ポイント>
地味で風変わりな主人公から学ぶ「ちゃんとした」生き方
中瀬親方のコメント「主人公の藤井は、仕事はちゃんとするんですけど、口数は極端に少ないし、職場飲みにも声がかからないような地味なタイプのサラリーマンで、一見、周囲からは“彼のようにはなりたくないな”と思われているタイプなんです。でも、ふと気がつくと、“あの人は一体どんな育ち方したんだろう?”とか“休日は、一体何しているんだろう?”と気になってしまって、いつの間にか虜になってしまうという存在でもあるんです。
それを裏付けるのが、“周りからどう思われているか”ということや、“人と比べてこうだ”といった、みんなが気になる承認欲求やマウントとかも、藤井は全く無縁な生き方をしていて、それが彼の周りの人たちにも影響を与えていく様子を言葉巧みに表現しているマンガです。
藤井の幼少期のシーンで、息子の成長を心配してた父親があるとき、藤井が公園で一生懸命四つ葉のクローバーを探している知らない子を見て一緒に探してあげるところを見て、母親に「あいつは大丈夫だな」って言うシーンがあるんですけれども、そこはすごく胸が熱くなりました。
周りと比べられるという生きづらさを感じることが多いこの時代に、人生にとって何が大切かを教えてくれる作品ですし、世の中の価値観の遥か外側に身を置く藤井の言動が癖になること請け合いです。
現在、コミックは3巻なんですけれども、皆さん、この藤井ワールドにハマってみてください。“続きがどうなっていくんだろう?”ってどんどん気になる作品になっています」
◆横綱
短編小説集「富士山」
著 平野啓一郎(新潮社)
5つの異なるあり得たかもしれない人生を描いた、平野啓一郎による短編小説集。表題作の「富士山」は、40歳女性の加奈(かな)が主人公。マッチングアプリで知り合った彼・津山と旅行の道中で起きたことがきっかけで別れてしまうが、後日、彼の知られざる一面を知ることとなり、悩みながらも生きる彼女の姿を描く。
<注目ポイント>
さすがは名手・平野啓一郎! 偶然性への感度が上がる深すぎる読後感
中瀬親方のコメント「今の時代、ある瞬間の行動で自分が判断されることに不安を感じる人って多いと思うんですけれども、ひとつの行動で人の本質を判断することの危うさも描いています。マッチングアプリで出会った相手のことを限られた情報で判断しないといけないというジレンマもありますし、そういうところもすごく細やかに表現されていて、非常に読み応えのある作品でした。
5編のなかで一番好きだったのが、『息吹』という作品です。主人公の齋藤息吹(さいとう・いぶき)が入ろうとしたかき氷屋さんが満席だったため、たまたま入ったマクドナルドで、隣の席から『大腸の内視鏡検査がさ……』みたいな話が聞こえてきて、それから思い立って、自分も何となく検査を受けてみたら幸運にも初期の大腸がんが発見されるというストーリーなんですけれども、別の世界線では、息吹はちゃんとかき氷屋さんに入れてかき氷を食べたので、大腸検査の話は耳にせずに検査もしなくてがんに気付かなかったという、パラレルワールド的なもうひとつの世界線の自分というのもいて、不思議な読み味でした。たまたま○○じゃなかった世界の自分というものに対して、得も言われぬ展開が待ち受けます。
5編全てに共通しているテーマが“偶然性”で、人生って本当にたまたまそこに行った、たまたま出会った人と話したなどの偶然が影響することってすごく多いじゃないですか。ネットでポチっとモノが買える今の時代、本屋で何気なく手に取った作品が面白くて人生が変わったとか、そういう素晴らしい偶然を体験する機会って減っていると思うんですけれども、本作はそういった偶然に対する感受性を取り戻せますし、一見、哲学的なテーマに見えますが、そこはさすがは平野啓一郎さんで、見事なストーリーテリングと文章力で、皆さんにも身近な偶然を題材に、その世界に深く引きずり込んでくれる1冊になっています。
この人生だった意味みたいなことをすごく考えさせられて、ある意味、一生忘れられないレベルの読後感をお約束したいと思います!」
中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回11月のエンタメ番付は、11月28日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。
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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
メインMC:垣花正(月~金)、大島由香里(月~木)
アシスタントMC:ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組Twitter: @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu