「緊迫の波状攻撃…」中瀬ゆかりが恐れおののいた、鬼才アレックス・ガーランド監督最新作「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

2024.10.12(土)

11:50

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。9月26日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。9月26日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【“中瀬親方”による2024年9月のおすすめ作品】

◆関脇
コミック「はかばなし」
著 原克玄(講談社)

第14代閻魔大王・閻丸は、死者の転生先を決めているのだが、その判断基準はというと、死者が墓場まで持っていった最高にエロい話。もう一度人間に生まれ変われるかどうかは、エロ話のエピソード次第という、現代ギャグマンガの奇才・原克玄が描く傑作オムニバス。

<注目ポイント>
面白エピソードはやはり人生で一番エロかった話にアリ!

中瀬親方のコメント「8月に発売された1巻では全部で7人の転生先を決めているんですけど、どの人のエロ話もとにかくめちゃめちゃ秀逸で。私たちの下ネタのレベルがいかに低いかを反省させられるぐらいに面白い(笑)。加えて、一見やる気のなさそうに見える閻魔大王が、死者のエロ話を聞いて最後に告げる転生先のチョイスがめちゃめちゃひねりが利いていて、面白さだけじゃなくて細部までユーモアが詰め込まれた作品です。

1巻には、実はアダム徳永さんとか田代まさしさんが死者として登場しているんですけれども、彼らのエロエピソードが改めて漫画で見てもマジでヤバかったです(笑)。転生先も秀逸で本当に“あっぱれ!”としか言いようがないんですけど、但し、注意しないといけないのは、電車とか人前で読んだら爆笑しちゃって大変なことになって恥をかくので、くれぐれもお家で、できれば家族もいないところで1人で読んでほしいぐらい、ハマることを請け負いです。

(作中に登場するアダム徳永さんなどは)取材して、本当のエピソードを死んでいる設定で墓場まで持っていったという……これがちょっとありえないような話なんですけど(笑)。特にエロ好きの“ごじむ(当番組の略称)”視聴者の皆さんには必見の1冊ですので、今すぐ買ってください!」

◆大関
小説「私の馬」
著 川村元気(新潮社)

小説「世界から猫が消えたなら」や「四月になれば彼女は」などのベストセラー、映画「モテキ」や「君の名は。」などを生んだヒットメーカーとして知られる川村元気の3年ぶりとなる長編小説。

物語の主人公は、造船所で働く40代半ばの無口な事務員、瀬戸口優子。ある日、彼女は1頭の元競走馬と運命的な出会いをする。その後、街のはずれにある乗馬クラブでこの馬にまたがった優子は、言葉はなくとも心を通わせられるこの馬に特別な感情を抱いていく。この馬をどうしても欲しくなった優子は、組合のお金に手をつけて買ってしまう。長年、真面目に勤めてきた優子が犯罪に手を染めてまで欲しかったものとは一体何だったのか?

<注目ポイント>
言葉が溢れる現代における言葉のない動物との愛の描写

中瀬親方のコメント「今はSNSなどの普及で、以前よりさらに言葉が24時間365日、天文学的な量であふれている時代ですけれども、とはいえSNSを開けば無意味な喧嘩とかやっていて、むしろコミュニケーションが全然取れていないようなことも多いじゃないですか。そんななかで、言葉を介さなくても密度の濃い意思疎通ができて心が満たされるこの馬に優子がハマっていく様子が、まさしくSNS時代ならではの感覚ではないかと思いました。

言葉があるのに通じていない人間世界の無常さと、言葉がなくても意思疎通の密度が高い動物世界とのコントラストが鮮やかに表現された1冊になっています。フローベールの『ボヴァリー夫人は私だ』じゃないですけど、『瀬戸口優子は私だ』と共感する人がたくさん出てくると思います。長くないので、すぐに読めるページ数の作品なんですけど、逆にそれが何日も何週間も心に響き続ける作品になっていて、本当にすごいなと思います。めちゃめちゃ面白いので、ぜひ皆さん読んでみてください」

◆横綱
映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」
10月4日(金)より全国ロードショー

独創的な世界観が魅力のイギリスの鬼才アレックス・ガーランド監督の最新作。

テキサスとカリフォルニアの同盟からなる西部勢力と、大統領(演:ニック・オファーマン)が率いる政府軍との間で内戦が勃発し、激しい武力衝突が繰り広げられ、分断の進むアメリカ。

戦場カメラマンのリー・スミス(演:キルステン・ダンスト)とライターのジョエル(演:ワグネル・モウラ)は、大統領に単独取材を試みるためホワイトハウスへ向かうのだが……。内戦の勃発によって戦場と化した近未来のアメリカを舞台に、最前線を取材するジャーナリストたちを主人公に、圧倒的な没入感で描いたアクションスリラー作品。

<注目ポイント>
「国家」という概念が失われたとき人間はどうなるのか

中瀬親方のコメント「予告編で大きな話題を呼んだ、ライターのジョエルが軍人に銃を突きつけられて脅されるシーンがあって、『我々はアメリカ人だ』と言うジョエルに対して、軍人が『どの種類のアメリカ人だ?』って言う台詞があるんですけれども、このシーンがあまりにも恐ろしくて、久しぶりにおしっこを漏らしそうになりました(苦笑)。

まさにこの台詞に、今のアメリカに広がる不安が凝縮されているんですけども、大統領選挙を控えたこのタイミングで公開するあたり、さすがガーランド監督です。撮り方もガーランド監督の思考が凝らされていて、みんながニュースで目にするドキュメンタリー映像のような手法で撮影することでアクションシーンを見せているので、暴力性がより残忍に映し出されているんです。その臨場感と迫力にあっという間に時間が過ぎていきます。人々が、国家という共通の概念を失ったときに訪れる人間の悲劇的な結末を、とにかく圧倒的スケールで表現していて、無駄なシーンやだれるシーンが一切なく、壮大なテーマをロードムービー形式で見事にまとめ上げています。

緊迫の波状攻撃というか、どんどん緊迫するシーンがきて、これは絶対に大きなスクリーンでこの音とか銃撃シーンの迫力を目の当たりにしてもらいたいです。皆さん、ぜひ劇場に足を運んでください。

この迫力とリアリティ、こういう日が本当に来ちゃうんじゃないかっていう恐怖に震えっぱなしの2時間でした」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回10月のエンタメ番付は、10月31日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
メインMC:垣花正、大島由香里
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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