「忙しく頑張る日本のみんなに読んでほしい」と中瀬ゆかりがオススメ! 相原コージの「うつ病になってマンガが描けなくなりました」

2024.08.10(土)

11:50

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。7月25日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。7月25日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【“中瀬親方”による2024年7月のおすすめ作品】

◆関脇
映画「このろくでもない世界で」
7月26日(金)より全国ロードショー

継父からDVを受け、希望を失っていた18歳の少年が、犯罪組織のリーダーと出会い、闇社会で生きることで、義理の妹と母親を救おうとするノワール映画。

<注目ポイント>
貧困と暴力に喘ぐ少年と闇社会 韓国映画は新たなステージへ

中瀬親方のコメント「韓国映画の特徴である身体的な痛みの表現もすごいんですけど、貧困と暴力に生きる少年の心の叫びと大人たちの醜い欲望が渦巻く裏社会の様子が、渾然一体となった犯罪映画になっていて、韓国映画の新たな引き出しになるんじゃないかと思います。

主人公のヨンギュを演じるホン・サビンさんは、若くして80本近くも短編映画に出ている演技派で、この緊迫感あふれる心情表現はお見事でした。

そして、犯罪組織のリーダー役・チゴンを演じるのが、『ヴィンチェンツォ』でおなじみのソン・ジュンギさん。声色から佇まいまで役づくりを徹底していて、傷だらけの体を見せるシーンもあるんですけど、この肉体美のシーンは犯罪組織の人間ながら、色っぽくてとにかく素敵で思わずうっとり見入ってしまいました。彼の隠された凄まじい過去にも圧倒されます。

この主役2人の傷ついた寄辺無い魂が共鳴し合うんですけれども、『どうしてこうなってしまうの!?』って頭を抱えるような展開は、まさに息を呑みましたし、心を鷲掴みにされました。で、『パラサイト 半地下の家族』をはじめ、貧困社会をテーマにしたものが多い韓国映画のなかで、本作はそれに加えて無慈悲な感情のうごめきが見事に表現された作品です。韓国映画の新しい魅力が楽しめますので、皆さんぜひ劇場に足を運んでください」

◆大関
小説「たぶん私たち一生最強」
著 小林早代子(講談社)

R-18文学賞出身の新鋭作家・小林早代子が圧倒的センスで紡いだ話題作。ある日、「ルームシェアでもする?」という軽い冗談をきっかけに一緒に暮らし始めるアラサーの仲良し4人組の物語。

<注目ポイント>
女友達最高! 日本版セックス・アンド・ザ・シティ!

中瀬親方のコメント「本作の大きなテーマが、女性の幸せって何なのかについてなんですけれども、男性と結婚して子どもを産むのが女性の幸せっていう価値観をはじめ、頭ではすでに“古いな”と分かっていながら捨てられない固定観念ってありますよね? そういうものを見事に吹き飛ばす小林さんの表現力、女4人が集まったときの会話の毒気とかリズム感とかすごいグルーヴがあって素晴らしいです。

あけすけな4人の勢いあるユーモラスなやり取りに何度も笑わされるんですけど、例えば、4人で合コンに行ったときの描写では、1人だけ男をお持ち帰りした百合子という女性が、翌日にラブホから家に帰ってきて、他の3人(花乃子、澪、亜希)から問い詰められるシーンがあって、『あの男のどこが良かったの?』って聞かれて、そこから繰り出される会話にも毒針のような笑いが仕込まれていて、まさに『セックス・アンド・ザ・シティ』を彷彿とさせます。

そして、本作のもうひとつの軸が『出産』についてで、結婚はしなくても子どもは欲しいっていう、近年、こうした考え方もありますが、4人の女性たちが『出産』というテーマと向き合う部分もすごい見どころです。愛とエロは一致したほうが幸せかとか、男性と性交渉せずに子どもを産むのはどうとか、現在でもまだ違和感を持たれがちなテーマへのアプローチも『見事!』としか言いようがない。

私自身、“このまま一生、ずっと1人で生きるのもなぁ……”って思うことが、1人の夜とか度々あるんですけれども、“いやいや、女同士で暮らす選択がこんなにイケているのなら”って還暦にして人生設計の方向性を変えられそうになるぐらいの痛快さで、とにかく読んだ後、タイトルの通り『女友達最強!』って思える作品ですので、ぜひ手に取って読んでみてください。

これは別に女性だけに限定した本じゃなくて、男性が読んでも痛快で思わず笑っちゃって、受けるものが強い作品ですので、男性にもおすすめできるエンタメです」

◆横綱
ドキュメンタリーコミック「うつ病になってマンガが描けなくなりました」
著 相原コージ(双葉社)

「コージ苑」「かってにシロクマ」「サルでも描けるまんが教室」などで知られるギャグマンガ界の巨匠・相原コージが、自身の実体験を基にうつ病による闘病生活を赤裸々に描いたドキュメンタリーコミック。

<注目ポイント>
他人事ではないうつ病! メンタルの絶不調を巧みに描く表現力

中瀬親方のコメント「相原コージさんが、コロナ禍で60歳を目前にマンガが描けなくなってきたことから端を発して、そのうち“コロナにかかったかも”という妄想から、打ち合わせにやってくる編集者に(コロナを)うつしたら大変なことになるっていう恐怖にとらわれて、それがどんどん希死念慮にまで発展して、あげくに自殺未遂まで企ててしまうことから(物語が)始まるんです。

コミックは全3巻あって『発病編』『入院編』『退院編』に分かれていて、今年6月に『退院編』が発売されました。

テーマがうつ病なので、かなり重くて暗い話なのかなと思いきや、そこはさすがギャグ漫画の巨匠でヒリヒリするようなメンタルの絶不調をテーマにしつつも、当時の自分を客観的かつ、すごく面白く描いているので、とても読みやすいです。

やっぱり人によって悩みの種類も違いますし、発症した当時、身近にいた奥さんにさえ言えないこととかもあるわけですよね。そういう描写をはじめ、全編を通して面白さのなかに“こういうこと、私にもあるな”っていう自分のメンタルチェックの要素もあるので、非常に為になりました。

個人的には、うつ病で苦しむ相原さんにオロオロせず寄り添って、明るく、常にドンと構えた奥さまの人間性にも心を打たれました。2巻、3巻は閉鎖病棟での入院生活がどういうものなのかを卓抜な観察眼で描いていて非常によく分かりますし、“えっ!?”っていうラストシーンも結構衝撃でした。

相原さん自身もそうでしたが、うつ病が治っていく過程で感じた日常の何げない喜びを感じられることがいかに大事かを再認識できたのと、ちょっと“あれ?”って感じたら、身近な人と会話をして息抜きしてほしいなって。忙しく頑張る日本のみんなに読んでほしいと思える作品でした」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回8月のエンタメ番付は、8月29日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
メインMC:垣花正(月~金)
アシスタントMC:大橋未歩(月~木)、ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

 

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