TOKYO MX(地上波9ch)の曹蒙記者が外国人記者の視点で東京の魅力や課題を伝える「TOKYO LENS」のコーナー。今回は日本の「靴磨き」の職人に密着取材しました。
◆港区の専門店で目撃した「世界一」の技
日本の「靴磨き」文化が今、世界中から熱い視線を浴びているのをご存じでしょうか。戦後の路上から始まったこの文化は、いまや高い技術力によって海外からも認められる存在となっています。今回は、世界一の称号を持つ気鋭の職人と、50年以上も路上で磨き続けるレジェンド職人、その両方の世界をご紹介します。
港区にある靴磨きの専門店「Brift H」。この店では、カウンター越しに客の目の前で職人が靴を磨いてくれます。

一足にかける時間は約1時間。職人はじっくりと時間をかけて、靴を丁寧に磨き上げていきます。

そこで目にしたのは驚きの光景でした。なんと職人は、タオルやブラシではなく、クリームを「素手」で直接取り、革に塗り込んでいくのです。「僕ら職人は、革の状態を長年の経験で見極めているので、直接指で触ることで革のコンディションを確かめながら磨いています」と職人は語ります。

さらに、体温でクリームを温めながら塗り込むことで、革に浸透しやすくなるのだそうです。

取材に応じてくれたのは、2025年にロンドンで行われた世界大会で見事優勝を果たした職人の新井田さんです。
新井田さんは、靴磨きという仕事が日本人の気質に合っていると話します。「細部にまで気を配って仕事しようとなるのが日本人らしさで、それが靴磨きという仕事ととても相性が良いんです」と分析しています。

◆「見ているだけで心が整う」究極の時間
また、新井田さんは「靴磨きは見ているだけで“心が整う”ことがある」とも語ります。客が自分の靴を眺めながら、綺麗になっていく過程を1時間かけて過ごすことで、不思議と心が整っていくのだそうです。「自分の普段履いている靴の魅力をより感じて、靴を好きになってもらえたりしたらすごく嬉しい」と、その思いを語ってくれました。

実際に時間をかけて丁寧に磨き上げられた靴を見た曹記者は、「艶がすごいです。こんなに生まれ変わるとは思ってなかったです」と、その劇的なビフォーアフターに感嘆の声を上げていました。

◆路上から始まった靴磨きの歴史…その技術を現代に繋ぐ伝説の職人
今や世界に誇る文化として確立しつつある靴磨きですが、そのルーツは路上にあります。日本の靴磨きの歴史は第二次世界大戦後に遡り、当時、路上生活を余儀なくされた少年たちが生きるために始めたと言われています。

その技術を現代に繋ぐ、路上の靴磨き職人、パブロ賢次さんです。

パブロさんは東京駅の丸の内北口前などで50年以上も靴を磨き続けており、常連客からは「賢ちゃん」と呼ばれ親しまれています。今でも多い時には1日に20足もの靴を磨くといいます。

通りかかった際に懐かしさを感じて依頼したという男性客は、仕上がりを見て「最後の磨きは買った時よりきれいです」と満足げな表情を浮かべていました。
しかし現在、路上営業への規制は厳しくなっており、都内で活動する路上の靴磨き職人は片手で数えるほどしかいないといいます。それでも、パブロさんの卓越した技術を求めて、遠方から訪れる客は少なくありません。

愛知県から出張のたびに立ち寄るという男性は、パブロさんを「名人」と称賛します。「一回磨くと何ヶ月も磨かなくていい。そのくらい、いつまでも輝いているんです」と絶賛し、磨き終わった靴を見て「別の靴になったね、これはすごい!」と驚きを隠せない様子でした。

長きにわたり東京、そして日本の人々の足元を支え続けてきたパブロさん。体力が許す限りこの仕事を続けたいと語ります。「要は靴磨きが好きだから。基本的にみんな感動して帰る。(靴が)見違えるようになるでしょ。巨匠になってもやります、靴磨きを」と、職人としての尽きない情熱を笑顔で語ってくれました。





