SNSが台頭しオールドメディアは壊滅危機…公平性が問われるテレビの選挙報道の意義とは?

2026.02.13(金)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。衆議院選挙を2日後に控えた2月6日(金)の放送では、“テレビの選挙報道”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。衆議院選挙を2日後に控えた2月6日(金)の放送では、“テレビの選挙報道”について議論しました。

◆テレビの選挙報道は“薄口”!?

昨今、選挙におけるテレビ報道のあり方が問われています。市民の情報源はマスメディアからネット・SNS・動画配信へと瞬く間に変化。2024年の兵庫県知事選挙ではSNSやYouTubeの影響力が注目された一方、マスコミの発信に批判が集中。テレビは“時代遅れ”、“権力寄り”などと揶揄され、以来“オールドメディア”という表現が定着しました。

また、テレビの選挙報道で意識されている“公平性”についても改めて考えていく必要があります。現在は各候補者を扱う時間を秒単位で揃え、テロップの色などにも注意を払いながら報道が行われている中、今回の衆院選の討論番組では発言機会の公平性を問題視する声が。

一方で、BPO(放送倫理・番組向上機構)は“量的公平”よりも情報の質や中身を分配する“質的公平”が必要だと指摘。形式的な公平性にとどまらず、有権者の判断材料を十分に提供できているのかが問われています。

SNS時代の今、テレビの選挙報道はどうあるべきか。今回はキヤノングローバル戦略研究所 上席研究員の峯村健司さん、Forbes JAPANの谷本有香さん、経済アナリストの池田健三郎さんとともに考えます。

長年報道の現場に携わり、近年は主にアメリカ、中国で活動している峯村さんは日本の現状に「こんなに選挙報道が少ないのかと驚いた」と言い、「アメリカの場合、選挙はテレビショーになっていてめちゃくちゃ面白い。台湾の選挙もお祭りでロックスターのコンサートがあったりするが日本はあまりにも冷めている」と海外と大きな温度差があると指摘します。

一方、谷本さんは「(テレビでの報道が)減っている印象はない」と語る傍ら「ただ、どの局も似たような切り口で、もしかすると視聴者はどこを見ても同じような情報しか入ってこないというきらいはあるかも」とコメント。

また、池田さんは「一言で言うとテレビは“薄口”」と明言し、「薄口だと物足りないからネットに走る。ネットはどんどん濃いものを求めているから玉石混交になり、どれが真実でどれが嘘かもわからない」と苦言を呈します。

◆テレビの選挙報道の問題点は?

続いて、テレビの選挙報道の問題点を聞いてみると、峯村さんは“「公平」という名の責任放棄”とし、「(内容を)薄くすることでリスクを回避している。客観的な(判断)材料を提示する責任を放棄している」と非難。

かたや谷本さんは“「お茶の間」を意識しすぎ”と、生活者よりも主婦など“視聴者”に刺さる番組作りを懸念し「そうなると(論点が)消費税減税ということになる」と今回の衆院選の傾向を挙げます。

池田さんは“量>質の偏重”、“深掘り不足”、“ファクトチェック機能不全”の3点を挙げ、主に深掘り不足とファクトチェック機能不全が“有権者の知る権利に応えていない”と問題視。

他方でキャスターの堀潤は“官僚の方も交えて各論をじっくり話したいですね”と素直な思いを吐露。「日本の実相に迫るためには政治家の話だけをしていてもダメ。政策は官僚とクロスしているから政治家ばかりでなく官僚も交えて各論ベースで選挙報道をやりたい」と希望を語ると峯村さんも賛同します。

また、キャスターの田中陽南からは、既存の番組の中でしっかりと伝えるには“時間が足りない”という声もありました。

◆量的公平と質的公平、本当に必要なのは?

テレビは公職選挙法や放送法をふまえ、候補者を公平に報じる必要がありますが、果たして“公平な報道”とは何か。2016年、BPOに「参院選全体の放送量が減少した」、「都知事選が一部の候補者のみを取り上げ公平ではなかった」などの意見が寄せられた際、BPOは「テレビ放送の選挙報道に求められているのは量的公平ではなく“質的公平”」としています。

量的公平とは、特定の立場に偏らないよう各候補者や政党に同じ時間を使って報道するもので、均一化できる傍ら「発信が弱い」、「切り込みが甘い」などの批判があります。一方、質的公平は取材で知り得た事実を偏りなく報道するものとされていますが、それは数値化できないため基準が曖昧になりがち。ゆえに多くの場合テレビでは量的公平が意識されてきたと言われています。

この問題ついて峯村さんは、量的公平はナンセンスであり「客観的な証拠やいろいろな視点を出せば、それがいわゆる質的な公平であり、時間の問題じゃない」と主張。そして、谷本さんからは「視聴者に話を聞くと各党の主張がわからなかったりする。その解説を政治家だけでなく、いろんな専門家に聞き、ひとつひとつの政策を腹落ちできる形にしていくと質的な要求を満たすことができるのではないか」という意見も。

さらには池田さんが「取材は主に政治部がやると思うが、政治部の記者は政治家同士の関係性などについては強いが意外と政策が苦手。だから、経済部や社会部の記者が政策を見たり、総力戦でやっていかないとファクトチェックもできない」と指摘すると、新聞社に勤めていた経験をもつ峯村さんは「耳が痛いがそう思う」と思わず苦笑い。

◆オールドメディア復権の鍵は?

公平性の問題について、上智大学・文学部新聞学科の音好宏教授に話を伺うと「放送局側からすると、公平を意識するあまり極めて面白くない番組になりがち」、さらには「量的公平は時間をかければいいだけだから簡単。しかし質的公平は難しい。作り手が根性を入れてしっかりやらないといけない。ただ、その苦労はすごく意味があることだと思う」と解説。

加えて、近年のテレビの選挙報道には果たすべき重要な役割があると言い、「2024年の衆院選や兵庫県知事選の時、SNSに大量のショート動画が流れ、真偽不明の情報が人々に少なからず届いていた。オールドメディアは正しく伝えることをビジネスにしてきた経緯があり、そのノウハウや倫理観に基づいて情報を提供していくことにポイントがある」とテレビの可能性に言及します。

これには峯村さんも同意し「オールドメディアは信頼がなくなってきて本当に危機だと思うが、アメリカのメディアは完全に公平性を捨てている一方、日本はまだ公平性が残っている。これがアドバンテージで、SNSなどの怪しい情報の中で正しい情報が出せる余力が残っているし、これは復興のチャンスでもある」とオールドメディア再起の鍵を挙げます。

池田さんも「ネットに氾濫する情報が本当か嘘かをオールドメディアが専門家を呼んできて検証すればいい。そして、わかりやすく視聴者に届けることができればオールドメディアは復権できる」と追従します。

なお、アメリカの放送局もかつては公平性が求められていましたが、1987年にその方針が廃止に。理由はケーブルテレビの普及や放送各局が中立性を重視しない傾向にあったためとされています。その結果、FOXニュースやニュースマックスなどは共和党寄り、CNNやMS NOWなどは民主党寄りと認知され、党派色の強い報道番組が増加。一方、近年フランスやドイツでは公共放送の偏向報道を指摘する声も上がっています。

また、日本では“選挙報道の縮小”も危惧されています。株式会社エムデータが調べた衆院選公示日翌日の選挙報道の放送時間を見ると、郵政解散の2005年や森友・加計学園を巡る問題に揺れた2017年は9時間以上でしたが、それ以外の年は4〜5時間程度で、現在は減少傾向にあります。そして、公平・中立を意識するあまり型通りで短時間な報道が目立ち、有権者が欲しい情報が届いていないとの指摘もあります。

◆選挙報道の公平性はどうあるべきか?

選挙報道はどうあるべきか。最後に今回の議論をふまえ、参加者が提言を発表します。まず峯村さんは“政治的偏向・選挙運動”。「放送法と公選法の中で禁止されているのは政治的な偏向、いわゆる露骨な偏りと選挙運動。本来これ以外は何をやってもいい。それを自主規制、リスクを取りたくないというメディア側の勝手な判断で萎縮しているだけ」と改善を望みます。

一方、谷本さんは“AI エージェントでいいんじゃない?”。「(各政党)自分たちが言いたいことはほぼ決まっていると思う。そして、どの局を聞いても(主張が)同じならば、全てを網羅でき、絶対に間違えないAI エージェントに(頼ればいい)」としつつ、「けれども政治家が人間としてできることもある。そこに特化していくと本当の意味での質的公平が保たれるのではないか」とも。

池田さんは“オールドメディアの意識改革”を訴え、そのために必要なこととして“攻めの政策報道”、“過去の徹底検証”、“ファクトチェック機能を前のめりに”の3つを挙げます。

そして、堀は“オピニオン<ファクト 問いを立てる”。「(テレビ)番組そのものがオピニオン偏向になり、ファクトの数が圧倒的に足りない。ファクトをきちんと出し合えるような、責任を持った報道をやるべき」と主張。

さらに、田中は“視聴者・有権者の声”を挙げ、「公平を考えるのは本当に難しい。記者ひとりひとりも公平なのかと言われると全く中立の人は難しい。有権者・視聴者の声、もっと声を上げてもらうしかないのかなと思った」と感想を述べていました。

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<番組概要>
番組名:「堀潤激論サミット」
放送日時:毎週金曜 21:00~21:25 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
TVer」で放送後1週間Tverにて無料配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

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