広告代理店なしで資金調達、新たなクライアントも獲得…東京デフリンピックに見る今後の国際イベントのあり方とは?

2025.12.26(金)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では東京デフリンピック大会運営者を交え“今後の国際イベントのあり方”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では東京デフリンピック大会運営者を交え“今後の国際イベントのあり方”について議論しました。

◆広告代理店を通さずに資金調達!

きこえない・きこえにくい選手の国際大会「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025(以下、東京デフリンピック)」が11月26日に閉幕。今大会、日本は金メダル16個、銀メダル12個、銅メダル23個、合計51個のメダルを獲得。目標としていた前回大会の31個を大きく上回りました。

その一方で開催にあたり注目を集めたのが、広告代理店を通さずに資金調達をしたこと。いわゆる“脱代理店”です。

「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」では大会運営を巡り広告代理店による不正受注が発覚。公正取引委員会が電通グループなど7社に対し課徴金納付命令を下すなどそのあり方が問題視されました。しかし、東京デフリンピックは160の企業・団体の協賛などにより、広告代理店なしでスポンサー収入が目標の6億円に到達する見込みです。

今後、国内で開催される国際イベントは広告代理店不介入がスタンダードとなるのか。今回は哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さん、弁護士の島田さくらさん、経済アナリストの池田健三郎さん、さらには東京デフリンピック成功の立役者であるデフリンピック準備運営本部の板倉広泰総務部シニアマネージャーを迎え、国際イベントのあり方について議論しました。

◆国際イベントに広告代理店は必要か?

東京デフリンピックの大会経費は東京都が100億円、国が20億円を負担し、残りを160の企業・団体の協賛金6億円、寄付金3,000万円、各種助成金などを含めた自主財源10億円で賄いました。なお、競技は無料観戦、チケット収入はありませんでした。

しかも、国際イベントでは通常、運営側から受注した広告代理店がスポンサー営業、PR 戦略、メディア調整、制作会社の選定などを行いますが、前述の通り今回は広告代理店を介していません。

まずは国際イベントに広告代理店は必要か、コメンテーター陣に聞いてみると、池田さんは“必要”。「PRはノウハウが要るので専門家を雇った方が安上がり、納税者負担が少なく済む。PR に携わる人間としては常にそう思っている」と断言する傍ら「ただ、なんでもかんでもやる大手広告代理店が必要かというとそれは疑問。本当に必要なところだけを専門家に頼むのが効率的」とも。

萱野さんも“必要”。池田さん同様専門家に頼れる部分は頼るべきとし、「代理店に頼むことの弊害も指摘されているが、透明化することも責任主体があるからこそ進むと思う。全部自分でできれば素晴らしいが規模によってはできないこともあるし、透明化やコンプライアンスに関していえば組織の力も必要」と持論を述べます。

一方、島田さんは“不要”。「広告もテレビやラジオなどに限らず、今はインターネットやSNSなどを活用する仕組みがあるので、必ずしも既存のやり方にとらわれる必要はないのでは」とその理由を語ります。

キャスターの堀潤も“不要”。広告代理店の業務は専門的な技能だけに「新しい職能専門集団としての関わり方が重要」と“新しい専門集団”の必要性を提案。

これらの意見を聞き板倉さんは「広告代理店を使わない営業は厳しいものがあった」と今大会を振り返りつつ、「デフリンピックはテレビで中継されるような広告効果があるイベントではないので、(既存の国際イベントと)同じようにやっていたら無理とアドバイスをいただき、やり方を振り切った」と明かします。

そして「要はお金ではなく、モノやサービスの提供などどんな形でもいいから関わってくださいとお願いをして回りました。また、直接回ることで企業のニーズも聞くことができたので手探りで工夫をしながらやっていった」と苦労を吐露。

さらには、「今回は僕らの思いを汲んでくれた企業が多く、自発的にやってくれたり、企業同士で交流して新しいアイデアを出し合い大会を盛り上げていただいたので、そういった関係性は今後の財産になると思います」と話します。

◆大手代理店ではできない独自戦略

今回は東京デフリンピックの協賛企業のひとつ、伊豆大島の土産屋「えびすや土産店」を取材しました。

まずは協賛した経緯を同店の津崎さんに伺うと、営業などがあったわけではなく、伊豆大島で「オリエンテーリング」という競技が行われるのをたまたま知ったのがきっかけだとか。

そこで競技に対するゲームズサポートメンバーとして約5万円分の商品を提供。津崎さんは「ピンポイントのスポンサーみたいな感じでやらせていただいて、比較的に手が挙げやすかった。そういう工夫をしていただいてよかったと思う」と言います。

協賛したことによる成果もあったそうで「開催期間中、(耳が)聞こえない方も買いに来てくださった。あとは通販の備考欄にもオリエンテーリングの関係者とわかる表記もあった。会場に来られてなくても(店を)知っていただいて、通販していただいたのでプラスの効果はあったと思う」と津崎さん。

一方で課題も。それは少額・小規模でも協賛できることの周知不足です。津崎さんは「もっと(情報を)発信していただければウチのようなところがもうちょっと出たと思う」と話していました。

小規模協賛も良しとした今回の手法に対し池田さんは「通常、大手代理店では(小さな業者は)顧みることがない。そういう意味では細かいところにも目配りができた対応」と評価。堀も「経団連に名を連ねるいつものスポンサーではなく、東京には潜在的な力があると感じられた」と賛同します。

対して板倉さんは「今回は“共生社会の実現”を目的としていて、例えばダイバーシティなどを掲げている企業がそれを実現する場として活用したいといってくださった。そうした点では通常のスポーツ大会で協賛しない企業がたくさん集まっている印象」と今大会を総括する一方で「総動員でやってはいたんですが、どうしても至らなかった部分はあった」との反省の弁も。

◆広告代理店を活用するメリット・デメリット

改めて広告代理店の有無によるメリット・デメリットを見てみると、代理店なしの方がコストが抑えられ、透明性が高くなる傾向にあります。しかし、代理店には豊富なノウハウがあるため企画力が上がり、大会進行も潤滑。さらには、代理店なしだとメディア露出が不足する恐れがあります。また、スポンサー営業も運営側の負担が拡大しますが、今回のように新たな協賛企業を見つけられる可能性もあります。

総じて板倉さんは「広告代理店の方が情報を持っていると思うので、(広告代理店を使うかどうかは)大会によって良し悪しがあると思います。ただ、今大会を通じて思ったのは、大会が目指す理念を明確にし、そこに噛み合うような企業にいかにアプローチできるかが大事」と今大会を経ての感想を語ります。また、「代理店に頼んだ場合、その代理店と付き合いのある業者が増えると思いますが、今回は大会の理念に賛同してくださった企業が集まり、みんなで大会を支えようという気持ちが高まった」とも。

板倉さんの話を聞き、堀は「今(社会)は“次の公共の価値”を探っている。今までお付き合いのあるところに慣例的に受注してしまうと、競争や発見、イノベーションが起きづらかったと思うので、(今回の取り組みは)次の公共の価値を作る上でもすごくよかったと思う」と称賛。

一方で萱野さんは「今回の経験によってノウハウが蓄積され、これが繰り返されて独立するとそれはそれで代理店化していく。そうなった時に弊害が生まれるので、そこで透明化することが必要になってくる」と透明性の重要性を強調すると、池田さんも「例えば東京オリンピックで問題になったのは組織委員会が公なのか民なのかわからず、情報公開がなされないこと。後の情報公開に耐えられるコンプライアンスが大事」と追従します。

◆代理店を通さない場合の課題は?

代理店に頼らないイベント運営には課題もあります。最大の課題は“認知度”で、デフリンピックの場合は競技や選手、大会そのものへの関心が続くか課題が残ります。また、運営チームの解体や担当者の交代で営業を含めた運営ノウハウを継承していけるかも問題です。

この“認知”という部分については、ただ大会を知るだけの人もいれば、本当に大会を愛し、行動変容につながることもあるだけに、堀はその濃淡を疑問視すると池田さんも同意。「要するにイベントを行う上でのゴール・ミッション。何を目指し、何ができたら成功なのか定量化されているかどうか。コストが安くついたが誰の記憶にも残らない、誰も行動変容が起こった形跡がないのはミッションを達成したことにはならない」と憂慮。

この点に関して板倉さんは「デフリンピックをやったからすぐに共生社会が実現するとは思ってなくて、まずはこの大会を通じて少しでも知ってもらう、何かを考えてもらうきっかけになればと思っていました。その点では今回多くの方々に来ていただいて、第一歩としては良かった」と言います。

◆今後の国際イベントのあり方は?

最後に、今回の議論をふまえ国際イベントのあり方についての提言を発表。まず島田さんは“目的ごとの選択肢”。「どこをゴールにしていくかというところで、従来通り代理店を通してやった方がいいものと今回のような方法を選べるような状態になれば」と切望します。

一方、萱野さんは“分業と透明性”。「代理店の存在は結局社会が分業されていったひとつの結果で、そうした特定のノウハウを蓄積した集団が企業として存在するとなると流れとしては避けられない部分はある」とし、その上で「やはり透明性が重要になると思う」と改めて主張。

また、池田さんは“代理店代替機能 ・記録 ・ミッション達成度 ・ノウハウ検証 持続可能な仕組み”。「これを構築して引き継いでいく、そうすればどんなイベントもできるようになる」と言います。

そして、板倉さんは“多くの主体が支える大会”。「ボランティアや協賛企業含め、今回はみんなで作る、我々だけでは成し得ない大会で、いろんな方々に助けていただいてできたと思っています。特に協賛企業についてはこれまでスポンサードしていない企業にも参加していただいて、こういった輪がどんどん広がっていけばと思っています」と話していました。

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<番組概要>
番組名:「堀潤激論サミット」
放送日時:毎週金曜 21:00~21:25 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
TVer」で放送後1週間Tverにて無料配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

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