膨張する医療費、“OTC類似薬の保険適用見直し”について日本維新の会・猪瀬直樹議員と徹底議論

2025.12.19(金)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では、作家で日本維新の会の猪瀬直樹参議院議員を迎え、OTC類似薬の保険適用見直しを含めた“医療費削減のあり方”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では、作家で日本維新の会の猪瀬直樹参議院議員を迎え、OTC類似薬の保険適用見直しを含めた“医療費削減のあり方”について議論しました。

◆超高齢化社会で膨らみ続ける医療費

2023年度の医療費は約48兆円と過去最高となり、30年前と比較すると約2倍にまで膨らんでいます。

日本維新の会はそんな医療費の年間4兆円削減を政策目標に掲げ、実現すれば現役世代1人あたり年間6万円の社会保険負担が軽減すると試算しています。

そこで注目されているのが「OTC類似薬の保険適用見直し」です。

薬局やドラッグストアで販売されている全額自己負担のOTC医薬品(市販薬)に対し、OTC類似薬は市販薬と同じ成分や類似した薬効を持つ薬で、原則として医師からの処方箋が必要な医療用医薬品です。こちらは医療保険が適用されるため1〜3割という低い自己負担で購入することができます。

しかし、一方で軽微な症状でも医療機関を受診する人が増え、社会保険料の負担増加が課題となっています。

ただ、この問題については経済的な負担や受診控えの懸念から患者団体や日本医師会などからは反対の声があがっており、日本医師会の重松副会長は「国民にとって負担や不利益が大きい」と警鐘を鳴らします。

果たしてOTC類似薬の保険適用見直しは必要か。さらには医療費を減らすためにはどうすればいいのか。今回は、猪瀬直樹参議院議員、株式会社ABABA代表の久保駿貴さん、エッセイスト・メディアパーソナリティの小島慶子さん、ジャーナリストの春川正明さんとともに考えます。

◆OTC類似薬保険適用外で1兆円の医療費削減

国会でOTC類似薬の保険適用見直しが議論され、自民・公明・維新の3党協議では自分自身で健康管理を行い、軽度の不調は自分で手当を行う「セルフメディケーション」の推進を図っていくとしています。

OTC類似薬の保険適用見直しを行う理由について、日本維新の会は実行することで1兆円規模の医療費削減が見込まれるとし、さらに猪瀬議員は「(医療費は)毎年1兆円増えていて、2040年には65兆円になってしまう。保険で(薬が)安く手に入るから(自分は)傷まないような気がしているが、最終的には保険料負担が大きくなる」と危惧。

では、保険適用のOTC類似薬と適用外の市販薬では価格にどの程度の違いがあるのか。猪瀬議員は花粉症の薬(フェキソフェナジン60mg14日分)を例に解説します。病院で処方された場合、薬剤費が470円で、そこに初診料や処方箋料、薬局での技術料など様々な経費が加わり総額は5,820円。しかし、保険適用のため負担は1〜3割で、最終的には582〜1,746円で購入できます。ただ、これはドラッグストアでも1,055円で買えるそう。つまり、OTC類似薬と市販薬は現状価格に大差はありません。

しかし、メディアなどで報道される場合、市販薬は2,000円程度とされることが多いとか。その理由は、試算する際にメーカー指定価格が用いられているから。それだけに猪瀬議員は「マーケットの自由競争では安く手に入る、それを前提に議論していない」と苦言を呈します。

ここで小島さんからは「気になるのは慢性的な病気をお持ちで、薬を長くのに続けなければいけない場合や、今以上の経済的負担は厳しい方の受診控えが起きたり、セルフメディケーションは自己診断で誤ってしまう心配もあるが、大丈夫なのか」との不安の声が。これに猪瀬議員は「おっしゃる通り大変な人はいる。でも、それは(保険)適用外にしなければいいだけです」と返答します。

◆病院が相次いで倒産している理由

日本医師会がOTC類似薬の保険適用見直しを反対する主な理由は3つ。医療機関への受診控えによる健康被害経済的負担の増加。さらには自己判断だと薬の適正使用が難しくなることで、ほかにも病気が重篤化したり、合併症を起こすなどしてかえって医療費が高額になるリスクがあると懸念しています。

キャスターの堀潤は日本医師会の意見をもとに、OTC類似薬が保険適用外になった場合の副作用の緩和策、それこそ受診控えで医療機関の経営が弱体化することもあるのではないかと質問すると、猪瀬議員は「病院は確かに倒産するところが出ている」と昨今懸念されている病院の赤字・倒産問題に言及。

猪瀬議員によると、倒産が相次ぐ病院に対してクリニックは増加しています。なぜなら利益があるから。一般的にクリニックの開業医の年収が3,000万円程度に対し、夜勤もある病院の医師はその半分以下だとか。

「高度な機械を入れてやっている病院が赤字。ところが我々が普段お世話になっているクリニックは儲かって増えている。ここが問題なんです。病院(入院)とクリニック(外来)は分けて考える必要がある」と猪瀬議員。さらに診療報酬は「クリニックは下げて病院は上げるように考えるのが正しい考え方だと思う」と私見を述べます。

また、猪瀬議員は医薬品の分類についても触れます。現状では医療用医薬品として保険適用されているものが「処方箋医薬品」と「OTC類似薬」。そして、保険適用外の一般医薬品の「第一類」と「第二・第三類」があります。それぞれの市場規模は処方箋医薬品が約11兆円でOTC類似薬が約1兆円。一方で一般医薬品は約8,000億円と偏りがあり、猪瀬議員は一般医薬品の市場拡大を切望。そもそも海外では一般医薬品が主体になっているそうです。

「上流(医療用医薬品)を供給側・生産者側と考え、下流(一般医薬品)は患者、消費者側。どちらを主体に考えるか。上流は既得権益の世界でどうしても強い。患者側はまとまってないですから。この流れを下流に持ってくるのがセルフメディケーションで、下流で薬剤師さんがもっと活躍する場を与えないといけない」と猪瀬議員は主張します。

◆病院の前に薬局が並んでいる理由

では、薬剤師はこの問題についてどう思っているのか。3割の薬剤師が加入している日本薬剤師会の渡邊大記副会長は「保険適用から外すこと自体反対」と明言。市販薬がOTC類似薬の代替品の役割を果たす考え方に意義を唱えます。

「医師と薬剤師が連携しながら、患者さんの安全担保のために全てをやっている。だから似たようなものを使うとかはありえない」と渡邊副会長。そもそも市販薬がOTC類似薬と同等の成分を含んでいたとしても不要なものが入っていたり、用途や用量、価格などさまざまな違いがあり、さらには「商品が全ての薬局に安定的に供給できる体制が敷かれているのかと問うてもそれも否」と問題点を指摘。

加えて、価格の違いによって本来使用されるべき薬が選ばれなくなることを憂慮。渡邊副会長は「大切にすべきは、必要な医療がしっかりと患者さんに届けられるかどうか。自己負担金の有無で受診をさけたり、この薬は高いから飲まないというような制度になるべきじゃない。見直しをすると負荷がかかるのは薬剤師ではなく患者さんに不利益になる」と語る傍ら「ただ、医療費に関しては皆保険制度の維持のために最大限の継続可能性の部分は必要だと思うが、必要な医療がしっかり受けられる制度、そういう視点から見ていくべき」とも。

この意見に対し猪瀬議員は「門前薬局がズラズラと並んでいるが、みんな同じものを調剤していて競争しているわけではないんです。つまり、それだけ儲かっているということ」と病院の近隣に数多く軒を連ねる門前薬局を問題視。

「お医者さんに処方箋を書いてもらって調剤薬局に行くと、調剤基本料や薬剤調整料、調剤管理料などが取られるわけですよ。そして400円の薬が6,000円とかになる。服薬管理指導料が45点と書いてあるが、これは450円ということ。そして『お薬手帳を持ってますか?』って聞かれて『持ってます』と答えると450円、『持ってない』というと590円取られる。どっちにしろ取られるんです。(処方箋には)そういうものがいっぱい入ってる」と猪瀬議員は不満をあらわにします。

◆医療費を減らすためにはできることは?

最後に、今回の議論をふまえOTC類似薬保険適用除外の是非、医療費を減らすための方法について参加者が提言を発表します。

まず春川さんは「OTCからは少し離れるが」と前置き“予防医療・かかりつけ医”を提案。「病気にならないようにする予防医療に力を入れるとともに、かかりつけ医をちゃんと決めて、その人を通して大きい病院に行くような形がいいと思う」と理想を語ります。

久保さんも同じく“治療型から予防医療”で「我々ができることはこれしかない。スタートアップでも予防医療のものがあり、24時間相談に乗ってくれるシステムがあったりするので(予防医療を)実現してほしい」と言います。

一方、小島さんは「私自身、薬のアレルギーがあるので、自分で判断するのは怖い。本当に自分の症状に必要な薬、適切な薬はなんなのか。無駄なお金はおさえつつ専門家の助言が欲しい」と言い、適切な薬選びのための専門家へのアクセスの確保を求めます。

猪瀬議員は“既得権益×医師会 セルフメディケーション!”。「要するに医師会というのが既得権益で、薬剤師会はその子分になっている。小島さんが言われたことは大事だが、薬剤師がきちんと説明しているのかということ。それでセルフメディケーションをやる」と主張します。

そして、堀は“PHR(パーソナルヘルスレコード)などDX、かかりつけ薬剤師、視える化”。「やっぱり透明化、ユーザー側もわかりやすさが必要なので、PHRをはじめとしたDXを進め、リアルタイムでオンラインでもかかりつけの薬剤師にその場でアドバイスが受けられるとか改革の余地はたくさんあると思う」とさらなる進化・発展を望んでいました。

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<番組概要>
番組名:「堀潤激論サミット」
放送日時:毎週金曜 21:00~21:25 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
TVer」で放送後1週間Tverにて無料配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

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