東京・伊豆諸島の八丈島は、台風による被害から2カ月がたちました。停電や断水は解消したものの暮らしや産業への影響が続く中、八丈島出身のアーティストが島でライブコンサートを開催し、地元の人たちに元気を届けました。
11月30日、八丈島のライブハウスに歌声が響き渡りました。演奏するのはロックバンド「MONO NO AWARE(モノノアワレ)」です。日本最大規模の音楽イベント「フジロックフェスティバル」に出演するなど若者たちから人気のバンドで、作詞・作曲を手がけるボーカル兼ギターの玉置周啓さんとギターの加藤成順さんは八丈島の出身です。
台風で土砂災害に見舞われた末吉地区で生まれ育った玉置さんは、慣れ親しんだふるさとの風景が大きく変わってしまったことにショックを受けたといいます。玉置さんはライブ前日、TOKYO MXのインタビューに対し「何とも言えない脱力感というか、悲しいどころではない感じがあった。報道で見る人ごとではないという感覚になった」と話しました。
台風被害が発生する前から島内でのコンサートを予定していたというMONO NO AWAREでしたが、暮らしや産業への影響が続く中、島で演奏すべきかどうか葛藤があったといいます。それでも「地元の人たちに少しでも楽しい気持ちになってほしい」と開催を決めました。玉置さんは「このケースは、メッセージではどうしようもないということも実感した。ライブしかできないし、来てもらった人が『楽しいかも』としか、こちらが出せるポジティブなメッセージはない」と判断した理由を語りました。
大学進学を機に八丈島を出た玉置さんでしたが、この日は島内だけでなく全国から駆け付けた300人以上のファンを前に「ふるさとへの思い」をつづった楽曲を演奏しました。玉置さんは「東京から来た人も島の人も、リフレッシュになってくれたら。それしか僕らはできないので。きょうはそれができましたか」と観客に向けて呼びかけました。
最後には母校である旧末吉小学校の校庭で毎年行われるお盆の祭りで恒例という「高速マイムマイム」を演奏し「おい!がれきだらけの末吉小学校の校庭でいつか盆祭りやるぞ!」と盛り上げました。玉置さんはインタビューで「末吉地域の盆祭りでマイムマイムをよくやっていて、それを小さい頃からいいなと思っていた」と笑顔を見せました。
参加した島の人からは「高速マイムマイムがすごく楽しかった」「台風の後に初めての大きなイベント。みんなの活力になったんじゃないかと思う。ありがたかった」「つらい時もあったので、こういったイベントが少しずつ広がってほしい。特にMONO NO AWAREがすごく好きだったので元気をもらった」などといった声が聞かれました。
2カ月にわたり復旧や復興に奔走してきたふるさとの人たちに届けたのは、音楽に浸るひとときとあすへの活力──「幸せな島の時間」でした。玉置さんは「悲しい目に遭った人もいるし、楽しくしたい日がある人もいる。『幸せだな』って島の人も、島に来る人も思えるような島であってほしい」と話し、ふるさと・八丈島の復興を願い続けています。





