労働時間規制の緩和は必要なのか?「本当に必要な働き方改革」とは?識者が徹底議論!

2025.12.08(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では、高市総理が推進する“労働時間規制の緩和”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では、高市総理が推進する“労働時間規制の緩和”について議論しました。

◆労働時間規制の緩和に関する高市総理の真意

自民党総裁に就任した際「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てます」、「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と語った高市総理。11月7日には午前9時からの国会に備え午前3時から勉強会を行うなど精力的に働いていますが、そんな高市総理が推進しているのが“労働時間規制の緩和”です。

高市総理は働き方改革で残業時間に上限が設けられたことによって収入が減り、副業を余儀なくされている人がいることなどを危惧しているとしています。

しかし、野党議員からは規制緩和で労働者が長時間労働を強いられるなどの懸念の声が。また、日本の労働組合の中央組織「連合」も現行の残業の上限規制は過労死認定ラインで、緩和は働き方改革の逆行にほかならないと抗議。いまだに過労死、過労自殺はなくならず、働き方改革の実現には程遠いとしています。

果たして労働時間規制の緩和は必要なのか。本当に必要な働き方改革とは何か、識者を交えて徹底議論します。

まず、現状について今回議論の参加者の中で唯一の会社員、キャスターの田中陽南は「働きたい人だけが働く仕組みを作ってくれるならいいと思います」、「やりたいことがたくさんあるので一律に仕事の時間が延びると自由な時間も減りますし、今後子どもを産んだり介護が必要かもしれないと思うと、働く時間を延ばすのは厳しい」と率直な思いを吐露。

ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは「一番の問題は残業にお金が出ること」と指摘。「残業にお金が出なければ誰もやりたくない、そこがポイントの気がする」と話すと、キャスターの堀潤も「残業代は賃金、生活費そのものでそれを含めて生活設計をしてしまうのはよくない循環」と同意します。

一方、應義塾大学教授の中室牧子さんからは今回の議論にあたっての留意点が。「総理から厚労大臣に対しての指示は“心身の健康維持と従業者の選択を前提とした労働時間の緩和の検討”。なので、全ての労働者の残業時間の上限を一律に引き上げることを意図したものではない」と注意を促します。

かたや統計家の西内啓さんは「労働生産性というところでは、8時間を超える仕事はパフォーマンスが上がるかといえばそうでもなく、睡眠時間を削るとパフォーマンスが下がるとデータで出ている」と規制緩和は雇用する側もコスパが悪いと主張。さらには、「忙しすぎて“斧を研ぐ時間がない”という例えがあるが、斧は絶対に研いだ方がいい。自分という斧を研ぐ時間の確保は今でもギリギリなんじゃないか」と案じます。

また、中室さんからは「規制緩和の話は経済界から出てきている」との意見も。「今の日本経済の問題は供給不足にあって、供給不足の根源は人手不足。そのため生産できないという供給サイドのボトルネックで潜在成長率が上がらないので、そこをなんとかしたい経済界の強い要望からきていると思う」と解説。

ここでマライさんからはドイツの労働環境を紹介。前述の通り日本は「残業=お金」ですが、ドイツでは「残業=時間」で残業した分、休みを取るのが普通だそうで、それを日本でも導入したらどうかと提案します。

これに対し堀が「雇い主側に賃金を上げたくなるようなモチベーションの誘導策が必要」と追従すると中室さんも賛同する傍ら、続いて日本の労働時間が減少している所以について言及。

「日本の労働時間減少には3つの要因があり、ひとつは正社員の労働時間の減少。そして、パートタイムの労働時間の減少。それから正社員だった人がパートタイムに転じたことによる労働時間の減少があって、大きいのは3番目なんです。要は65歳まで正社員で働いていた人がパートタイムになることがここ数年で急激に増えたことが日本全体の労働時間減少に一番大きく寄与している」と言います。そのため、これはそもそも規制の問題ではないと中室さんは指摘し、「この問題を労働時間規制の緩和で解決すべきなのかすら議論しなければいけない」と訴えます。

◆収入減の運送業界、悲痛な声に対して専門家は…

働き方改革によって最も影響を受けた業界のひとつ“運送業界”の方々は今回の規制緩和をどう受け止めているのか。運送会社を経営し、自身もドライバーとして働く晴海コンテナ輸送の谷村社長は「高市首相の労働規制の緩和、ぜひ進めていただきたい」と切望します。

運送業界は2024年の「働き方改革」の一環で時間外労働に上限が定められました。谷村社長によると、運送は距離か時間で料金が決まるため、労働時間が制限されるとその分がそのままドライバーの収入に直結します。30年前にこの業界に入った谷村社長は当時昼夜働き、20代にして手取り100万円程度稼ぐこともあったとか。しかし、今では最も稼ぐ人で総支給額が50〜60万円程度。「時間の制限があると稼げなくなってきている。その魅力はだいぶ薄れた」と悲嘆します。

また、ドライバーの中にはもっと稼ぎたい人は一定数いるとし、「子どもが4〜5人いる人と独身では背景が違うので、その人に合った働き方をさせてあげられたら一番いい。いい給料を支払いできる環境が作れたら最高」と話していました。

中室さんは谷村社長の意見を理解できるとする一方、「今の話も全ての労働者の残業時間を一律に緩和することを前提とした議論をされているような気がしますが、多分そうはならない」と言います。加えて、「今議論されているひとつが繁忙期限定で上限緩和をしてはどうかという話。季節性の需要増加に対応して人を増やすのは経営上合理的ではないので繁忙期に限り限定的な条件緩和をしてはどうかという議論はあり、これは一考に値する」とも。

現在、中室さんは政府の規制改革推進会議の委員としてこの問題に取り組まれています。そこで、本当に必要な働き方改革について伺ってみると「大事なのは時間ではなく柔軟性」、「働き方の柔軟性を高める規制緩和が必要」と言います。例えば、1日10時間週4日働き、残り3日間は休む働き方。これは早番や遅番など分担がある保育士などにもメリットがあるそう。また、1時間単位で取れる有給の拡大も育児や介護、通院などの労働者の細かなニーズに対応でき、ワークライフバランスの向上にも効果的ではないかということです。

こうした意見に堀は「(規制緩和は)経済界からのリクエストという話だが、求めるのではなく自ら変化し、柔軟なありようを作っていく側にまわってほしい」と企業側の変化を望むと中室さんも同意。

そして、「厚労省の調査で、6%の労働者がもっと働きたいと言っているが、そのうち半分は週30時間以下のパートタイム労働者。この人たちは実は103万円の壁に当たっている。だから、これは労働時間規制緩和の話とは関係ないんです」と指摘します。

◆労働時間規制は緩和すべき? 必要な働き方改革とは?

最後に、今回の議論をふまえ労働時間規制は緩和すべきなのか。そして、本当に必要な働き方改革とは何か、コメンテーター陣が提言を発表します。まず西内さんは先にも述べた通り“斧を研ごう”。「経営者から見ても社員の生産性を上げる投資は絶対必要。斧を研ぐ選択肢は忘れないようにしたい」と自分磨きの必要性を改めて強調します。

続いてマライさんは“同調圧力を廃止した上での緩和”。「そうでないと意味がない」と言い、さらには「それぞれ自分のプライベートがあると思うので、それをまず大事にできるようにしたい」とも。

そして、中室さんは“高度プロフェッショナル制度の改革”。「“ホワイトカラーエグゼンプション”といって、高い専門性を持った人たちが時間に縛られない働き方をするということ。スタートアップや専門性の高い人たちは時間ではなく成果で働く方向に切り替えていく、それが今後議論になっていく」といい、改めて「全ての労働者の残業時間を一律になくすという話ではなく、どういう範囲の人たちのどこを改革していくのかが今後重要になってくる」と強調します。

また、堀は「個人がそれぞれきちんと“契約”を結んで、自分の働き方が交渉できるのが当たり前になれば」と理想を語ります。

一方、田中は「マライさんが言っていたように残業を時間で返すシステムを日本でも導入してほしい。選べるようにしてほしい」と望んでいました。

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<番組概要>
番組名:「堀潤激論サミット」
放送日時:毎週金曜 21:00~21:25 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
TVer」で放送後1週間Tverにて無料配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

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