TOKYO MX（地上波9ch）の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」（毎週月～金曜20:00～）。家計に関するお金のニュースを深掘りする「豊崎由里絵の家計Lab」のコーナーでは、高市総理肝入りの物価高対策のひとつ“給付付き税額控除”について取り上げました。
◆給付付き税額控除とは？
高市総理は10月の所信表明演説で、「税や社会保険料で苦しむ低所得者・中所得者層の負担を軽減し、所得に応じて手取りが増えるようにしなければならない」とし、給付付き税額控除の推進を表明しました。
「給付付き税額控除」とは税金の控除と現金給付を組み合わせたもので、所得税などから一定額を控除し、控除しきれなかった分を現金給付していく仕組みです。メリットとしては、低所得者・中所得者層の手取りが増えるよう調整することが可能です。
例えば控除額10万円の場合、納税額が15万円のAさんは控除額10万円を超えているので現金給付は0円。一方、納税額8万円のBさんには、控除額10万円との差額分、2万円が現金給付の対象となります。そして、非課税で納税額0円のCさんは、控除額10万円全額が現金給付額となります。
この給付付き税額控除を巡っては、もともと立憲民主党が導入を求めてきましたが、現在は自民党と公明党、維新の会も含めた4党で協議を進めています。しかし、この制度を導入する上では課題もあります。
◆給付付き税額控除導入への大きな壁
財務省で財政政策にも関わっている専門家、東京財団 シニア政策オフィサーの森信茂樹さんは「まずは国民全員の所得を把握するシステムを作る必要がある。制度＋実行するインフラの両方を考えていかないと給付はできない」と言います。
しかし、日本は国民の所得を一元化して把握する仕組みがまだ整っていません。そのため導入には時間がかかり、さらには個々の生活状況に応じた給付や控除を行うことが困難だとか。
そこで森信さんは日本がモデルにすべき国を挙げます。それは“イギリス”です。イギリスでは毎月の所得や就労状況に加え、介護の有無や子どもの人数などを国がリアルタイムで把握するデータベースを構築。
そして、そのデータベースを活用した制度が「ユニバーサル・クレジット」。これはさまざまな給付金や税額控除を一本化した包括的な社会保障制度で、世帯ごとの生活の変化に対応し、迅速かつ適切な給付を行うことができます。
ただ、これはそう簡単にできるわけではありません。森信さんは「（イギリスのような）データベースを作るのに1〜2年はかかると思う。まず（国が）個人個人の所得をマイナンバーで把握する必要がある。自治体は把握しているがマイナンバーをどう給付につなげるというそのシステムがまだできていない。それを作る必要がある」と指摘します。
この意見にキャスターの堀潤も同調。「デジタル共通基盤が最初から一律の様式で毛細血管のように張り巡らされていればいいが、デベロッパーごとに違ったりする…」と日本の問題点を示唆。
さらには国際情報誌「フォーサイト」元編集長の堤伸輔さんも「国がいろいろなところに発注してしまい、そもそも繋がりにくくなっているのが日本のやり方」と追従する一方で、「マイナンバー制度はこういうことをできるようにするために始めたはずだが、今の議論を聞いているとちょっと諦めかけたような…」と苦慮。
そして、「マイナンバー（制度がしっかりと）できれば、こういう給付もやりやすくなる。コロナの時もこの給付付き税額控除があれば特別定額給付金もプッシュ型で配れたはず。ただ、できないといってやらないでいるといつまでも給付を現金でしないといけないので、私はどこかで踏み切るべきだと思う」とシステムの構築を熱望します。
元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんも「（給付付き税額控除は）いろいろな負担の壁を解消する非常に有効な策だと思う」と評価し、導入する上でのポイントに言及。
「これができるかどうかは、政府が国民から信頼されているかどうか。住民は自治体のことを信頼しているけど、あまねく全ての国民が政府を信頼しているわけではないので、このシステムの一元化は難しいと言われている。まずは世論形成から必要なんじゃないか」と語ると、堀も「北欧の国々も50年ぐらいかけて信頼関係とトライ＆エラーを重ねてきて構築してきたと言われている」と補足していました。
＜番組概要＞
番組名：堀潤 Live Junction
放送日時：毎週月～金曜 20:00～21:00 ＜TOKYO MX1＞
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
キャスター：堀潤（ジャーナリスト）、豊崎由里絵、田中陽南（TOKYO MX）
番組Webサイト：https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
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