JICAホームタウン事業が「移民が増える」と批判殺到で撤回…移民への懸念とどう向き合うべきなのか?

2025.11.21(金)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では、元JICA職員で「日本維新の会」の衆議院議員・青柳仁士さんを迎えて、“日本の移民政策”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。放送では、元JICA職員で「日本維新の会」の衆議院議員・青柳仁士さんを迎えて、“日本の移民政策”について議論しました。

◆国民からの批判でJICAのホームタウン事業撤回

今年8月、JICA(国際協力機構)がアフリカとの交流促進を目的とし、日本の4つの市をアフリカの4ヵ国のホームタウンに認定する「JICAアフリカホームタウン」事業の構想を発表。その翌日にナイジェリア政府が「日本が高い技能を持つ若者に特別なビザ制度を創設する」との誤った情報の声明を出しました。

すると、日本国内で「移民が増える」などの情報が拡散され、認定された4市に抗議が殺到。JICAはナイジェリア政府の声明を否定し、ナイジェリア側も声明を削除しましたが、批判の声は収まらず。最終的に、「JICAアフリカホームタウン」事業は撤回となりました。

外国人の受け入れに関しては、労働力不足解消や人口減少緩和が期待される一方で、行政コストの負担や治安悪化を懸念し、反対する声も少なくありません。今回のような事態を避けるため、移民への懸念にどう向き合っていくべきなのか

元JICA職員の青柳さんは「基本的には、国に司令塔を作る。これに尽きると思います」と主張。「欧米は地続きで移民は必ず受け入れないといけないなかで、いかに社会統合していくか考えましたが、日本の場合は受け入れなくていいという状態のなかで部分的に解放してきたものですから、全体的な戦略がない」と補足します。

「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さんは、「多様なルーツを持っている人たちがアイデンティティを大事にしながら、この社会で一緒に暮らすにはどうしたらいいのかという観点で、政策を作っていくことが大事」と移民政策のポイントを示唆。

一方、国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさんは「シリコンバレーは今、移民がマジョリティで白人はマイノリティ。(アメリカに)インターネットの覇権を握らせたのは、移民の力」と移民によるメリットを述べます。

◆「ホームタウン事業」誤情報はなぜ拡散? 

ホームタウン事業を手掛けた「JICA(国際協力機構)」は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関で、所管は外務省。開発途上国の社会課題を解決するために、技術や資金の協力、ボランティアの派遣や民間企業の海外展開への支援などを行っています。

このJICAが日本の4つの市をアフリカ4ヵ国の“ホームタウン”に認定し、自治体との交流を図る目的で構想されたのが「JICAアフリカホームタウン」事業。このホームタウン事業については「撤回する必要はなかった」と話す青柳さん。「完全な事実無根、誤情報に基づく風評が国の事業を止めてしまうのは、国益に適わない」とも。

なぜなら「JICAは国際協力を行うための独立行政法人ですから、JICA法に基づくことしかできない。ビザを発給したり、移住を定住させたり、そのための調査をすることは一切できない」とその理由を明かします。

さらには、これまでJICAは日本人を海外に派遣して他国の経済成長や発展を促してきましたが、「今回は“(日本の)自治体そのものが技術の塊である”として各国の外国人を呼び込み研修するという、より先進的な取り組みであった。だから分かりにくかったし、名前も良くなかったかもしれない」と説明。そして「新しいODAの形を作ろうとするチャレンジに対して、みんなでよってたかって潰してしまったら、国の事業なんて萎縮するだけだと思います」とも。

キャスターの堀潤からは「これはアフリカと日本独自の関係を築いていくなかでの施策で、(中国やロシアの影響力が世界に広がる中で)日本を守るためにも諸外国との関係強化が必要だということが伝わらなかった。普段からそれを伝えていなかったメディアが悪いと思う」との意見が。

加えて、ジャーナリストの春川正明さんが「メディアもそうだが、JICAは素晴らしいことをやっているのにあまり知られていない」とJICAの発信力不足を指摘すると青柳さんも同意し、JICAにより一層の広報強化を求めます。

対して、モーリーさんは心理面における懸念に言及。「(移民に関して)恐怖を抱く人がひとりいると、その人が立てた噂はなかなか火消しできない。“情緒vs論理”というせめぎ合いをいかに政策として実施し誤解を解いていくのか。これは難しい」と課題を挙げます。

◆東京都でも移民問題、都庁前ではデモが…

外国人政策を巡っては、東京都でも。都はエジプト経済界とエジプト人労働者に関する合意書を締結しましたが、これが移民の受け入れにつながると抗議の声が相次ぎ、都庁前ではデモが。参加者に話を聞いてみると「移民を入れると、日本人と仕事の取り合いになる。日本人の賃金がまた上がらなくなる」、「治安が悪化する。移民政策をしてきたヨーロッパと、同じ失敗をするのが目に見えている」といった声がありました。

政府は「移民政策は取らない」としつつ外国人労働者の受け入れは拡大しています。それが問題の根底ではと指摘する春川さんに賛同し、青柳さんは改めて政府の移民に対するビジョンの必要性を訴えます。

堀からは「外国人の問題じゃなく、日本の受け入れ体制の問題」との意見が。さらに、モーリーさんは「(外国人問題とする)ネーミングは変えたほうがいい」と指摘すると、青柳さんも「今回の“ホームタウン”も“故郷”という意味で、アフリカ人の故郷を日本に作るのかといった話になってしまったので、ネーミングは大事だと思います」と賛同します。

では、与党・自民党は移民問題についてどう考えているのか。高市早苗首相は総裁選時、外国人に関する政策について「外国人・移民政策の厳格化」を掲げ、外国人との秩序ある強制社会推進室の強化・拡充と出入国在留管理庁の入国警備官の増強を主張していました。

加えて、自身のSNSでは「私たちと文化や何もかもがあまりに違う人たちをまとめて入れていく政策は、いったん考え直さなければいけない」と発信していましたが、これにモーリーさんは「ネットのファン層にリップサービスになるような発言はリーダーとして危うい発言」と難色を示します。

◆移民への懸念はどう払拭すべきか?

移民への懸念はどう払拭すべきか。議論の参加者たちが提言を発表します。

春川さんが掲げたのは、“長期的視野の移民政策”。「国が(移民対策を)しっかりとやるべきで、今は地方自治体やNPOに全部押し付け、そこが困っている」と苦言を呈します。

モーリーさんは「日本はこういう国家像でありたいという指導者の声が聞こえてきてほしい」と政府に要望。

能條さんも「(国が)移民政策をきちんと掲げるべき」とし、さらには「(日本は)外国人の助けなしでは暮らせなくなってきている状況を、客観的に押さえていくことが大事」とも。

そして、青柳さんは“脱ゼノフォービア”と“ビジョン”と提案。「異質なものに対して人間は恐怖心を抱く、それを“ゼノフォービア”と言うが、情緒的なものが国の政策を潰してしまうのは国益にならないし、国民のためにもならないと思うので、それを避けるためにも国家のビジョンをしっかり持つことが大事」と訴えます。

最後に堀は「真正面から経済政策だと言って、きちんとした枠組みを作るべき」と主張。「アフリカのウガンダやルワンダなどは、JICAが支援しICT教育が進み、エンジニアが育ってきている。遠隔で働ける日本企業とのマッチングなどが注目されていたが、今回のホームタウン問題で(日本が)欲しい技術が離れ、他国に流れてしまうのは大変残念」と案じていました。

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<番組概要>
番組名:「堀潤激論サミット」
放送日時:毎週金曜 21:00~21:25 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
TVer」で放送後1週間Tverにて無料配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

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