今年は豊作のはずなのに…なぜ続くお米の価格高騰、今後はどうなる? 専門家の見解は?

2025.11.17(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜20:00~)。家計に関するお金のニュースを深掘りする「豊崎由里絵の家計Lab」のコーナーでは、豊作でも高止まりしている“米価格”について取り上げました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜20:00~)。家計に関するお金のニュースを深掘りする「豊崎由里絵の家計Lab」のコーナーでは、豊作でも高止まりしている“米価格”について取り上げました。

◆高市政権のお米に関する政策は?

お米の政策が高市政権になり大きく変化しています。小泉進次郎前農水大臣は、お米の生産を抑制して価格を維持する農政を見直し、増産への転換を打ち出しました。しかし、10月21日に発足した高市内閣では鈴木憲和新農水大臣が「需要に応じた生産が基本である」と増産路線への転換から修正を図っています。そして、お米の価格高騰については“おこめ券”などによる補助を検討するとしています。

需給の一致を優先する従来型の農政に回帰すれば、今後凶作に見舞われた際に供給不足に陥るリスクが高まり、米騒動が再燃しかねないという不安もあります。

この状況にコラムニストの河崎環さんは「小泉前農水大臣の時代に備蓄米をおいしくいただいて感激した。そのときに『お米を安価に食べられることがこんなにも国民の心理を安定させるのか』と感じた」と率直な思いを語りつつ、お米の増産は必ずしも価格安定を保証するものではないのか、さらには増産路線から転換して問題はないのかと疑問を呈します。

これに対し、経済アナリストの池田健三郎さんは「私が今回の騒動で思ったのは、(5kgのお米が)2,000円で買えるという選択肢を残しておくことが重要だと思う。全体の平均価格を下げることなどの社会主義的な政策はもうもたない」と懸念します。

さらには生産者の高齢化に言及。現在は担い手が減っているためビジネス的にも持続可能な米作りが求められ、そうなると市場原理の担保が必要となりますが、一方で高すぎると買えないと国民の間に心理的な不安が生まれる危険性もあります。改めて、池田さんは「2,000円で買えるお米がある状況は担保する政策がいいと思う」と主張します。

◆豊作なのに価格高騰…その背景は?

お米の価格高騰は今年も続いています。6月に備蓄米が放出され一時的に価格は落ち着きましたが、その後、新米が出回ると再び上昇。現在は高止まりが続いており、10月13日〜19日時点でのお米5kgの平均価格は4,251円となっています。

今年の新米は豊作でもなぜ価格が下がらないのか。現場を取材しました。

千葉県旭市の米農家「株式会社いてつ」の石井さんによると、今年のお米の収穫量は例年よりも約5%増加。農水省の見通しでも今年の主食用米の生産量は9年ぶりの豊作になる見込みです。にも関わらず、米の高止まりが止まらないのはなぜか。

東北大学院 農学研究科の冬木教授は、去年までの需要が供給を見てしていない米不足の影響を指摘。「ベースには去年までの重要が供給を満たしていない米不足がある。そうした中で(お米を)集荷をするために(農協や業者)双方が相まって競争状態でどんどん高値になっている」と解説します。

お米の集荷業者は、新米が収穫される前に生産者に買取価格を提示して契約をしています。そして、去年の米不足の状況を受けて今年も不足感が予想され、集荷業者は買取価格を上げてでもお米を確保しようとしました。

事実、石井さんは「私たち農家が売る今年のお米の価格は去年と比べるとだいぶ高かった。3年前とかに比べると、2.5〜3倍に近い金額になっていると思う」と言います。

今年の収穫は豊作となったもののすでに高値で取引されていたため、5kgのコメ販売価格は4000円台に高止まりしています。

ただ、今後は価格が下がる可能性もあるそう。冬木教授は「新米の時期だから高く売っているが、そのうちこの価格だと売れなくなる。お米が余ってくるので、その分をどこかで手放さないといけないが、どこで安く手放すか各業者がタイミングを図りかねており、そのうち下がり始めると思う。最短では新米ブームが去る時期、12月から年明けにかけてぐらい」と予想します。

なお、来年の見通しについては需給のバランス次第ではあるものの今年と同額程度まで値戻しの恐れがあるとのこと。さらに冬木教授は「お米の予想以上の不作」や「おこめ券の配布により需要が供給を上回る購入が起きる」といった価格高騰の懸念点も示唆。

池田さんは「結局、需要と供給のバランスで(価格が)決まることは変わらない。今年は買取価格が高かったから、高い価格で仕入れた業者は安値で早々には放出しない。ある種、我慢比べみたいなことがある」と語り、さらには「新米をいち早く食べたい人は『お金に糸目をつけずに買ってください』ということ」とも。

また、キャスターの堀潤は「散々議論したコメの値付けのあり方、市場のあり方や変革、どのぐらいの人たちが今のお米を求めているのかなど、その辺りの話はあまり進んでいない気がした」と感想を吐露すると、元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんも堀の意見に同意しつつ「あとは流通の多様化も必要。五次卸まであると言われている部分へあまねく利益を乗せていく構造はもう無理なんじゃないか」と現在の構造を問題視.

そして、最後に堀は「新大臣がどこまで切り込むか…」と今後について語っていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤 Live Junction
放送日時:毎週月~金曜 20:00~21:00 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

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