TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週月~金曜21:00~)。11月7日(金)の放送では、遅れている八丈島の台風被害の復旧とともに離島における災害対策、復興支援について議論しました。
◆相次ぐ台風上陸から1ヵ月、八丈島の現状は?
八丈島に相次いで台風が上陸し約1ヵ月が経ちましたが、いまだ断水が続くなど復旧が遅れています。そこで今回は遅れの要因とともに復旧に必要なこと、さらには日本に417ある離島の災害対策、復旧支援のあり方について、八丈町の町議会議員で被害が大きかった末吉地区在住の浅沼碧海さんを交え考えます。

まずは八丈島の現状を浅沼さんに伺うと「(被災直後は)土石流によって住宅や学校が飲み込まれ、地域全体で1週間の避難指示が出て避難所での生活を余儀なくされた。ただ、現在ライフラインは9割ほど復旧し、今後は個人の対応になっていくと思う」と言います。

そして、「災害によって失ってしまった仕事や未来への見通しがみなさん不安だと思うので、そういったところを助けてくれるとありがたい」と語ると、社会学者の西田亮介さんは「お金の流れをどう作っていくか。仕事もできない時に現代的な生活を営むにはお金が必要」と金銭的な支援の必要性を示唆します。

◆復旧が遅れている最大の要因は?
八丈島は電気・通信は復旧しましたが、11月6日時点で約21世帯が水が使えない状態です。そのため断水している世帯を対象に飲料水の配布、災害用携帯トイレの配布、入浴設備、炊き出しなどが続いています。また、災害廃棄物の無償受け入れ期間は11月14日(金)までで、17日(月)以降は罹災証明書か被災証明書の提示が必要になるということです。

復旧が遅れている要因のひとつは“限定的なアクセス”です。移動や物資の運搬手段は飛行機と船のみ。悪天候が重なると船が接岸できず、また着陸が難しいと知られる八丈島空港は天候により羽田空港に引き返すことも。復旧の基盤となる人員、支援物資、重機の運搬などの支援が容易ではありません。

そして行政上の問題も。人手不足で役場の職員が少なく、被害の全容把握、復旧計画の策定に時間がかかっています。さらには作業人員や専門業者の不足も。建設・電気・通信などの専門業者が少ない上にボランティアや業者の拠点や移動手段にも限りがあるということです。

こうした状況にお笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世さんは「事前に都や国のサポートがなかったのか」と問うと、浅沼さんは「今回は危険な台風ということでいつもより10倍くらい避難されている方は多かった。危険に対する注意喚起はされていたと思う」と返答。

キャスターの堀潤が被害が起こる前の予防体制について尋ねると、「ライフラインが切断された状況で何か予防ができたのかどうかは今後検討が必要」と浅沼さん。西田さんからは「台風は危険だと予測できるとしても土石流を予測するのは難しい。できたとしても台風が迫る中でできることが乏しいというのもある」との意見もありました。

◆不安だらけ…八丈島の人々のリアルな声
八丈島で40頭のジャージー牛を飼育している「八丈島乳業」の歌川代表に話を聞いてみると、現在も毎日搾乳は行っているものの台風前の状態には全く戻れていないと悲嘆します。

「牛乳・乳製品の売り先がない。(台風前の販売先は)島内7割、島外3割で、島内の7割はほぼ観光客に買ってもらっていた。しかし、まだ島内の観光施設は閉まり、観光客を迎えられる体制ではないので売り上げ的にはすごく厳しい」と歌川代表は苦しい胸の内を明かします。

そして「12月からはある程度戻ってくると思うが、夏前ぐらいまで悪い影響は続くのではないか」と不安を吐露。

また、漁業、遊漁船、鮮魚の仲卸、水産加工業を営んでいる久保田さんは、約1ヵ月もの間漁に出られず、さらには製造工場も一部が漏電で止まっていると言います。

復旧できていない理由については、「まず業者がいない。保険に入っているが見積もりが出ない。(復旧作業が)決まったとしても物資が届かない」と久保田さんは語り、行政に金銭的な支援と業者の手配を切望します。

浅沼さんも「(今回は島民)6,700人では抱えきれないほどの災害だった。現地の人たちはその場の対応でいっぱいいっぱいで、インフラが復旧し始めたことでようやく支援などに対して向き合っていけるが、一番(重要なのは)資金。お金の面で都や国が支援してもらえると嬉しい」と訴えます。

◆離島の「ボランティア受援体制」どう整備?
ボランティアの受け入れ体制にも問題があります。取り仕切っているのは八丈町社会福祉協議会ですが、現在は島民のボランティア10〜20人を2〜3人の担当者で差配しています。
支援要請を受けてボランティアが現地を調査し、必要な人員と物資を見積もりますが、同協議会の菊池事務局次長によると今は作業の見積もりが追いついていないとか。しかも、平時から人手不足でそもそもボランティアの受援体制は整っておらず、災害システムの導入なども平時の作業に追われ間に合っていなかったそうです。

西田さんは「これを民間で解決するのは無理。東京都や国の支援が必要」とし、堀も「社会福祉協議会は地域のお年寄りのケアをしているが、ボランティアセンターも併せて運用となると、能力を遥かに上回る業務になる」と指摘。
経済アナリストの馬渕磨理子さんは「能登(地震)などの教訓が活かされていないと思う。アクセスが悪いところでの災害は今後もあると思うので、何かあった時に集中的にお金や資源などを投入できる状況を作っておく。国として部隊を常時準備しておくことが大事」と提言します。

そうした中、離島での災害支援に関しては国も対応策を準備しています。まず通信面では、通信大手が2026年にも実用化を目指す「空飛ぶ基地局(HAPS)」について総務省がルールなどの整備を進めています。これは大型無人機に携帯電話用の基地局機能を搭載、電波が届きにくい場所での活用が期待されています。
そして、海上保安庁は10月28日に離島で通信障害が発生した場合を想定し、通信会社4社と合同で通信復旧の訓練を実施。また、物資輸送については8月に国土交通省がドローンを活用した災害物資輸送に関する調査と事業を募集。ドローン物資輸送訓練の計画や調査に要する費用などを補助するとしています。

◆離島の復興支援はどうすべきか?
最後に、今回の議論をふまえ長期化する八丈島の復旧、離島の復興支援体制についてコメンテーター陣がアイデアを発表。馬渕さんは「世界では“ICS(インシデント・コマンド・システム)”という災害対応時の指揮命令を決め、混乱なく体制が整えられるような仕組みがあるので、日本でも統一したルールを事前に作っておくべき」と主張します。

続いて西田さんは「事業者を集約して島に連れていくこと。その資金を含めた支援が必要。それから生活費の支援。被災者生活再建支援制度があるので、その上乗せが必要。被災後にはよく債権の買取などが行われるが、そうしたことも考えるべき」と金銭的な支援の拡充を求めます。

一方、山田ルイ53世さんは「“台風に強い島”を目指す」と別角度から提案。「今までの島の良さも残しつつ、例えば“どんな状況でも物資が運べる”ようなイノベーションを呼び込む取り組みを八丈島で国と企業がやればいい。“八丈モデル”が離島防衛となり安全保障に繋がり、世界に誇れる」と望みます。

浅沼さんは「今回、離島という距離による情報の時差があったと思う。例えば水が出ない、水が欲しいとなっても水が出た後に届くことがあった。現場のニーズを的確に把握し、どのような支援ができるのか今後考えていきたい」と未来を見据えます。

そして、堀は「災害庁や災害専門部隊などを作る。ローカル版PKOという、部隊も派遣するし行政機能も含めてできるようなものが日本に必要」と“災害専門部隊”の導入を熱望していました。

<番組概要>
番組名:「堀潤激論サミット」
放送日時:毎週金曜 21:00~21:25 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
「TVer」で放送後1週間Tverにて無料配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
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