吉村大阪府知事を交え大阪・関西万博の成果を徹底議論!この経験・レガシーをどう活かす?

2025.11.10(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。10月24日(金)の放送では、大阪府の吉村洋文知事を迎えて「EXPO 2025 大阪・関西万博(以下、大阪・関西万博)」の“レガシー継承”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週金曜21:00~)。10月24日(金)の放送では、大阪府の吉村洋文知事を迎えて「EXPO 2025 大阪・関西万博(以下、大阪・関西万博)」の“レガシー継承”について議論しました。

◆大阪・関西万博閉幕…その成果はいかに!?

10月13日、184日間の会期を終え大阪・関西万博が閉幕しました。日本国際博覧会協会によると、一般来場者総数は約2,557万人で運営費収支は230~280億円の黒字となる見込みです。

開催前の昨年6月、当番組の取材で吉村知事は「(万博終了後は)技術をここだけで終わらせるのではなく、社会実装することが大事だと思う。常に検証を続け、社会実装の仕組みを作る」と話していました。

閉会後の心境について、吉村知事は「今回の万博で想像を超えるものを僕も経験した。批判のオンパレードの状況からのスタートだったが、必要だと信じて進めた結果、万博は大きな黒字になった」と総括。さらに「大屋根リングの中で158の国が集まって「命輝く未来社会」を目指すという価値観を共有し、参加者1人1人に大きな思い出ができたと思う。僕はそれこそが大きなレガシーになっていると思っている」と語ります。

現在、大阪・関西万博のレガシーの検証が始まりつつあります。9月16日には当時の石破茂首相が大阪・関西万博の関係者会合を開催。吉村知事も出席したこの会合で「有識者・関係者が参加する新たな枠組みを設ける」、加えて「成果の検証とレガシーの継承の具体化について透明性を持って検討を進める」としました。また、石破前首相は万博の主な成果として「チケットの売り上げ枚数」、「多様な分野でのビジネス交流」、「40回以上の首脳会談」などを挙げています。

ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは、“万博”というと母国ドイツで2000年に行われた「ハノーヴァー万博」を想起するそうですが、これはあまり盛り上がらず赤字で終わり、国内では失敗と言われているとし、そうした経緯もあって「その後、ドイツは長年国際イベントに消極的になっていった」と言います。

一方、大阪・関西万博は、開催前には多くの批判があったものの、終わってみれば黒字で盛況。この結果を受けて、マライさんは「なぜ盛り上がったのか?」と疑問を投げかけます。

これに吉村知事は「(今回のテーマである)“いのち輝く未来社会のデザイン”とは何か、それぞれの国が本気で考え、それぞれの国の文化や価値観、最新技術などを共有できた。こういう時代だからこそ“命を大切にする”というテーマがよかったんじゃないか」と返答すると、キャスターの堀潤は「おそらく時代感を捉えたと思う」と納得の様子。

経済アナリストの池田健三郎さんからは「大阪・関西万博を機に広がり、世界に定着した技術があったらいいわけで、少し長いスパンで見ないとわからないが、種はいっぱいあったという気はしている」という意見もありました。

◆閉幕後も続く工費未払い問題、責任の所在は?

ハード面、大阪・関西万博のために建てられたパビリオンはどうなるのか。日本国際博覧会協会は全84館のうち、17.5館の再利用を目標としています。なお、前回1970年の大阪万博では28館が再利用されました。

現状では「パソナ ネイチャーバース」や「オランダ館」は兵庫県淡路島、「ブルーオーシャン・ドーム」はモルディブ、「ルクセンブルク館」は大阪府交野市に移転が決定。そして、「いのちの遊び場 クラゲ館」は受け入れ先を公募中で、「三菱未来館」は木材を粉砕し、樹脂を混ぜて新たな素材として再利用する予定となっています。

一方で、パビリオンを巡っては建設工事費用の未払いが問題に。中国、ドイツ、アメリカ、ポーランド、マルタなど11ヵ国に対し、業者から未払いの相談があったことを日本国際博覧会協会は明らかにしています。こちらは下請け業者が被害者の会を設立したり、訴訟に発展しているケースもあります。

さらに、パビリオンは2026年4月までに解体・撤去される予定ですが、未払いを懸念する解体業者が受注を避け、解体工事の担い手が不足する可能性が危惧されています。そうしたなか、被害者の会の男性は「博覧会協会は民間同士の問題との理由で、関与を避けている」と指摘しています。

ここで株式会社ABABA代表の久保駿貴さんは、未払い問題の責任の所在、さらには日本国際博覧会協会の後継組織はどうするのか。吉村知事に問いかけます。

すると吉村知事は、工費の未払い問題に関して「発注者である海外の国々は、契約のお金はきちんと払っている。そこから元請け、下請けが一次~四次となっていくなかで、下請け同士の争いになっているというのがまずある。また、訴えられている側に確認すると、逆に契約も合意もないなかで請求されて困っていると言うところもある。未払いがあることを前提に報道されているが、一つひとつ紐解いていくと実はその多くが契約書がない部分の請求や合意がない部分の請求が行われていて、そこが争われていることがほとんど」と現状を解説。

そして、行政の責任問題は「なんとかしたいという思いはあるが、債権があるかないかわからないものを税金で建て替え払いをするというのは難しい」と胸中を吐露します。

また、今後の受け皿としての組織については現状決まっていないと吉村知事。とはいえ、日本国際博覧会協会も数年後に活動終了となるため、考えられるのは1970年万博のように新法人を設立するパターン。もしくは開催にあたりお金を出し合った大阪府市と経済界、そして国の3者で協議しながら進める形。ただ、万博で紹介した最新の技術やレガシーを社会実装化すべく、その伴走支援する仕組みは作っていくと明言します。

池田さんからは「黒字になったのは良かったが、この種の国際イベントは見積もりが非常に甘い。今回の建設費も当初1,250億円だったものが最終的に2,350億円となり大きな差異ができている。黒字が出てもこの上ブレ分は賄えない。資材高騰・人材不足もわかるが、こうした反省も大事。これが日本の行政の大きなイベントの当たり前になってしまうのはよろしくない」との意見が。

吉村知事によると、建設費の当初の見積もりは2005年の「愛・地球博(愛知万博)」をベースとしたもので、具体的な計画が決まっていない段階で立てられたものだとか。そして、その後“大屋根リング”を作ることになり予算が1,800億円に。さらには物価上昇と人件費の高騰で2,350億円になったことを補足します。

◆大阪・関西万博のレガシーをどう活かすべきか?

最後に、今回の議論を踏まえて大阪・関西万博の経験をどう活かすべきか、出演者が提言を発表します。

まず久保さんは「今回の万博は“未来社会の実験場”というテーマがあったが、引き続き、実験場にしてほしい」と今後もチャレンジができる場であることを望みます。

マライさんは、こうしてレガシーの検討会をやっていることを高く評価しつつ「私が期待しているのは、何が問題だったのかというリスト。災害対策などもあって今後の国際イベントのために役立つし学べることが多い」と言い、さらには「あとは良かったものリストがあってもいいと思う」とも。

また、池田さんは「万博が持つ好循環“開発・挑戦~展示・訴求~実装”を加速させることが重要。実装して、それがもとになって開発・挑戦に戻る流れを加速することが万博の機能だと思うので、これをぜひやっていただきたい」と期待を寄せます。

そして、吉村知事は「(今回の万博では)いろんな技術が出て、いろんな人が参加し、いろんなことにチャレンジした。それをひとつの方向性として“未来への羅針盤”を作ったので、それが未来社会につながれば」と切望。

堀は、吉村知事を前に「どんな批判があっても責任者がリスクを取り切る、それが定着すればいいなと思った」と述べていました。

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<番組概要>
番組名:「堀潤激論サミット」
放送日時:毎週金曜 21:00~21:25 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
TVer」で放送後1週間Tverにて無料配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

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