都内での目撃情報は例年以上! 奥多摩町では6年ぶりの人的被害も…クマ被害の現状と各自治体の対策まとめ

2025.11.04(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜20:00~)。TOKYO MXの報道記者が注目したニュースを深掘り・生解説する「ツイセキシャ」のコーナーでは、都内でも頻発しているクマによる被害と対策について取り上げました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜20:00~)。TOKYO MXの報道記者が注目したニュースを深掘り・生解説する「ツイセキシャ」のコーナーでは、都内でも頻発しているクマによる被害と対策について取り上げました。

◆奥多摩町で6年ぶりにクマによるケガ人が…

現在、都内では多摩地域に160頭ほどのツキノワグマが生息していると推定され、クマ目撃情報は例年200件ほど。しかし、今年は8月末の時点ですでに約180件にのぼっています。

そうしたなか、8月23日には奥多摩町の大丹波川で渓流釣りをしていた50代の男性がクマに襲われ、顔や首に重傷を負いました。奥多摩町でクマによるケガ人が出たのは、6年ぶりです。そこで今回は、山田清太朗記者が都内におけるクマ被害の現状と自治体の対応を取材しました。

奥多摩町でも今年はクマの目撃・痕跡の件数が増加しています。奥多摩町観光産業課の大串課長によると、昨年度は年間約130件だったところが今年度は7月末までにすでに約70件。「(クマ被害の)リスクは高まっている」と警鐘を鳴らします。

そうした背景から、同町では昨年からSNSを使った目撃情報の発信を住民に向かって行っている他、クマが人の生活環境に立ち入るのを防ぐため、餌となる生ごみなどを放置しないよう呼びかけています。

大串課長は「山の中に餌がなく、(クマが)人里・人家に近いところに出没している状況がある。引き続き、住民の方には生ごみや野菜くずを庭先に放置せず、匂いでクマを寄せないよう注意喚起し、観光客に対しても観光ゴミは基本持ち帰っていただくようにしている」と言います。

この状況に、キャスターの堀潤は「山と里の間のバッファゾーン、農地のようなところがなくなってきていて、(クマが)ダイレクトに食べ物を獲りに(民家などに)来るようなことが起きてしまっている」と危惧。

続けて、山田記者も「この40年ほどで見ると、(クマの)生息域が約2倍に増えている。それで市街地への侵入が増えているので、やはり注意は必要」と呼びかけます。

また、堀が「山が枯れると、山で暮らしていた動物は(山を)出ざるを得ない。山の食べ物を増やす、山の保全という議論もある」とコメントすると、コラムニストの河崎環さんからは「こういう議論になると、特に動物愛護の方々は人間が自然、山の中に入っているからだと指摘する人もいる。それは確かだと思うが、この件に関して私たちは、圧倒的に消極的な対応しかとれないことが疑問」といった意見が。

そして、「人の世界とクマの世界が重なる部分が大きくなり、これだけの遭遇率、事件・事故が増えている。にも関わらず、私たちがやれることは『せめて餌をやらない』、『食べ物の匂いをさせない』などしかないというのは、思考がスタックしているように感じる」と持論を述べます。

◆「改正鳥獣保護管理法」が9月より施行

自治体がクマ対策に苦悩するなか、9月から「改正鳥獣保護管理法」が施行。これにより、安全管理などいくつかの条件を満たせば、自治体の判断で市街地での猟銃の発砲が可能になりました。

今回の改正に対し、東京農工大学大学院・小池教授は「警職法といって警察官の指示のもと発砲するのが今までの流れだったが、市町村の担当者の判断で発砲できるようになり、出没事案を早く解決する効果が期待できる」とメリットを挙げます。

一方で、「自治体の職員が判断するのは、非常に負担が重い」とデメリットも示唆。「市町村の職員は、(鳥獣、農業、林業、観光など担当する業務が)兼業で当然専門知識がない。そうしたなかで、どういう状況で発砲していいか判断できない」と案じます。

今回、山田記者はツキノワグマが生息しているとされる6つの自治体に法改正の影響について取材。すると、奥多摩町などいくつかの自治体では、住宅などに流れ弾が当たってしまった際の物的な被害をカバーするため、保険に加入していたそうです。

課題としては、職員向けの自治体独自のマニュアル作成が追いついていないこと、さらには、職員の安全確保の判断に専門知識がないといったことなどが浮き彫りに。そのため、専門知識を持つ猟友会や警察の助言を受けて判断するというのが、現時点での対応となっています。

総じて、小池教授は「自治体が職員の知識アップを図る必要がある。そして、専門の職員を正規職員として配置することが長期的には必要」と助言します。例えば、秋田県や島根県では野生動物の専門知識がある職員を採用していたり、職員の知識アップを目指し東京農工大では一昨年から全国の自治体職員など社会人向けの教育課程を開始し毎年数十人程度が受講。少しずつ専門知識向上に向けた取り組みが図られているそうです。

堀は、法律改正によってより潤滑な対応を期待する一方で「人の育成には時間がかかりそう」と苦慮。ジャーナリストの風間晋さんも「自治体の判断で発砲できるようになり自治体にフォーカスされがちだが、猟友会など実際に発砲した人への結果責任をいかにカバーしていくのかは、まだ議論の段階でどうなるかわからないところがある。それも時間がかかりそう」と懸念していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤 Live Junction
放送日時:毎週月~金曜 20:00~21:00 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

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