ガソリン暫定税率が廃止になると、私たちの家計への影響は? 専門家は“物価上昇の抑制”につながるとの見解も
2025.10.27(月)
06:50
TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜20:00~)。家計に関するお金のニュースを深掘りする「豊崎由里絵の家計Lab」のコーナーでは、“ガソリン暫定税率”が廃止となった場合に及ぼす家計への影響について取り上げました。
◆ガソリン暫定税率が廃止されるとどうなる?
先行きが不透明ななか、ガソリン暫定税率の議論が注目されています。自民党の高市総裁は10月4日、ガソリン暫定税率、軽油引取税の廃止へ向けて取り組むと表明しています。
ガソリン暫定税率とは、1974年に道路整備の財源確保のため、ガソリン税に暫定的に上乗せされたもの。その後も財政難を理由に延長され続けてきました。2009年には、道路特定財源制度廃止に伴い、一般財源化されたものの、実質的な税率は維持されています。
では、ガソリン暫定税率が廃止されるとどうなるのか。レギュラーガソリン1Lの平均小売価格が175.2円だった10月1日時点を例に見てみると、175.2円のうち、本体価格は102.7円。ガソリン価格のおよそ4割が税金にあたり、そのうち暫定税率は25.1円。また、消費税については、本体価格に暫定税率などを加えたものに対して課税されることから、二重課税ではないかとの指摘も。

もしガソリン暫定税率が廃止されると、ガソリン価格に対して現在政府が支給している1L当たり10円の補助金も廃止となるため、実質15円の減額となります。みずほリサーチ&テクノロジーズ・今井大輔さんの試算によると、暫定税率の廃止によって、自動車を所有する家庭の燃料費の年間支出が10,253円削減できると見られています。
元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんは、「(ガソリン暫定税率の廃止だけでは)車を持っている家庭だけの便益でとどまってしまうが、今は軽油も検討されているようで、そうなると漁船などをはじめとする流通全体に便益は広く社会に公平に行き渡ると思う」と便益が広域に及ぶことに期待を寄せつつ、二重課税についてはあるまじきとの見解を示します。

元衆議院議員の金子恵美さんは、「地方であれば地方であるほど、生活の足であることは間違いないし、軽油に関しても(暫定税率が廃止になって)燃料費を抑えられたら事業者は新たな設備投資もできるし、給与として還元もできるので、私は早くするべきだと思う」と暫定税率の廃止に肯定的。

◆運送業者にとって切実…年間で10万円の差も
ガソリン暫定税率廃止の影響は、クルマに乗る人だけではありません。そこで番組は、フードデリバリーや通販サイトの荷物を軽ワゴン車で運んでいるフリーランスの軽貨物ドライバー・ごーしんさんを取材しました。
自身もドライバーとして働きながら、軽貨物のドライバーを始めたいという人に向けた指導も行っている、ごーしんさん。ガソリン価格の変動は、ドライバーの収入に直結すると言います。

ごーしんさん曰く、一般的な軽貨物ドライバーの走行距離は、1ヵ月当たり22日稼働した場合でおよそ2,200km。その際にかかるひと月のガソリン代は、3万4,000円前後です。
経費であるガソリン代が値上がりした場合、価格転嫁をすることが難しく、「下請けのフリーランスなので、(ガソリン代高騰の)しわ寄せが全部ドライバーにきてしまう」とごーしんさん。そのため、ガソリン代が売り上げ・利益の圧迫に直結してくると言います。

そんな背景もあって、ごーしんさんはガソリン暫定税率の廃止に大きな期待を寄せています。というのも、ガソリン暫定税率が廃止になると、1ヵ月当たりのガソリン代が8,000~9,000円程度の削減となり、年間およそ10万円削減になるため、「かなり恩恵があります。暫定税率が廃止になることは、軽貨物ドライバーだけでなく、運送関係者のみんなが望んでいる。(ガソリン暫定税率の廃止を)本当にやってくれるなら非常にありがたい」と切実な胸の内を明かしていました。

実際、燃料価格が1円下がると、運送業界全体で約150億円もの負担が減るとの試算も。そして、ガソリン暫定税率廃止の恩恵は、クルマを所有する人や運送業だけでなく、クルマを所有していない家庭にも及びます。

みずほリサーチ&テクノロジーズの今井さんは、「物価高の要因として、運送料もあると考えています。もしガソリン暫定税率が廃止されると、トラック1台当たり年間12万円の経費削減となる」との試算を説明。さらに、「価格転嫁の理由として物流費を上げている企業も多いので、物流費上昇が抑制されることで、店舗に並ぶ商品への価格転嫁も一定程度抑制される」とし、ガソリン暫定税率の廃止が物価上昇の抑制につながるのではと予見していました。

社会学者の西田亮介さんは、ガソリン暫定税率の廃止に「賛成」と明言した上で、「普通に考えて、暫定税率と言いながら一体いつまでやっているのか」と疑問を呈する場面も。

総じて、キャスターの堀潤が「ガソリン暫定税率の廃止によって、(ドライバーの)皆さんが安心・安全に(荷物を)ちゃんと届けてくれることが維持されれば」と望むと、キャスターの豊崎由里絵も「(政府は)物価高対策もいろいろと打ち出そうとしているが、(専門家の試算では、ガソリン暫定税率の廃止が)物価高を抑える役割もあるということなので、絶対に進めてほしい」と同意していました。

<番組概要>
番組名:堀潤 Live Junction
放送日時:毎週月~金曜 20:00~21:00 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx





