長年にわたって世界を旅する“旅人のバイブル”として愛され、近年は日本国内の観光ガイドブックとしても出版されている『地球の歩き方』の「調布市」版が10月23日に発行されました。初回限定版の表紙には、漫画家の故・水木しげるさんが調布の地で生み出した『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターたちが昔の調布銀座を歩いている姿が描かれています。東京都内ではこれまで世田谷区や杉並区などの『地球の歩き方』は販売されていますが、都内の「市」としては今回初めて「調布市」版が販売となりました。『地球の歩き方・調布市』版の担当編集者である斉藤麻理さんにさまざまなスポットを案内してもらい、掲載されている街の魅力を取材しました。
最初に案内してもらったのは「鬼太郎ひろば」です。斉藤さんは「鬼太郎の家を模した妖怪ポストがあったり『ぬりかべ』がボルダリングになっていて、実際に登って遊べるようになっているものもある」「鬼太郎の作者・水木しげる先生が調布に50年以上住んでいたので、たくさんのキャラクターが調布市の中にいる。柳の木の下には鬼太郎がお出迎えしてくれる」と紹介しました。調布市は水木しげるさんが50年以上暮らし『ゲゲゲの鬼太郎』をはじめとした数々の作品が生み出された地です。そうした縁から、街には至る所に水木作品のキャラクターが置かれ、街を彩っています。
斉藤さんは「こちらには水木しげる先生自身の銅像がある。水木先生は左腕を戦争でなくされているので、肘で紙を押さえて漫画を描いていたことがあって、その様子を表している」と解説し「水木しげるゾーンには、他にも鬼太郎の家のモデルになったといわれている布多天神社や水木先生も通っていた中華料理店などもあって、本で紹介している」と説明しました。
続いて訪れたのは、豊かな自然の中にある深大寺です。斉藤さんは「都内では浅草寺に次ぐ2番目に古いお寺。すごく歴史のあるお寺」と案内しました。奈良時代=733年に創建された深大寺は、都市近郊とは思えないような豊かな自然との調和が若者を中心にSNSなどでも話題となり、近年参拝客が急増しているといいます。そして名物「深大寺そば」も魅力の一つです。そば作りに適した気候と豊富な湧き水で、江戸時代から参拝客をもてなしていたという「深大寺そば」を扱う店はおよそ20軒ということで『地球の歩き方』には「麺や味の違いを比べながら好みの1杯を見つけよう」「目指せ全店コンプリート」などと紹介されています。さらに斉藤さんは深沙大王堂について、豆知識として掲載されている「一般の人は像は見ることはできない。住職も一生に1度のみ直接見ることができるというもの」と紹介してくれました。本の中には「おみくじの凶の確率が高め」といったマニアックな情報まで紹介されています。
魅力スポットは他にもたくさんあります。西調布駅近くにある建物は、1階は自家醸造ビールをはじめとした日本各地から厳選したクラフトビールが味わえる英国風のパブですが、階段を上ると、2階にはおよそ4000冊の本やさまざまな雑貨が並ぶ書店となっています。ここでは1階で購入したビールを片手に、ゆったりと本の世界に浸ることもできます。店舗の担当者は「調布市はすごくすてきな街。うちの店はまだ、市外からのお客は少ないので、本への掲載を機会に、たくさんの人が来てくれれば」と期待を寄せていました。
1979年の創刊から“旅人のバイブル”として愛されてきた『地球の歩き方』で、都内の市として初めて選ばれたことについて、調布市の長友貴樹市長も「『地球の歩き方』もいいところに目を付けたと思う」と喜びをあらわにし「市制70周年でテレビや雑誌で多く取り上げていただいた流れの中で今回のことですから、(書籍への掲載で)相当また新たに(観光客が)来られる、ニューカマーを含めてわれわれは期待できる」と、街の躍動を期待しています。
企画から完成までおよそ1年間にわたって調布市と向き合ったという斉藤さんに、改めて調布の街の魅力を聞きました。斉藤さんは「東京都内でここまで“ちょうどいい”、程よく都会、自然がたっぷりで、こだわりがたくさんある街はなかなかない。本当に私自身が調布市の大ファンになった。歴史もあって奥深いスポットだということを新発見していただいて、ぜひ次のお出かけ候補にしてもらいたい」と語りました。





