医療崩壊に続いて学校閉鎖…現地人医師が嘆くパレスチナの現状「人々は恐怖、飢えに苦しんでいるのに誰も何もしていない…」
2025.10.14(火)
06:50
TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜20:00~)。「New global」のコーナーでは、現地人医師が伝える“パレスチナの現状”を紹介しました。

◆パレスチナは今…「まるで巨大な牢獄のよう」
アメリカメディアによるとイスラエル軍は9月15日、パレスチナ自治区ガザの中心都市「ガザ市」への地上侵攻を開始。ガザ市では、一時およそ100万人が避難生活を送ったとされています。
そんななか、パレスチナのエルサレム地域にある唯一の難民キャンプ「シュファット難民キャンプ」で活動しているパレスチナ人医師サリーム・アナティさんが来日。日本各地で講演を行いました。そこで彼は「24時間検問所があり、移動はあらゆる面で制限されている。まるで巨大な牢獄のようです」とパレスチナ人の現状を伝えます。
さらには、「同僚の医師は兵士に喉を至近距離から撃たれた症例を目撃した。床ずれで感染を起こし、同僚はこの男性を治療しようとしたが手遅れだった。なぜなら、検問所を通ることが許されなかったから。イスラエル軍はパレスチナ人が移動したり、病院に行ったりすることを許さなかった。そのためその男性は残念ながら亡くなってしまった」という衝撃的な言葉も。
パレスチナで過酷な状況にあるのは、医療現場だけではありません。教育現場も同様です。というのも今年2月、イスラエルはパレスチナで支援する「UNRWA」の活動を禁止し、学校は閉鎖を余儀なくされました。この状況を、サリームさんは「一瞬で550人の生徒たちが学校に通えなくなり、路上に放り出されている。今も彼らを街中で見かけるが、誰も面倒を見ていない」と嘆きます。
しかも、最近では学校に通えなくなった子どもたちに新たな問題が起きているそう。「今、子どもたちにマリファナが広がっている。(マリファナは)1本最低でも約1,800〜3,000円。経済状況が厳しいなか、それが払えないから彼らを犯罪に追い込む。強盗などに手を染めてしまう。イスラエル軍は若者たちを薬物に追いやり、中毒者にさせることで次の世代を破壊している」と話します。
総じて、サリームさんは「イスラエルに対して『虐殺や民族浄化をやめろ!』と声を上げ、強制する人は誰もいない。人々は恐怖に怯えている。飢えに苦しんでいるのに、誰も何もしていない。その行方はみなさんの手に委ねられている」と国際社会に訴えます。
◆国連が支持する“2国家解決”、日本の対応は?
現在、パレスチナ・イスラエル問題に対し、国連では“2国家解決”を支持する決議案が採択されています。これはパレスチナを国として認め、イスラエルとそれぞれの主権を尊重しあい、いい方向に進める形です。
しかし、その前提となるパレスチナを国と認めることに対し、国際社会は意見が割れています。国連加盟国193ヵ国のうち約150ヵ国が承認しているにも関わらず、イスラエルの最大の支援国でもあるアメリカは認めていません。さらには、日本政府に対して承認を見送るよう要請したと言われています。
統計家の西内啓さんは「日本もここでアメリカとケンカをするのは難しいだろうと思いつつ、逆にいうとそこはもう少しタフにネゴシーエーションできないのかと思う」と率直な感想を吐露。
一方、エッセイストでメディアパーソナリティの小島慶子さんは、日本政府に毅然とした態度をとるよう求めます。なぜなら、日本もパレスチナのようになる可能性がゼロではないから。「いくら国家間の紛争があったとしても、罪なき人の命が奪われるような状況を放置してはならないと言っておかないと、それこそ東アジアで何かあったとき、日本の国民が国家間の紛争解決のための犠牲になっても仕方がないと言われてしまうかもしれない。それを視野に入れて、日米関係は、対等にものが言える関係を今から作ってほしい」と切望していました。
<番組概要>
番組名:堀潤 Live Junction
放送日時:毎週月~金曜 20:00~21:00 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
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