国民の祝日「敬老の日」にちなんで総務省が公表した人口推計によりますと、2025年の全国の65歳以上の高齢者は3619万人で、総人口に占める割合は29.4%と過去最高を更新しました。また、東京都内の65歳以上の高齢者は312万人(前年比約3000人増)、75歳以上の後期高齢者は184万6000人(前年比約3万2000人増)と、いずれも過去最多となっています。高齢化が進む中、台東区の高齢者施設では“美容の力”で高齢者を笑顔にしようとする取り組みも行われています。

「介護美容」とは介護を必要とする高齢者に対し、ネイルやメークなど美容ケアのイベントでコミュニケーションを取りながら心身のケアを行うというものです。
入居者のおよそ8割が認知症高齢者となる「浅草ケアパークそよ風」では3年前から介護美容を月に2回取り入れています。この取り組みを行う事業者によりますと、介護美容を導入する施設数は3年で11倍となり、利用者は8倍になっているということです。
60年前にはファッションデザイナーとして働いていたという利用者の酒井義子さん(89)も今回初めてネイルを体験し、洋服の柄に合わせたサクラのデザインをネイルにも取り入れ、若い頃を思い出し「(もし出かけるなら)きれいになったんだから、街の中に」と笑顔を浮かべていました。
ケアビューティストは「いつもちょっと不穏な人が、鏡を見てにこにこしていると、やっていてよかったなと思う」と話します。また、施設の担当者は「介護美容」によって笑顔になることや会話の機会が増えるだけでなく、食欲増進などにもつながっているといいます。さらに職員や家族とのコミュニケーションも増えたとして「職員にも利用者の家族にも、皆さんに喜んでもらっている。『きょうはこんなことをやったのよ』と、面会に来た家族にずっと話しているとも聞いている」と話しています。