「富士山大噴火」に備えた火山灰対策 浄水場には水道水を守る“テント”

2025.09.04(木)

10:30

東京に甚大な被害を与えた関東大震災の発生から102年の月日がたちました。TOKYO MXでは今週「防災ウイーク」として、さまざまな防災情報をお伝えしています。今回は「富士山大規模噴火に備えた火山灰対策」について考えます。

東京に甚大な被害を与えた関東大震災の発生から102年の月日がたちました。TOKYO MXでは今週「防災ウイーク」として、さまざまな防災情報をお伝えしています。今回は「富士山大規模噴火に備えた火山灰対策」について考えます。

8月、東京都は「富士山の大規模噴火のシミュレーション動画」を公開しました。巨大な噴煙が立ち上り、都内にも火山灰が降り注ぐという映像です。火山灰は1時間から2時間ほどで都内に降り始め、その後、各地を一面グレーに染めてしまいます。国の被害想定では富士山からおよそ100キロ離れた都内でも、最悪の場合、10センチ以上の火山灰が降ると予測されています。

交通や電気などのライフラインにも大きな影響が懸念される中、水道水の供給が滞らないよう、対策をしている浄水場があります。

東京都水道局が管轄している10カ所の主要浄水場の中で、富士山が大規模噴火した場合、火山灰の影響を最も受けると予測されているのが「長沢浄水場」です。川崎市にある長沢浄水場では富士山が噴火した場合、火山灰が最大で16センチ積もると予想されています。このため、屋外にある沈殿池にも対策が施されています。

富士山の噴火警戒レベルが「3」に引き上げられると、不純物の沈殿作業を行う池に覆蓋(ふくがい)と呼ばれるテントを張る対応を行います。東京都水道局の担当者は「一番大きいのが、水質に悪影響を及ぼすということ。具体的には濁度、濁質やpH、フッ化物イオンなどの浄水処理に影響がある水質変化が一番大きな理由」と話します。

浄水場から家庭に供給される水道水には水質基準が設けられています。火山灰に含まれるフッ素も項目に入っていて、沈殿池や水源である川などに火山灰が降り注ぐことで基準値を上回ってしまう可能性があります。そこで、浄水場では沈殿池への直接の降灰を防ぐためにテントを備えていて、年に1度設置訓練を行っています。担当者は「有事の際でも水道水を届けるという目的がある。何とかその使命を全うしたい」として「薬品の受け入れなども、道路に灰が積もって交通に障害が出るという話もある。優先的に道路にたまった灰を除去してもらう計画で進めている」と話します。

いつ起こるか分からない富士山の大規模噴火に備え、長沢浄水場は今後も国や東京都と連携して対策を強化していくということです。

<都内にも10センチ以上の降灰予測 生活への影響は…>

富士山が大規模噴火すると都内にも降り注ぐといわれている火山灰には、次のような特徴があります。

まず、粒子が非常に細かいため、風の影響で風下に運ばれやすく、影響が広範囲に及んでしまいます。

また、火山灰の形状は硬くとがっているため、大量に吸い込むと健康被害につながる可能性があります。

降灰が長引く可能性もある中、雨が降ってしまうと、水分を含んだ火山灰は導電性を持つことがあり、停電につながる恐れもあります。

そして、雪とは異なり、除去しない限りなくならないため、除去作業が必要です。

東京都は富士山の噴火を想定した「地域防災計画・火山編」を2025年5月に改定しました。防災計画の中では停電や断水、下水があふれてしまうなどのライフラインで想定される影響に対して対策を定めています。

また、住民の避難行動についても記載されています。降り積もった灰の厚さが3センチ未満の場合は「自宅での生活」を継続するとしています。3センチ以上30センチ未満の場合は「在宅避難」を基本とした上で、場合によっては避難所の開設も検討します。そして30センチ以上となった場合は木造の建物が倒壊する可能性があるため「エリア外への避難が必要」としています。

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