東京・杉並区内の小学校などの校庭でこの3年間に1万8000を超えるくぎなどが見つかり撤去した問題で、杉並区の岸本聡子区長は9月2日の会見で「子どもたちの安全を確保することが大変重要な区の責任でもあるので、多額のお金がかかったとしてもこれはやらなければいけないと判断した」と述べ、校庭の改修工事の重要性を強く訴えました。杉並区ではおよそ3億2000万円を投じ、今年度、区立小学校4校の校庭で改修工事を行います。

運動会などで校庭に目印のテープを留める際には「くぎ」や「ペグ」と呼ばれるくいなどが長らく使われてきました。ところがこれらの部品が使用後にきちんと取り除かれていなかったため、校庭にくぎなどが残っていてけがをするという事故が後を絶ちませんでした。
区内の荻窪小学校では6月下旬から8月下旬まで地表から10センチほど校庭を掘り起こし、土の入れ替え工事を行いました。校長は「ブルドーザーや重機がたくさん入り、校庭全面の土を入れ替える形で校庭を全部改修していた」と説明しました。
きっかけとなったのは2023年4月、荻窪小学校の校庭で体育の授業中に児童が転び、地面から突き出たくぎで膝周辺を切り、十数針縫うけがをした事故です。事故の翌月、業者が金属探知機で校庭を調べ、土に埋まっていたくぎなど合わせて574個を発見し撤去していました。しかし2024年9月、区内の他の小学校の校庭からくぎが発見されたことを受け、荻窪小学校でも再度校庭を点検したところ、くぎやペグ、合わせて20個が見つかったということです。校長は「正直言って安心し切っていたところがある。(しかし実際には)確実に発見できない難しさかなと思っているところ」と反省を口にしました。
杉並区では2023年5月から今年=2025年5月までの間に、区立の小中学校など70施設で1万8467個に上るくぎや金属片などが発見されています。中でもくぎの量が多いことなどから、4つの小学校の校庭の改修工事が区の今年度予算に組み込まれ、荻窪小学校の改修工事にはおよそ3500万円が計上されました。荻窪小学校の校長は「子どものけがや命に対してかかるものは金額の大小ではないと思っている。それにかかる予算が3500万円なんだろうと受け止めている」と話します。
荻窪小学校の校庭は2学期が始まった9月1日から通常利用できる状態となっていて、学校は今後も安全確保に向けて点検を継続していくということです。校長は「学校の校庭だけでなく、全ての校舎を含めて不安がないというのはうそだと思う。これからも点検を怠らず、子どもたちに安心な荻窪小学校、教育活動を提供していきたい」と話しています。
<国は「点検要領」作成も…実効性は?>
杉並区は今年度、荻窪小学校を含む小学校4校の校庭改修におよそ3億2000万円を計上しています。国の補助はなく、全額、区の負担で行います。これについて岸本区長は「多額のお金がかかってもやらなければいけないと判断した」と話しています。
国はこの問題についてどのような対応をしているのでしょうか。
2023年の荻窪小学校の事故を受け、文部科学省は全国の教育委員会などに対し、校庭の点検など安全管理の徹底を要請しました。すると、全国の小中学校でもくぎや金属片などが次々に発見される事態となりました。都内の自治体でも、品川区の23校で7700個以上、足立区の53校で3588個、立川市の28校で4012個などが発見されました。
その後、2024年3月には文部科学省として初めて「安全点検要領」を作成し、点検時の注意点を提示しました。この中には「くぎは複数人の目視で確認する」「くぎなどを使用する場合、使用前後で本数を確認する」ことなどが書かれています。