TOKYO MX(地上波9ch)の曹蒙記者が外国人記者の視点で東京の魅力や課題を伝える「TOKYO LENS」のコーナー。今回は、日本の「はんこ」の魅力を取材しました。
◆日本で根付く「はんこ」文化 近年は「使用減」
日本の歴史に深く根付く「はんこ」文化。近年はデジタル化と共にその文化も薄れつつあります。こうした中、はんこの魅力を外国人が見直していて、人気を集めているといいます。

かつては権威の象徴だったはんこは月日の流れと共に、日本で多くの書面に意思表示や身分証明として押すことが定着しました。日本人にとってはんこは、単なるサインよりも重みがあり、「大きい契約になると実印というイメージが強い」「(はんこは)覚悟みたいなものがある」と語られるほど、特別な意味を持っています。
しかし、はんこ文化のない外国人にとっては馴染みがなく、何に使うものなのか分からないという声が。

街頭インタビューでは、ナイトクラブの入店スタンプと勘違いしたり、自分の腕に試しに押してみたりと、ユニークな反応が見られました。

なぜ「はんこ」は日本で独自に普及したのでしょうか。はんこ店の全国組織の会長によると、その背景には「名前を大事にする」という日本人の国民性があるといいます。「武士道の『名こそ惜しけれ』という言葉があるが、自分の名前に恥じるような行動はしないという、名前をすごく大切にするという国民性から広まっていった」と解説。

日本のはんこ文化の大きな転換点となったのは、2020年に当時の河野太郎行政改革担当大臣が掲げた、行政手続きの「押印の廃止」です。これを機に、DX化の波も相まって国内では「脱はんこ」の動きが加速しました。街の声を聞いても、「ペーパーレス化で減ってきている」「昔は仕事で使っていたが今はもうなくなった」といった意見が。若い世代は「はんこの使い方を分かっていない世代もいるのでは」という声も上がるほど、その存在感は薄れつつあります。
◆外国人に人気!名前を漢字に当てはめて作る「デュアルハンコ」
日本国内での需要が減少する中、新たな活路を見出したはんこ店があります。品川区大井で大正時代から続く「文福堂印房」です。一時は「2000年から21年にかけてだんだん少なくなってきてゼロに」と語るほど売上が落ち込んだといいます。

そんな中、近年は外国人客が急増。今では客の7割を占めるまでになりました。

実際に買いに来た外国人に話を聞くと、「ポンと押したら自分の名前が出てくるなんて!」「アメリカとは対照的で便利だと思う。アメリカではペンで署名するが、ここでははんこを押すだけで済むから速いですよね」と絶賛の声が。

さらに、はんこへの注目の高まりを後押ししたのが、外国人の名前を漢字に当てはめて作る「デュアルハンコ」という商品です。

店主が外国人客に漢字の持つ意味を丁寧に説明し、どの字にするかを選んでもらいます。

例えば「マイク」は、「舞」に共にという意味の「倶」と書いて「舞倶」。

ニュージーランドから来たロナルドさんは、自身の名前「RONALD」を「路名流努」という4文字の漢字で表現。

特に「ル」に対応した「流」という漢字が気に入ったと話します。ロナルドさんは「この字はあるものから次のものへスムーズに移動することを意味します。流れを作り出そうという姿勢が名前から感じ取れますね」と、その奥深さに感動していました。

一つの音に対して多いもので10以上の漢字が用意されているため、思いを乗せた「自分だけのはんこ」を作れる点がお土産として好評だといいます。

ロナルドさんは、「漢字には深い意味と歴史があります。同じ音でありながら異なる意味を持つということを教えてくれました。日本語は文脈を理解することが重要ですね」と話していました。

単なるサインの代わりではなく、自分のアイデンティティを表現できるアートとして、「はんこ」は新たな魅力を放ち、世界中の人々を惹きつけています。





