品川区の地域連携・地域防災の問題点、そして今後進むべき道とは? 森澤恭子区長とともに理想のまちづくりを考える

2025.07.22(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週月~金曜21:00~)。放送では品川区の森澤恭子区長を迎えて、これからの地域連携・地域防災について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤激論サミット」(毎週月~金曜21:00~)。放送では品川区の森澤恭子区長を迎えて、これからの地域連携・地域防災について議論しました。

◆パブリックミーティングを経て助成金新設

番組では昨年9月、品川区の戸越銀座商店街と戸越二丁目町会、そして森澤区長ら行政が一堂に会した「パブリックミーティングin品川」を開催。その際、それぞれが抱えている課題をどう解決していくか、さまざまな議論がなされました。

それ以降、これまで交流がなかった三者は定期的に話し合いを行い、連携してイベントなどを実施。さらに、品川区は今年度から助成金を新設するなどさまざまな動きを見せています。

そこで放送から9ヵ月、パブリックミーティング後の変化と新たに見えてきた課題、そして地域防災のこれからについて森澤区長と共に改めて考えます。

まず森澤区長は「町会と商店街の関係性の課題などが可視化され、そこからどうしていこうか話し合い、少しずつパブリックミーティングで出てきた課題の解決の兆しが見えてきている」と前回の議論以降の手応えを語ります。

そして、課題解決の一助となるべく今年度から品川区では防災活動をきっかけとした“共助の強化”として、予算2,860万円の助成金を新設。これは商店街やマンション、学校など団体同士のつながりの構築や防災協議会の自主的活動への支援などを目的としたもので、町会や商店街などの団体が連携して行う取り組みやイベント、備品購入などを助成していきます。

森澤区長は「前回のパブリックミーティングで、町会は町会で予算があり、商店街は商店街で予算があるので連携して行うイベントには(それらの予算が)使いづらいという話だったので、連携するものに対しての予算として助成金を創設した」とその狙いを解説。さらには、「(地域に対して)行政が、何ができるかといったときに、連携を後押しすること。助成金がそのモチベーションになれば」とも。

この取り組みに対し国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさんは「制度上(予算が)分かれているとどうしても奪い合いになる。でも、これはWin-Winの有機的な関係。お互い利害が一致していると再確認できる」と評価しつつ「あとはこれを持続させていくこと。そのうち綻びが出るので、それをどう取りまとめていくか」と課題を挙げると、森澤区長は「事例を積み重ねていくことが大事」と大きく頷きます。

◆パブリックミーティング後に見えた新たな課題

前回のパブリックミーティング後、町会と商店街の参加者に感想を伺ってみると、町会の小林会長は「いざというときに助け合える町会になっていくのが私たちの理想。今後(商店街と)お互い情報共有をしながらお手伝いができれば」、商店街の広報担当・亀井さんも「自分たちだけではできないことが見え、(町会と)一緒にやるとできることが増えると感じた」と連携に前向きな姿勢を見せていましたが、それが実現するかたちに。

パブリックミーティングの2ヵ月後には町会と商店街、品川区が集まり、今後の連携に向けた打ち合わせが行われました。その後、打ち合わせは定期的に行われ、今年1月には町会の炊き出しイベントに商店街が参加。さらには商店街のイベントに町会が参加することもありました。

そうしたイベントに関して、「The HEADLINE」編集長の石田健さんからは「20代・30代は普段は仕事で別の地域にいたりしてなかなか地域に根ざしづらい。(そうした人たちは)イベントに来てくれているのでしょうか?」との質問が。これにイベントに参加した経験がある森澤区長は「地域の大学生や中高生を巻き込んでいく動きはあるが、現役世代となるとまだまだ。そこは課題のひとつ」と答えます。

その他にも課題はあります。パブリックミーティングを経て戸越銀座商店街と戸越二丁目町会の連携は進みましたが、他の町会との連携はまだまだ。現在、戸越銀座周辺には8つの町会があり、それぞれ人員や予算に差があるため、連携が困難な町会もあるとか。

この現状に、モーリーさんが「自分たちが当事者として積極的に参加する能動性、防災はそのひとつのモチーフであり、どちらかというと“絆”というのがもっと大きなテーマだと思う」と共助について語ると、森澤区長も「自助も考え方としては大事なので、自助の後に共助、余裕があれば周りの人を助ける。少しずつ協力しあえる関係性を作ることは大事」と持論を述べます。

◆品川から地域防災の新たな形を発信!

前回のパブリックミーティングでは、町会から「商店街の中心で周辺8町会による防災協議会の設立」。商店街から「ビジョンの共有」。都市防災が専門の東京大学・廣井悠教授から「防災にイノベーションを」などさまざまな提言がありましたが、その後の動向を聞いてみると「“子ども巻き込む”という話もあったが、それでいうと新たな地域の防災リーダーということで、学生を対象にした防災士の資格取得支援、中学校で防災を学ぶ取り組み(しながわ防災ジュニアプロジェクト)を授業の一環として始めたり、若い人たちにも地域防災を考えてもらう取り組みをスタートした」と森澤区長。

ここでキャスターの堀潤が最終的に目指すアウトカムについて触れると、石田さんから「どこにアウトカムを設定するかによって、関係性があるところは(リンク)できるが関係がないところはどうするのか?」との疑問が飛びます。

すると森澤区長は「品川区でいうと、例えばマンションはつながりがまだ薄いというところでマンション防災も後押ししていく必要があると思う」と石田さんの質問に答え、「アウトカムはそれぞれ違うが、(地域住民の)関係性を日頃から作っていくというところでは、やはり(地域に)参加する人たちを増やしていくことは大事」と指摘。

そして森澤区長は「商店街と町会のいい関係ができれば、それを私たちもやってみようと広がる。品川区だけじゃなく都内、そして全国に」と今後のさらなる展開に期待します。

◆今後の地域防災のポイントは?

最後に地域連携・地域防災を高めるために今後行っていくべきこと・提言を議論の参加者たちに伺いました。

まず石田さんは“繋がりのない人をどう巻き込むか”。「マンション(居住者)や一人世帯を巻き込むのは本当に難しい。特に23区内はそういう人が多く住み、多くが現役世代なので、そこ(をいかに巻き込むか)が課題だと思う」と今後のポイントを改めて訴えます。

臨床心理士のみたらし加奈さんは、“人間関係システム”。「心理の世界で対人関係をシステム論として捉える視点があり、対人関係はやはりシステムとして構築していくものでもあるので、先ほどの話にもあったように、ひとつ成功例を出すと他の地域にも応用できる。なので、関係の構築をシステムとして捉えた上でそれを実装し、応用していくのがいいと思う」と言います。

一方で、モーリーさんは“貢献のきっかけ”。「人それぞれ得意なことがあるので、貢献できるアングル、なるべく多くのひっかかりを作っておくと嬉しい」と誰もが何かしら貢献できる社会づくりを提案。

そして、森澤区長は“さまざまな主体を引き続き繋いでいく、区がハブに、戸越から区内、全体、その先へ”とこれまでの自身の主張をまとめます。

最後に、堀は“多様性を大切にするリーダー選び”、そして“メディアの役割”について言及。多様性・社会的包摂に関心のあるリーダーが選ばれることを切望しつつ「メディアの役割として課題解決型の報道、ソリューションジャーナリズムを射程に入れた報道の枠組みを各地域とともにやっていきたい」と展望を語っていました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:「堀潤激論サミット」
放送日時:毎週月~金曜 21:00~21:25 <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
TVer」で放送後1週間Tverにて無料配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

RELATED ARTICLE関連記事