“痩せる薬”として広がる「マンジャロ」…手軽さの陰に潜む危険性 壮絶な副作用も

2025.07.17(木)

10:10

「マンジャロ」という薬は、2型糖尿病の治療薬として2022年に厚生労働省に認可された注射タイプの薬です。マンジャロは「血糖値を下げる」「食欲を抑える」「体重減少効果がある」とされています。ところが今、美容クリニックなどを中心に糖尿病患者以外にも“痩せる薬”として広がりを見せています。しかし誤った使用方法は極めて危険です。現状を取材をしました。

「マンジャロ」という薬は、2型糖尿病の治療薬として2022年に厚生労働省に認可された注射タイプの薬です。マンジャロは「血糖値を下げる」「食欲を抑える」「体重減少効果がある」とされています。ところが今、美容クリニックなどを中心に糖尿病患者以外にも“痩せる薬”として広がりを見せています。しかし誤った使用方法は極めて危険です。現状を取材をしました。

若い世代を中心に“手軽に痩せることができるダイエット薬”として広がりを見せている「マンジャロ」について、街行く女性に話を聞いてみると「(マンジャロは)知っている。痩せる薬ですよね」(19歳・アルバイト)、「楽して痩せられるではないけれど、痩せられる注射みたいな印象。認知度は同年代では割とあると思う」(23歳・保育士)、「(糖尿病の)授業でちょっと話に出たことがある。ダイエットで使われることもあるから、使い方や薬の効果を理解しようというような話だった」(18歳・看護学生)など、聞いたことがある・知っているという声も聞かれました。またSNSで検索してみると投稿件数は1万1000件と表示されるなど、「メディカルダイエット」と書かれた投稿や体重変化の投稿などがさまざまなものが見られました。

そこで、マンジャロをダイエット目的で3カ月間使用したことがあるという31歳の女性に話を聞きました。

女性は「20代後半から痩せづらくなってきて、何をしても痩せないという状況の時、インフルエンサーがマンジャロで痩せたというのを見て、私もやってみようかなと軽い気持ちで、痩せたいと思って見つけて始めた」と証言しました。しかし“軽い気持ち”でオンラインで薬を購入し使用を始めた女性に待っていたのは、想像を超える副作用でした。女性は「全く食欲がなくなってしまったり、水を飲むのも厳しい状態。あとは1日中吐き気が続いて、ずっとトイレに引きこもっている状態だった」と振り返りました。

日常生活に支障を来す食欲減少や吐き気などの副作用もあり、女性は使い始めてわずか1カ月で体重は7キロほど減ったといいます。女性は「しんどかった。結構ふらふらになる。あとは睡眠時間が足りない感覚。1日2時間ぐらいしか寝ていないのではというぐらいずっと眠かった」と話しました。そして、身の危険を感じた女性は病院で検査を受けたところ、血液の値などに異常があり、栄養素の不足が長期間続いて起きる「飢餓状態」だと診断されましたが、一気に痩せた経験からその後も薬の使用を続けました。

この女性は「副作用を思い出すと本当にもう使いたくないというのが正直なところ」といいます。しかしこの先も使用する可能性は否定できないと話します。女性は「肌見せの時期に、痩せないから用量が少ないものだったら使おうかなっていう気持ちにはなっている」と話します。

現在「2型糖尿病薬」として製造販売の承認を得て保険適用となっているマンジャロについて、糖尿病を専門とするクリニックの院長は、保険適用外であるダイエット目的での使用について警鐘を鳴らします。さいしょ糖尿病クリニック(東京・中野区)の税所芳史院長は「保険適用外の患者は、使った時に実際どういうことが起こるか不明。そういった状況で、単に体重が減るというだけで一般の人が使うのは良くないのでは」と指摘します。

マンジャロのダイエット目的での使用を巡っては、日本医師会も「リスクがある不適切なもの」として、使用を控えるよう呼びかけています。

<不適正利用は危険 ダイエット目的使用の問題点>

取材した女性は、電話での簡単な問診だけで購入できるオンラインクリニックで「マンジャロ」を購入したということです。“手軽に痩せる薬”として広がっているマンジャロですが、税所院長はダイエット目的での使用について問題点が多いと指摘しています。

まず、製造の承認が日本で下りたのは2022年のため、まだ長期間にわたって使用した場合の影響が分かっておらず、重大な副作用などの生じるリスクがあります。また、マンジャロはダイエット目的での使用は適正利用ではないため、副作用などが生じでも医療費などの給付を受けることができる「医薬品副作用被害救済制度」の対象外です。さらに「自由診療」のため高額な上に、マンジャロの使用をやめると体重は元に戻ってしまうといいます。

本来、副作用やリスクについてしっかりと説明し、本当に患者にとって必要なのかを見極めてから処方するべきで、患者側からの希望だけで簡単に薬が手に入ってしまう状況は危険といえます。

政府は2025年2月、医療法などの一部改正を閣議決定しています。美容医療でも「オンラインで無診察処方された」「SNS広告を見て受診してトラブルになった」という事例が報告されていることから、今後、オンライン診療に関するルールを徹底するための法的整理や、悪質な医療広告の取り締まり強化などが行われる予定です。

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