<都議選2025>【千代田区】混戦!1議席を最多7人が争う 割れる保守に新勢力も

2025.06.19(木)

10:20

都内42選挙区で127議席を争う東京都議会議員選挙は、6月22日に投票日を迎えます。今回は日本有数のビジネス街であり官公庁が集積する“日本の中心地”「千代田区選挙区」の各候補の選挙戦をお伝えします。元々自民党の影響力が根強い選挙区ですが、現在の議席は都民ファーストの会が獲得しています。今回は定数1議席に対し、過去最多となる7人が立候補していて、かつてない混戦となっています。

都内42選挙区で127議席を争う東京都議会議員選挙は、6月22日に投票日を迎えます。今回は日本有数のビジネス街であり官公庁が集積する“日本の中心地”「千代田区選挙区」の各候補の選挙戦をお伝えします。元々自民党の影響力が根強い選挙区ですが、現在の議席は都民ファーストの会が獲得しています。今回は定数1議席に対し、過去最多となる7人が立候補していて、かつてない混戦となっています。

1議席を争う千代田区選挙区に立候補しているのは届け出順に、都民ファーストの会の現職・平慶翔さん(37)、無所属の新人・内田直之さん(61)、再生の道の新人・柳沢誉之さん(41)、共産党の新人・木村正明さん(70)、諸派の新人・ナカジマケンジさん(53)、自民党の新人・林則行さん(51)、無所属の新人・佐藤沙織里さん(35)の7人です。

「この8年で、子育て予算は1兆円から2兆円へと倍増した。これは私が子育て世代の代表だからです」とアピールするのは平慶翔さん(37)です。都民ファーストの会の現職・平さんは、2期8年で進めてきたという子育て政策を発展させ、所得制限のない教育支援を行うと訴えています。都民ファーストの会の特別顧問である小池知事や副代表の樋口区長と連携し、都政を前に進めたいと強調します。平さんは「小池知事と議会が車の両輪となって進めてきた政策がしっかり浸透しているのではないか。子育て支援の充実は今までもやってきた。さらに充実させていきたい」としています。

「無駄遣いに赤ペンを入れます。無駄な予算の使い道、全部書類を見れば何が無駄なのか分かります」と訴えるのは佐藤沙織里さん(35)です。無所属の新人・佐藤さんは公認会計士の経験を生かし、東京都の歳出削減をするとともに、千代田区を「日本一税金の安い減税特区にする」と主張します。2月の区長選ではSNSを活用しておよそ6400票を獲得し次点となり、今回は区民と積極的に交流を図り、支持を固める狙いです。佐藤さんは「まだ私の声が届いていない層にもこの1週間でいかに届けるかが課題」と話します。

「仲間たちと一生懸命、草の根政党として、自民党が一件一件地域の声を聞きながら政策を前に進めていく」と支持を訴えるのは林則行さん(51)です。自民党の新人・林さんは千代田区議を22年務めた実績をアピールし、区の文化を継承しつつ防災に強い街づくりを進めると主張しています。告示日には小泉農水相が応援に駆け付けていて、自民党が一丸となって8年ぶりの議席奪還を狙います。林さんは「今までの負け続けた自民党の選挙とは違うというのは十二分に伝わっていると思う」と手応えを語ります。

「子どもたちが希望を持って生きるために必要なことを街づくりから考えていきたい」と意気込むのは内田直之さん(61)です。無所属の新人・内田さんは「都議会のドン」と呼ばれた内田茂元都議の娘婿で、最も重視する政策に首都直下地震への対策を掲げています。前回の都議選では自民党候補として出馬しましたが今回は無所属での立候補を決意し、一人一人の支援者と向き合い戦い抜くと意気込みます。内田さんは「行動や発言・活動を見て、誰が本当の保守なのか。千代田区の皆さん、多くの人には分かってもらえると思う」と話しています。

「財源を示して『消費税減税を』と公約に掲げているのは共産党の木村正明ただ1人」と力を込めるのは木村正明さん(70)です。区議会議員を34年務めてきた共産党の新人・木村さんは、東京都の再開発制度が住宅価格の高騰を招いたとして、制度を見直すと強調します。また、都議会の「野党第1党」として小池都政をチェックし「庶民の住まいを守る」と呼びかけます。木村さんは「一緒に都民の要求で力を合わせようと呼びかけで野党が1つになり、小池都政に働きかける」と訴えています。

「私たち一人一人の選択、その小さな積み重ねこそが未来を変えていくのではないか」と訴えるのは柳沢誉之さん(41)です。再生の道の新人・柳沢さんは今回、会社員として働きながら立候補し、政治活動費の見える化を進めることで、政治に興味のない人の政治への関心を高めたいと主張しています。再生の道の石丸代表も応援に駆け付けていますが、党や代表の知名度に頼らず地道に街頭演説を続け、区民に声を届けていく考えです。柳沢さんは「地元の地域の中で、どれだけしっかりと声を届けていくのかが大事と考えている」としています。

「東京都も日本も税金の使い方を間違えている。これを許していいのか」と話すのはナカジマケンジさん(53)です。自治労と自治労連から国民を守る党の新人・ナカジマさんは、東京都の無駄な予算を削減していくと訴えます。区内で飲食店を営んだ経験から、観光地を活用して税収を増やし、新たな減税制度を創設する政策を掲げています。ナカジマさんは「観光特区というか、減税を区に関してはできると思う。東京から減税の見本を作っていきたい」と意気込みます。

<過去には強い影響力「都議会のドン」 その後、都ファの影響続くが…区長選では“新風”も>

この選挙区は自民党が根強い影響力を持っている地域で、その象徴となってきたのが「都議会のドン」とも呼ばれ2年半前に亡くなった内田茂・元都議です。千代田区の都議会議員だった内田さんは都議を7期務めたベテランで、都議会の議長や自民党の都連幹事長などを歴任し、中央政界にも影響力を持っていました。また、2016年の東京都知事選挙では小池知事が自民党都連のことを「ブラックボックス」と批判する中、都連の象徴的な存在として「都議会のドン」とも呼ばれていました。内田さんは2017年に政界を引退して都議選では後継者を擁立しましたが、後継候補はおよそ2倍の票差で都民ファーストの会の候補に敗れました。

元々は自民党の地盤が強い選挙区でしたが、この後は都民ファーストの会の勢いが強まっていきます。2017年の都議選では都民ファーストの会の樋口高顕さんが当選し、2021年には千代田区長選挙で樋口さんが、都議選で平慶翔さんがそれぞれ当選し、今年=2025年の区長選では樋口さんが再選を果たしています。

ただ、今年の区長選を細かく見てみると、自民党・公明党・国民民主党の区議が応援に入った樋口さんが約1万700票の得票だった一方、次点となったのはSNSを駆使する選挙戦で注目され、今回の都議選にも出馬している佐藤さんでした。佐藤さんは区長選では政党からの推薦を受けない無所属ながら票を伸ばし、およそ6400票を獲得しています。このような流れから、今回の都議選では自民支持層や浮動票がどの候補者へと向かうのかが注目のポイントとなりそうです。

過去最多の候補者数となった千代田区は“東京の中心”ということで注目度の高い選挙区です。その一方で、昼間人口と夜間人口の差のためか、主要な駅での街頭演説でも足を止める人は比較的少ない印象でした。また、富裕層が多いのではないかと思われる地域ですが、候補者からは「物価高」「減税」などのワードが目立ち、既存政党の支持基盤が固いと感じる部分と、それを批判する声も聞かれました。千代田区では近年人口が増加していて、新たに住み始めた層にSNSでアプローチする動きや、演説ではなく練り歩くことで認知度を高めようとする候補者もいるなど、新たな動きも見られています。

東京都議会議員選挙は6月22日に投票日を迎え、即日開票されます。

■都議選・千代田区選挙区(定数1,届け出順・敬称略)
平慶翔(37,都ファ・現)
内田直之(61,無・新)
柳沢誉之(41,再生・新)
木村正明(70,共産・新)
ナカジマケンジ(53,諸派・新)
林則行(51,自民・新)
佐藤沙織里(35,無・新)

RELATED ARTICLE関連記事