東京都は現在、船を使った移動=「舟運」活性化に力を入れています。これまで日本橋-豊洲間と晴海-日の出間で運航していますが、5月14日から新たに3つ目の航路として五反田-天王洲間が開通します。それに先駆け、前日にはメディア向けの試乗会が行われました。

この日の東京都心の最高気温は24.9℃となり天気も良好で、船上では風も感じられました。乗船してみると実際の運航時間とは異なるものの、船の上から普段とは違った視点で街並みを眺めることができました。また、視界を遮る屋根がないため、360度さまざまな角度から景色を楽しめるのも特長です。
この航路で船が運航するのは平日の週5日で、時間は午後4時から午後10時まで、五反田と天王洲を計7回発着します。所要時間は35分で、片道900円で利用できます。
一方で、乗船したことで感じた課題もあったようです。TOKYO MX『堀潤 Live Junction』の坪北奈津美キャスターは「今は新緑で気持ちがいいが、今後、夏あるいは冬になってくると、しっかりとした暑さ対策・防寒対策は必要だと思う」と感想を語り、乗り心地や運航そのものが天候に左右されることは船の課題の一つといえそうです。
さらに、すでに運航されている航路の利用状況を見てみると、同じ日、午前10時すぎの日の出船着場では、乗客はわずか3人ほどが降りていくという状況でした。船のスタッフによりますと、週に2日、44人乗りの船を1日8便運航している日の出-晴海間では、1日の利用者が20人程度だということです。利用客からは「ここを拠点にしている人ならとても便利だと思う。全然渋滞もないし。ただ、雨や風が大変」「少し本数が少ないように思う」などといった声が聞かれ、近くに勤務する会社員は「日常利用で1カ月集めると結構な金額になるかもしれない。費用に見合っているかどうかはまだプロモーションしないといけないし、呼び込んでいかないといけないと思う」と語りました。
東京都の舟運活性化への補助金の交付は2026年3月までで、その後事業を継続するかどうかはそれぞれの事業者が採算性などを検討して決めるということです。
<「舟旅通勤」課題も 事業者への補助は今年度まで>
東京都は「舟旅通勤」について、混雑を避けるためや気分転換の方法として、電車やバスに加え、もう一つの日常の交通手段として定着してほしいとしています。
ただ、課題もあります。まず『便数の少なさ』が挙げられます。すでに運航している日の出-晴海間の場合、週2日・朝のみの運航で、それも1日当たり8便となっていて、利用者からは「便数が少ない」「夕方にも欲しい」という声がありました。また『利用者数』も伸び悩んでいます。現状、日の出-晴海間の利用者は1日当たりおよそ20人で、1日当たり・全便を合わせた定員=320人に対してかなり空いている状態です。さらに『金額』も片道当たり500円と900円(航路による)で、仮に平日の通勤で毎日利用した場合、片道利用だけでも1カ月に1万円近くかかります。また、天候によって欠航することもあり『交通の安定性』は電車やバスよりも低く、風が強い日などは乗り心地にも影響が出やすくなります。
東京都が行っている「舟旅通勤」の事業者に対する補助金交付は今年度末までとしています。補助が終わってしまうと採算性は事業者に委ねられるため、利用状況によっては来年度以降の運航継続も懸念されます。