牛乳の消費量は、夏は暑さで消費が増えますが、寒い冬場は消費が落ち込みます。一方で、生乳を生産するために飼われている乳牛のほとんどはヨーロッパ原産のホルスタイン種で、暑さに弱く寒さに強いため、冬から春先にかけてが生産のピークになり、夏場は暑さのため生産量が減少します。この需給のずれによって牛乳の生産現場に大きな影響が出ています。そして3月は需要が落ち込み、多くの牛乳が廃棄されてしまう恐れがあるのです。

学校で午前の授業を終え、給食を食べる生徒たちにとって欠かせない牛乳は、戦後から子どもの成長に必要な栄養素を効率よく摂取するために提供が始まり、今も全国の学校で提供されています。「あまり好きじゃない。水の方が好きだから」と話す生徒もいましたが、「好きです」「おいしいですよね。牛乳は3食飲んでいる。大好きです。たぶんこれで身長が伸びたのだと思う」と話す子どもたちも多くいました。
長年にわたって学校でも飲まれている牛乳ですが、この時期の消費量に大きな影響を与えているのが「春休み」です。もともと冬や初春は寒さのため牛乳を飲みたい人が減る中、3月後半に春休みが始まって給食がなくなるため、学校で牛乳が消費されることもなくなります。
しかし、だからといって生乳の生産を止められない事情があります。東京・日野市に唯一あるの酪農家「百草ファーム」で20年以上にわたって乳牛を飼育している大木聡さんは朝と夕方の2回、16頭の乳牛から牛乳を絞るのが毎日の日課です。それは、需要にかかわらず毎日絞乳しないと乳牛が体調を崩してしまうからです。大木さんは「消費が落ち込んでいる。いくら一生懸命搾っても飲んでもらえないという形で、ちょっと余り気味」と話します。
この時期は余り気味だという牛乳ですが、大木さんは“寒い季節に生産したものが一番おいしい”と話します。大木さんは「冬はどうしても寒いので、牛自体が体に脂肪を蓄える。それによって、出てくる乳も脂肪が高くなる。冬は牛乳として一番旬」といいます。
この時期を含め、少しでも多くの人に牛乳を飲んでもらおうと、酪農家と乳業メーカーの架け橋となる日本乳業協会はさまざまな対策を進めています。人気クリエーターの「うのき」さんにオリジナルキャラクターの制作を依頼し、SNSを通じて牛乳に関する知識を発信しています。また「ミルクのお汁粉」など寒い季節にも食べたくなる牛乳を使ったレシピも紹介しています。