国連とともに世界の人道支援・開発援助を行なってきたUSAIDをトランプ政権が解体…その背景にあるものとは?

2025.03.10(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜18:00~)。「New global」のコーナーでは、米トランプ大統領が解体を示唆している“USAID(アメリカ合衆国国際開発庁)”に着目しました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜18:00~)。「New global」のコーナーでは、米トランプ大統領が解体を示唆している“USAID(アメリカ合衆国国際開発庁)”に着目しました。

◆トランプ大統領が解体を目論むUSAIDとは?

トランプ大統領は2月9日、USAIDの海外支援事業の見直しに関して、必要性があると認める一部の事業は「おそらく国務省が指揮することになる」と述べ、国務省との統合を示唆しました。

また、トランプ政権は1万人以上いるUSAIDの職員を約600人に削減する計画を進めており、国外で支援事業に従事する職員には休暇に入るよう指示。7日にはワシントンにある本部の看板が撤去されました。一方、連邦地裁は一部職員への休暇指示を一時的に差し止めると表明。議会調査局によると、大統領にUSAIDを廃止する権限はなく、統合は議会の承認が必要になるということです。

USAIDは1961年に設立され、人道支援や開発援助などをアメリカ政府の独立機関として運営してきました。職員の3分の2は国外に勤務しており、それこそ紛争当事国や災害被災国での人道支援、疫病が蔓延しそうな地域で薬やワクチンの供給などにも関わってきました。

そのため、USAIDの解体は国連機関の活動に大きく影響し、キャスターの堀潤は「国連の活動がいろいろなところで継続できなくなると、今混乱が起き始めている」と懸念します。

では、トランプ政権はなぜUSAIDを解体しようとしているのか。2023年にアメリカ政府が国際援助に使った予算は約680億ドル(約10兆円)。そのうち約400億ドル(約6兆円)がUSAIDの予算で、そこに目をつけたのが政府の支出削減を担う新組織「DOGE(政府効率化省)」のイーロン・マスク氏です。彼は「大規模な腐敗や無駄を明るみに出した」とUSAIDを批判。また、トランプ大統領も「(USAIDは)全てが詐欺だ。有効活用されているのはほんの僅かだ」と主張しています。

つまり、アメリカ政府は世界中に支援しているものの、それはいまやアメリカ国民のためになっていない、一部の人たちに予算が搾取されていると両者は訴えており、この問題の背景には「フェイクニュースの問題もある」と堀は言います。

◆USAID解体の裏にはロシアのフェイクニュースが!?

米「ニューズウィーク」によると、USAIDに関してはSNS上にさまざまなフェイク動画・フェイク画像が流れており、例えば、俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんやオーランド・ブルームさんがウクライナを慰問した際、「これはUSAIDが資金援助している」という情報が拡散。しかし、それは全くの嘘でした。

そして、そうした情報をマスク氏やドナルド・トランプ・ジュニア氏がリポスト。後に誤情報だとわかり削除していますが、ここにロシア政府の偽情報ネットワークが介在していたという話もあるそうで、情報戦が展開されています。

ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは、もしこうしたフェイクニュースによってアメリカが何らかの被害を被ったら本末転倒ではないかと危惧。

この意見に堀も同意し、「例えば、本当にUSAIDが撤退することで、再びパンデミックのような状況になれば、それがブーメランのように人々に暮らしに直撃する。そうした本末転倒なことはあまり語られない」と指摘します。

また、統計家の西内啓さんは、マスク氏が訴えている“無駄”という点を「明確に違う」と否定。そして、「昔はどうかわからないが、ここ10〜20年ぐらいはいわゆるエビデンスベースで決めることが開発援助などでも普及してきていて、効果がなければバシバシ切られている」とその理由を明かします。

さらには、「DOGEにはどういう人が働いているのか調べたが、ファンドなどにいて会社を買収し、直近の利益にならないことをリストラし価値を上げて売却するようなことをしてきた人がたくさんいたので、『直近のアメリカ人のバリューにならないことはもう一切やりません』みたいな、そういうポーズなのかなと思って見ていた」とコメント。

一方、タレントのふかわりょうさんは「フェイクニュースに関しては理解できないところもあるが、経営者目線、経営者が政治をやるとこういうことが正しいとされるわけですよね。いわゆる無駄というか経営効率、合理化。これをアメリカ人は選んだということですよね」と率直な感想を述べます。

これに堀は「経営者の方々のなかにも、何をもって自分たちの力とするかといったときに、目の前の大きな資金を得るためなのか。それとも人々の幸福、それぞれの価値が評価される優しい社会を作るのが企業の力なのか、それによっても全然違う。だから、何がイーロンさんの思惑なのか、トランプ氏はこの先にどういう世界を作ろうとしているのかというところが一番見極めとして重要だと思う」と補足。

さらには、「SNSにはこうした人道支援は国連がやればいいじゃないかという意見もあるが、国連機関もさまざまで、どういうふうに支援活動をするかというと、例えばUSAIDや日本だとJICA(国際協力機構)からも資金が入っている。だからUSAIDがなくなることでどれだけのインパクトが起こるのかはここから」と今後を案じていました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:堀潤 Live Junction
放送日時:毎週月~金曜 18:00~19:00(※18:55終了の場合あり) <TOKYO MX1>
無料動画配信サービス「Rチャンネル」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

RELATED ARTICLE関連記事