今年=2025年11月に東京で聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」が開催されます。しかしデフリンピックの認知度はパラリンピックに比べるとまだ低いのが現状です。デフリンピック大会に出場する競技団体の一つ・デフバレーボール女子日本代表チームは、2017年デフリンピック・トルコ大会で金メダルを獲得し、2024年に沖縄で開催された世界選手権でも金メダルを獲得するなど、デフバレーボールの強豪チームです。2022年のデフリンピック・ブラジル大会では日本選手団の中から新型コロナ感染者が発生してしまったため棄権となり悔しい思いもしましたが、今年の東京大会に向けて強化合宿などを行っています。競技は6人制で、ルールは一般的なバレーボールと全く同じです。競技の見どころと運営面の課題について取材しました。

バレーボールの競技中は一般的に試合中も声を出してコミュニケーションを取りますが、デフバレーでは掛け声が少ない分、ボールやシューズの音が大きく聞こえて迫力があります。
デフバレー女子日本代表の狩野美雪監督は「ボールが動いている時に(手話で)せっせと手を動かしたりするのは難しいし、あらゆるケースを想定して事前の準備ができるよう心がけている」と話し、事前に決めた動きを基に、素早い攻撃が展開されます。平岡早百合選手も「手話が分からない選手もいるし、手話がメインの選手もそれぞれなので、分からないことは身ぶりなどで分かるまで伝えるような工夫をしている」といいます。
デフスポーツにとって最も重要となるのが“コミュニケーション”です。試合中以外にも選手一人一人に合わせてさまざまな方法が取られています。言葉で指示する監督と耳が聞こえない選手たちをつなぐ、チーム専属の通訳である岡田直樹さんは、それぞれの選手に対して意思疎通の方法を使い分けています。岡田さんは「何でもかんでも通訳が通訳すればいいということではなく、コーチや監督、トレーナーも手話を覚えているので、コミュニケ-ションが成立していれば見守るのも仕事の一つ」といいます。
一方で協議団体の運営面では、支援を募る活動の場面などで耳が聞こえる人を採用することもありますが、やはりコミュニケーションが“壁”になることもあるようです。
日本デフバレー協会の大川裕二理事長は「健聴者に指示を出すには全てメールを打たなければいけない。大変なので手話ができる健聴者を採用したいところだが、そうしたリクエストに応えてもらえる人材がいない」と悩みを打ち明けます。そして、理事長はこれらの課題を解決するために、まずは東京デフリンピックでデフバレーの知名度を上げることが必要だと話します。
大川理事長は「100年目のデフリンピックが東京に来るのはすごくうれしいこと。この機会を使ってデフバレーの知名度を上げる。そして、聞こえない人がどんなことに困っているか、そうした課題を東京デフリンピックで勝つことでPRしていきたい」と意気込んでいます。