TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜18:00~)。育児の悩みを解決に導く「トヨサキ育児っと」のコーナーでは、東京都の新たな政策“無痛分娩への助成金”について取り上げました。

◆海外では当たり前の“無痛分娩”
“無痛分娩”とは、出産時の痛みを麻酔で和らげる分娩方法で、フィンランドやフランス、アメリカでは約7〜9割がこの方法で子どもを産んでいます。一方、日本では約1割程度と普及していないのが現状です。
そうしたなか、東京都は無痛分娩に助成金を出す新たな方針を発表。出産にかかる費用は、全国平均が約51万8,000円。東京都の平均が約64万6,000円で、国は出産育児一時金50万円を支給していますが、無痛分娩をするとなると、追加で12万円程度かかると言われています。
そこで東京都では、今年10月から無痛分娩の費用を最大10万円助成する方針を明らかに。小池都知事は「費用やリスクを理由に無痛分娩を断念することなく、安心して出産できる環境を整える」と話しています。
コラムニストの河崎環さんは、「私は初産のときに無痛分娩を利用したが、(当時)28年ぐらい前になると周りのママ友から『そんなことでちゃんと赤ちゃんを愛してあげられるの?』、『お母さんはお腹を痛めて産むからこそ母性が生まれる』と自分が痛い思いをしたり、何かを犠牲にすることによっていい育児ができるみたいな、少し精神論めいたものが蔓延っていた」と回顧。
そして、「今はそういうことを言う人は本当に少なく、例えば『出産のリスクを下げましょう』とか『出産が怖いものである必要はないですよね』といった合理的な意識が高まってきて、出産周りのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を上げるみたいな感覚でこうした助成がされるようになってきたと思う。単純に日本の出産と育児の質を上げる方法で誰も反対しないと思う」と持論を述べると、食文化研究家の長内あや愛さんも大きく頷き同意します。なお、キャスターの豊崎由里絵が5年前に無痛分娩を行った際も同じようなことを言われたそう。
◆少子化対策の一助となるか?
無痛分娩のメリットは、痛み・不安や恐怖の軽減。そして、産後の疲労軽減などがあります。一方、デメリットは麻酔で運動神経の機能が落ち、子宮収縮が弱くなるので分娩時間が長くなってしまうこと。さらには、麻酔による致死的合併症のリスクもありますが、本来は早期発見ができるものなので死に至ることはほとんどないということです。
ちなみに、今回の都の政策についてSNSでは「無痛分娩対応している病院少ないし普通分娩の人はどうなるの?」、「痛くないなら子どもを産もうと思う人はどれぐらいいるのか?」など、少子化対策に繋がるのかという点に疑問の声があったとか。
また、無痛分娩を導入していないクリニックなどに無痛分娩が提供できるようサポートを行っている入駒慎吾医師に話を聞いてみると、「(無痛分娩は)選択肢としてあるべきひとつ」とし、「無痛分娩をされた方のなかには『こんなに痛くないんだったらもうひとり産める』という方が結構いる。そうすると次の出産があり得るという意味では少子化対策になり得るだろうと思う」と効果を解説。
加えて、妊婦に対する助成だけではなく、受け入れる病院側へのサポートも必要だと主張。そして、「多くの方が無痛分娩を求めて受診されても(病院側にも)キャパがあるので、そこがどうなるのかという問題はある。一部、安全性を保つための予算も数千万円ついていると伺っているが、受け皿を整えるという意味ではなく、今ある受け皿がより安全に頑張るサポートする(目的)なので、(無痛分娩をする)患者さんが増えることに対しての直接的なサポートではない」と指摘します。
元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんは、「アメリカの法律事務所につとめていたとき、同僚の女性が金曜日の夜に無痛で出産し、月曜日に元気に事務所に来ているのを何回も見ていたので素晴らしいと思った」と都の政策を評価しつつ問題点も示唆。「民事の裁判官をしていたときに医療事故で出産事故は多く、無痛分娩は陣痛促進剤の管理と血液・麻酔の管理が高度に求められる。普通のクリニックでは難しいだろうし、何か起こったときの受け入れ体制、高機能の病院への受け入れ体制も必要になってくると思う」と懸念します。
これに対し、豊崎は「とはいえ、出産するときに『子宮口を広げるバルーンを入れますね』と言われ、これで金額が数万円増える。『促進剤入れますね』ってこれも数万円。(分娩で)苦しいのにお金のストレスも重なって、さらには無痛分娩も高いというところでいうと、この補助は個人的に大変嬉しいと思う」と話していました。
<番組概要>
番組名:堀潤 Live Junction
放送日時:毎週月~金曜 18:00~19:00(※18:55終了の場合あり) <TOKYO MX1>
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キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
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