東京都の「英語スピーキングテスト」で報告書を書き換えか 「ずさんだった」と証言も…

2025.02.14(金)

10:30

東京都が実施している「中学校英語スピーキングテスト」は「使える英語の育成を目指し、話すことの力を客観的に評価すること」を目的に行っているもので、結果は都立高校の入試に加算されています。試験開始から3年目を迎えた今年度=2024年度は、事業者がこれまでのベネッセから海外留学などでも使用される英語の試験を実施する「ブリティッシュカウンシル」に変わりました。2024年11月に行われた試験は中学3年生が対象で、およそ7万人の生徒が受験しました。

東京都が実施している「中学校英語スピーキングテスト」は「使える英語の育成を目指し、話すことの力を客観的に評価すること」を目的に行っているもので、結果は都立高校の入試に加算されています。試験開始から3年目を迎えた今年度=2024年度は、事業者がこれまでのベネッセから海外留学などでも使用される英語の試験を実施する「ブリティッシュカウンシル」に変わりました。2024年11月に行われた試験は中学3年生が対象で、およそ7万人の生徒が受験しました。

しかし、タブレット端末の不具合などのため、再受験者は255人となり、2023年の60人から4倍以上に増えました。

また、この試験を巡って、今回、試験監督を取りまとめる会場の責任者が試験の実施状況をまとめた用紙を書き換えたとみられる動画を入手しました。

試験会場で一体何が起こっていたのでしょうか。動画を撮った男性がTOKYO MXのカメラの前で証言しました。

男性が撮影した動画は、スピーキング試験が終わった後、それぞれの教室の実施状況を記入する報告書を“試験監督の取りまとめ役”が確認している様子を収めたという映像です。

映像には「是が非でもゼロ」という音声も記録されていて、撮影した男性は「取りまとめ役が記入内容を書き換えている場面」だと指摘しました。

男性に「実際に書き換えていたのか」と尋ねると「そうです。間違いなくそうだと思う。数を合わせ、タブレットに不具合がなかったとまとめ役に出すため」と証言しました。

男性によりますと修正していたとみられるのは、試験の運営者に提出する報告書の中の「試験で使ったタブレットの台数」を記入する欄です。

生徒の数より多い台数が記入されると不具合が起きたことが判明してしまうため修正したのではないかと男性は推測しています。

また、男性は「報告書は修正が容易な鉛筆で書くものなのか」と、現場での指示にも違和感を覚えたといいます。

男性は「びっくりしたが『鉛筆で書いてください』みたいなことが紙に米印で書いてあって、ボールペンで書かないようにという指示はある。最後『そういうことか』と納得した。監督の発言でも『なぜボールペンで書いているんだ!』と怒っていたところがあったので、そういうところを見ると(ボールペンで書かれてしまうと)書き換えられないからだと思った」と振り返りました。

男性は、書き換えられたのはおよそ20枚の報告書のうち5、6枚ほどで、タブレット関連だけでなく「物音がした」などの特記事項も消されていたと証言しています。

この時、担当する東京都の職員も同じ教室にいたということですが、男性は「(都の職員は)同じ部屋にはいたと思うが(取りまとめ役の様子を)全然見られない離れたところで待っていた」といい「離れた場所で何をしていたのか」とMXの記者が確認すると「ただ待っているだけ。ずさんなことは都の職員が一番分かっていると思う」と証言しました。

「運営がずさんだった」ことを示すというこの動画の提供を受け、テストを主導する東京都の担当者に取材を申し込みましたが「動画は存じ上げている。これまでも回答しておらず、取材は考えていない。都議会での質疑応答を見てほしい」と、取材には応じない考えを示しました。

これまで、都議会の文教委員会では今年のテストの不備を指摘する質問に対し、都の担当者は「試験は適切に実施された」「引き続き事業者と連携して取り組んでいく」という答えを繰り返しています。

<“隙間バイト”で試験監督 「模試だと思っていた」と証言>

今回から事業者が変更されたことで、試験の運営を巡っては他にも変化がありました。

取材する中で共通して指摘された変化の一つが“単発アルバイトの応募者が試験監督を務めた”ことです。

隙間時間にできるアルバイトの応募アプリによる募集によって、教育現場や保護者からは試験の実施前から不安の声が相次いでいました。

今回、単発のアルバイトとして実際に試験監督を担当した男性に話を聞いたところ、そもそも「入試に関する仕事とは知らなかった」と証言しました。

20代の男性は高い日給に魅力を感じて試験の3日ほど前に応募したところ、試験の前日に“マニュアルを動画で学ぶ研修”があったと振り返ります。

試験監督を務めた男性は「前日に1時間ぐらいの動画を見るだけだった。どこでも好きなタイミングで見るという感じだったので、適当に見た。運転しながらとりあえず流して見たので、全然(きちんと)見ていない」と証言しました。

男性は「マニュアルは動画だけでなく文書でも配布されたため、大体の流れは確認できた」とする一方で、当日、現場ではマニュアルにない判断を迫られる場面もあったといいます。

男性は「イレギュラーな出来事は正直多かった。マニュアルにはよくある行動だけだったので。(テストの順番を待つ)待機の時、どうしてもトイレに行きたくなったという受験生がいた。相手が中学生で、我慢して1人ずつというのもかわいそうだったので、試験中でないのであくまで静かに行ってきていいよとトイレに行かせた。それが正しかったのかどうかも分からない」と、自身の判断が正しかったのか今も分からないと話しました。

男性はそもそも、このアルバイトが入試に関するものだとは知らなかったといいます。

男性は「(アルバイトの募集には)『試験監督』と書いてあっただけで、そんなに本格的なものだと思っていなかった。せいぜい普通の模試だと思っていたが、結構がっつりだなって…」と振り返りました。応募画面に記載はなかったのかとMXの記者が尋ねると「確か、書いてなかった。ちゃんと見ないで応募したので」と答えました。

他にも、副責任者の男性がテスト当日の運営には疑問を感じたと話していたり、テスト当日に試験監督のアルバイトに申し込んだ人が立ち会いを行ったため、生徒からの質問に答えられなかったケースもあったということです。

動画でもご覧ください。

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