他国軍への支援が可能なOSA開始で日本の安全保障にも大きな変化が…日本・フィリピンで準同盟“RAA”を締結

2024.10.17(木)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜18:00~)。「New global」のコーナーでは、日本がフィリピンと締結した“RAA(円滑化協定)”について取り上げました。

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜18:00~)。「New global」のコーナーでは、日本がフィリピンと締結した“RAA(円滑化協定)”について取り上げました。

◆日本とフィリピンの間でRAAが締結

1954年、非軍事が原則の「ODA(政府開発援助)」が開始され、これまで日本はさまざまな国に支援を行ってきました。その後、2015年にODA大綱が改正され、徐々に支援の枠組みが変容。そして、2023年には「OSA(政府安全保障能力強化支援)」が開始されました。

これは他国の軍隊への支援、武器の無償供与を可能とするもので、キャスターの堀潤は「対中国を念頭に置いている色合いが強い。要はアジア太平洋地域の安全保障上の協力を日本が強固にすることで、秩序と安定を築いていきましょうということ」と解説。さらに、「これに関してはもっと国会で議論すべきだとか、国民的な議論も叫ばれたが、今はどんどん進んでいる」と言います。

そして、このOSAの支援先のひとつがフィリピンです。当国にはこれまでODAで船の供与などをしてきましたが、OSAでは沿岸警備レーダーなどが供与され、さらに今年7月には日本の自衛隊とフィリピン軍の相互往来を容易にする準同盟「RAA(円滑化協定)」を締結。これにより南シナ海でフィリピンが中国と海を巡る争いを繰り広げるなか、アメリカ・フィリピンの合同演習に自衛隊も本格参加することになります。

中国に対しては、アメリカがアジア各国と2国間同盟を結び、集団的軍事力を強化することで動きを封じ込めようとしていますが、そこには懸念点もあり、堀は「日本としても、あくまで中立的な立場で平和貢献をするという国から関わり方が変わる。海洋進出に意欲的な中国に対抗するためには、軍事的なアライアンスを強化することが(対中国家の)信頼につながるというのが政府の触れ込み」と語ります。

◆昨今の日本の外交上の懸念点

では、このRAAに対してフィリピンの方々はどう思っているのか。フィリピンの元従軍慰安婦を支援している団体「リラ・ピリピーナ」は、「日本政府はフィリピン人慰安婦やその他の戦時中の性被害者に対し、真摯に謝罪したことは一度もない。この歴史的な不正を正すため闘い続けている間に、フィリピンと日本の政府は今年7月、部隊間協力円滑化協定(RAA)を締結し、日本軍が再びフィリピンに入国できるようにした。さらにRAAはフィリピンを巨大な軍の倉庫に変えてしまう。日本が製造・販売するミサイルや破壊兵器が持ち込まれることを恐れています」とRAAの締結に抗議しています。

フィリピンで支援活動を行うNPO法人「アクセス」の森脇祐一常務理事は、「またフィリピンで戦争が起こり、フィリピンに住む人たちが戦争の犠牲になるリスクが今どんどん高まろうとしている。アメリカと中国が対立をしているのは事実かもしれないが、対立のエスカレーションの論理に乗らないことが重要だと思う」と述べています。

ここ数年で大きく変化している日本の安全保障のあり方について、「The HEADLINE」編集長の石田健さんは「バイラテラルないわゆる2国間での同盟からマルチラテラルな多国間での同盟があり、現在の国際的なトレンドは“ミニラテラル”と言われる『AUKUS(オーカス)』や『Quad(クアッド)』などのような少数の国でアライアンスを組むこと。(日本も)このトレンドに乗っているんだろうなというのが前提で、当然安全保障は1国だけで決められるものではないので、こうした国際的なトレンドに乗る必要があるとは思う。ただ、こうした枠組みをとるときに、日本は国内外への説明が少ない」と指摘します。

加えて、「例えば、安倍(晋三)さん(が首相)のときには、“自由で開かれたインド太平洋戦略”というコンセプトを出し、メッセージとして伝えていった。このプロセスが最近の政権では非常に少ない。そうすると周辺国の不信感や懸念が高まっていくので、このミニラテラルのなかで日本がどこまでそれができるのかがポイントだと思う」とも。

元衆議院議員の金子恵美さんも、石田さんの意見に同意しつつ「やはり安倍さんのときは中国包囲網という裏ミッション、狙いがあって地球儀を俯瞰する外交があった。しかし、先の総裁選のなかでも外交をどのようにやっていくのか、安全保障をどう考えているのかあまり見えなかった」と私見を述べます。

さらに金子さんは「石破さんが“アジア版NATO”とおっしゃったが、敵があっての集団防衛であり、その敵は何なのか。その辺りの説明が、昨今の外交にはないと今の指摘を聞いて思った」と率直な感想を話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤 Live Junction
放送日時:毎週月~金曜 18:00~19:00(※18:55終了の場合あり) <TOKYO MX1>
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/live-junction/
番組X(旧Twitter):@livejunctionmx
番組Instagram:@livejunction_mx

 

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