東京都が都議会に提出している「カスハラ」を防止するための条例案が、都議会の委員会で可決されました。

条例案では「何人もあらゆる場においてカスハラを行ってはならない」として、顧客や事業者などに対する責務を明記しますが、努力義務で罰則の規定は設けていません。
委員会の後、委員として出席した議員は「今後、都民にどう浸透させていくか」が重要だと指摘しています。
都民ファーストの会の白戸都議は「まず理念を示し、行動変容を促すことが、今の東京、日本に必要ではないか。まだ悪質なものがたくさん出てくるようであれば議論を重ね、罰則ということも最終的にあるかもしれないが、まずはわれわれが指針を示すことが大事なのではないか」、立憲民主党の中田都議は「一足飛びに罰則規定を付けて皆さんを縛るというのも一つかもしれないが、やはり『カスハラって駄目だよね』『ハラスメントって駄目だよね』ということを東京都として打ち出していく姿勢が大切だと思う」などと話しました。
この条例案は10月4日に行われる都議会本会議で議決されます。
<「カスハラ防止条例案」懸念の声も>
委員会で可決されたカスハラ条例案については「まだ議論が必要」といった意見も出ていて、懸念の声も上がっているようです。
共産党の藤田都議はカスハラを含めたハラスメントを防止することには賛成とした上で「何がカスハラに当たるのか」について東京都が指針を出した後にも議論を再び行う必要があると訴えています。また、夏に行われた都民からの意見募集で全ての内容が議会に共有されなかったとして、都民からの意見がどの程度反映されたのか分かっていないと指摘しました。共産党はこれらの理由から、継続して議論することを求める決議案を委員会に提出していましたが、否決されています。
9月には弁護士らが会見を行い、カスハラ防止条例案の「著しい迷惑行為」が抽象的で広範囲だとして、顧客の正当な苦情や要求を萎縮させ、権利を害する恐れがあると指摘しました。条例案の中でも「権利を不当に侵害しないよう留意」すると定めてはいますが、弁護士らは都議会での十分な議論を求めています。