『多摩格差』現状と課題は… 東京都は「23区との格差はかなりの部分で解消した」

2024.10.03(木)

10:10

東京都内の23区と多摩地域の市町村との間で、財政状況や行政サービスなどの格差が生じていることを指す「多摩格差」という言葉があります。TOKYO MXの記者が都政や多摩地域の取材を続ける中では、いまだに「多摩格差」を感じることも多いといいます。今回、多摩格差の課題やあるべき将来像について取材しました。

東京都内の23区と多摩地域の市町村との間で、財政状況や行政サービスなどの格差が生じていることを指す「多摩格差」という言葉があります。TOKYO MXの記者が都政や多摩地域の取材を続ける中では、いまだに「多摩格差」を感じることも多いといいます。今回、多摩格差の課題やあるべき将来像について取材しました。

多摩地域には、高尾山を代表とする緑豊かな山々などの自然や「住みよい街ランキング全国1位」の武蔵野市など、個性あふれる26市3町1村が広がります。しかしその一方で、23区との「差」を指摘する「多摩格差」という言葉は1975年に生まれました。この時期、高度経済成長によって多摩地域の人口が増加し、下水道や学校施設などのインフラ整備が追い付かず、東京都はこの状況を「三多摩格差」として、23区との格差の存在を認めました。

その後、長年にわたって取り組みを進め、2000年には多くの部分で「解消した」という報告書を出しています。東京都・多摩島しょ振興担当の松野利美部長は「多摩格差8課題を設定し、インフラを区部に近づけようと目標を設定した。都と市町村で一生懸命連携して取り組んで、平成12年(2000年)に『格差はかなりの部分で解消した』」と話します。

ただ、自治体の財政力を見ていくと、区市町村民税は「23区」では1兆1497億円ある一方で「市町村」は3828億円、自治体の貯金に当たる財政調整基金の残高は「23区」が8262億円あるのに対し「市町村」は1735億円と、その差は歴然としています。

自治体の財政問題のため取材したのは、埼玉県との都県境にある人口約15万人の東村山市です。東村山市民に話を聞くと「多摩ならではの子育てのしやすさはあまり浮かばない」といい「東村山で産める病院がなくて、ちょっと困った。タクシー代を出すとか、市としての支援があると2人目・3人目が考えやすい」(子を持つ女性)、「駅前まで出てこないと買い物ができない。ちょっと出れば買い物ができるといいなと思う」「バスも交通もそうだが、電車が走っていてもどこに行くにも遠い」などといった意見も聞かれました。

東村山市の渡部市長に直撃すると、厳しい財政状況による市政運営の難しさという本音を聞き出すことができました。渡部市長は「財政構造上、歳入が上がってこない街。多くの行政課題に持続可能な形で対処していくのがやはり非常に難しいところ。財政基盤をしっかりさせるのも大きな課題」と語りました。

そして少子高齢化が進みこれからも厳しい財政が続くことが予想される中、今後の鍵は自治体として自立していくことだとして、「人生の大半をそのエリアでカバーできることが求められる。それによって自立性の高い地域づくり、それぞれの自治体が個性を発揮しながら進めていくというのがこれから重要になる」と指摘しました。

<“多摩格差”東京都は「解消」 今後の課題は?>

「三多摩格差8課題」は、「教育施設」「公共下水道」「病院・診療所」「道路」「図書館」「保育料」など8つの課題が挙げられ、東京都は「ほぼ解消した」としています。しかしTOKYO MXの記者が取材をしていると、都バスなど「地域の交通」や、「体育館の空調」「ごみ袋の有料化」「公共施設の改修」なども気になる点だといいます。

近年、「多摩格差」という言葉を積極的に使ってきたのは小池知事です。2016年の知事選の際、当時、候補だった小池知事は公約の一つとして「多摩格差ゼロ」を掲げていました。

「格差解消がどう進んでいるか」について定例会見で小池知事に聞いてみると「八王子に産業交流拠点を整備し、多摩モノレールの延伸はまさに今“ING形”。これまでの市町村総合交付金はこの8年間で約130億円増額して、計620億円。課題には丁寧に対応し、多摩地域の持続的な発展に取り組んでいきたい」と述べ、自治体の振興のための交付金=「市町村総合交付金」を増額したことや、給食費無償化の補助を拡大したことなど、格差解消の実績を訴えました。

少子高齢化が進むことで、多摩地域の自治体は今後、厳しいかじ取りが必要となっていくことが予想されます。支援には小池知事の言う「実情に合わせた丁寧な対応」が重要となっていきそうです。

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