紆余曲折を経てきた東京・中野駅前の「中野サンプラザ」跡地の再開発計画に再び“暗雲”です。建設費の高騰によって工事費が900億円以上増える見込みが明らかとなり、予定されている2029年度の完成が遅れるだけでなく、計画自体を見直す可能性も出てきました。

“中野のランドマーク”として半世紀にわたって親しまれた中野サンプラザは、2023年7月に閉館しました。建物は解体に向けて工事用のフェンスに囲まれていますが、1年以上たった今も、いまだに解体作業は始まっていません。
中野区は解体後の跡地に最大7000人を収容する大ホールを備えた複合施設を建設する再開発を進めていて、事業費は2024年1月の時点で2639億円を見込んでいました。しかし、9月に入ってから施工する野村不動産が区の担当者に、人件費や建設費の高騰のため「工事費が900億円以上増える」見込みを伝えたということです。
事業費の大幅な増額に、中野区民からは「ちょっと費用がかかり過ぎ。区民全体が、建てたことによって生活が楽になればいいが…」(70代男性)、「将来、若い人たちに引き継いでいくならしょうがない」(80代男性)、「冗談じゃない。これだけで十分じゃないか。負担をかけるようなことはしてもらいたくない」(100歳女性)などさまざまな声が聞かれました。
野村不動産は「今年度の着工は難しい」という見解を示しているため、計画していた2029年度中の完成も困難となる見通しです。さらに完成の遅れだけでなく、中野区の担当者は「計画の見直しが必要なのは間違いない」と説明していて、今後、施工業者らと計画を精査していく考えです。
<サンプラザ跡地再開発 事業計画の見直しも>
工事費の大幅な増加見込みが明らかになった中野駅前の再開発計画について詳しくみてみます。
中野駅前の再開発で目玉となっているのは、2023年7月に閉館した「中野サンプラザ」跡地に建設される「NAKANOサンプラザシティ」です。地上61階・高さ262メートルの高層ビルが建ち、商業施設や最大7000人が収容できる大ホール、そしてホテルやマンション、オフィスなどが入る複合施設ができる計画です。半世紀にわたって親しまれた中野サンプラザ跡地にできるということもあり、区民以外の関心も高まっていますが、その事業費も年々高くなっています。
事業計画が提案された時は1810億円でしたが、人件費や資材の高騰などで2022年12月には2250億円の見込みとなりました。さらに2023年11月には2500億円、2024年1月には2639億円まで事業費が膨らんでいました。そして今回、施工者である野村不動産が中野区に対し「工事費がさらに900億円以上増える」と伝えてきたということで、事業費は3539億円になる可能性が出てきたということです。もし900億円増えた場合、見込まれる費用は当初の2倍ほどになります。
中野区はこの再開発に約430億円の補助金を支出する予定ですが、現時点では補助金の増減については「未定」としています。また、費用の増加により、施設の完成予定についても先が見通せない状況となっています。当初は2028年度末の予定でしたが、建設費の増加に伴う計画の見直しなどで2029年度末になり、今回の増額の可能性を受けて中野区は「2029年度末の完成は極めて困難な状況になった」と説明しています。さらに区の担当者は「事業計画の見直しは避けられない」と、計画自体の見直しの可能性にも言及していて、今年度中を予定していた中野サンプラザの解体など、今後、さまざまな面での影響が出ることが懸念されます。