岸田首相が9月に行われる自民党総裁選挙に立候補しないと表明しました。派閥の裏金事件の責任を取る形で、次の総裁が決まり次第、首相を退任することになります。
岸田首相は8月14日昼前に会見し「自民党が変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は、私が身を引くこと。私は来る総裁選には出馬致しません」と述べ、自民党が変わることを示す最も分かりやすい方法として9月に行われる自民党総裁選に立候補しないことを表明しました。派閥裏金事件の責任を取る形での決断となりました。これで、3年弱続いた岸田政権は秋に退陣します。
岸田首相が就任したのは2021年10月のコロナ禍でした。就任後の所信表明演説では「私が目指すのは“新しい資本主義”の実現。成長も分配も実現するためにあらゆる政策を総動員する」と述べ、直後の衆院選で絶対安定多数の261議席を確保したほか、翌年の参院選でも大勝を収めました。一方で、その選挙期間中には安倍晋三元首相の銃撃事件が発生しました。国葬の是非を巡って世論が分かれたほか、事件をきっかけに自民党議員らと旧統一教会との関係が発覚し批判を浴びました。
得意とする外交面では2023年5月に地元・広島でG7サミットを開催し、各国のリーダーに「核なき世界」に向けた国際協調を訴えました。しかし2023年秋には自民党派閥の裏金事件が発覚して閣僚らが辞任に追い込まれたほか、現職の国会議員らが立件される事態となりました。いわゆる「政治とカネ」の問題です。
総裁選不出馬を表明した14日の会見で岸田首相は「政治資金規正法の改正など、課題への対応や再発防止を講じることが総理総裁としての私の責任であるという思いで信念を持って臨んできた。組織の長として責任を取ることにいささかのちゅうちょもない」と述べました。
突然の総裁選不出馬の発表を受け、東京・銀座では号外が配られました。号外を受け取った人からは「どこかで来るかなとは思っていたが、このタイミングかという感じ」、「結局、政治とカネの問題が解決できていないままだったので、そこは最後しっかりしてほしかった」、「次に誰が(総裁に)なるかというのがぱっと出てこないので、日本の不安はある」などといった声も聞かれました。
岸田首相はこの日の会見で、後任の総裁について言及を避けました。自民党の今後については「新総裁の下で一致団結、政策力、実行力に基づいた真のドリームチームを作ってもらい、そして何よりも大切なことは、国民の共感を得られる政治を実現することにある」と語りました。
<“総裁選不出馬”背景に2つの不安? 鈴木哲夫さんに聞く>
岸田首相の総裁選不出馬についてTOKYO MX news FLAGコメンテーターでジャーナリストの鈴木哲夫さんはこのタイミングで表明した理由として「2つの不安が生まれたからではないか」と分析しています。
1つは「経済の不安」です。先週までの株の乱高下などで経済の先行きが不透明となり、岸田首相が外交と共に自信を持って進めてきた経済の今後に不安を感じたことが不出馬の判断に影響したのではないかとみています。そしてもう1つが「総裁選の不安」です。内閣支持率の低迷が続く中、麻生派や茂木敏充幹事長を中心としたグループなど党内の票を取り込めるか見通しが立たなかったことも影響しているとみています。岸田内閣の支持率は就任当初は5割を超えていましたが、直近では裏金事件が発覚した2023年11月から9カ月連続で3割を切り、7月の調査では24.6%と低迷が続いていました(共同通信調べ)。
岸田内閣への不信が続いた中、次の総裁に求められるものは何か鈴木さんに聞くと「今までは顔を変えただけで乗り切ってきたが、次はそうはいかないだろう。自民党への不信感も高まっていることから、自民党を根本的に変えられる人物が求められる」と話しています。今後、ポスト岸田を巡る動きは激しさを増しそうです。
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