TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、就活の際に増加している“オヤカク”について議論しました。

◆今の就活に“オヤカク”はつきもの!?
近年、就活は学生優位の売り手市場となっていますが、そのなかで問題になっているのが、“オヤカク”。これは企業が内定を出した学生に対し、入社について親の承諾を得ているのか確認する、もしくは親に入社承諾の確認などを行うことです。その背景には親からの反対で内定を辞退されてしまう「親ブロック」の増加があり、特に中小企業に多いそうです。
まずは“オヤカク”は「あり」か「なし」か、コメンテーター陣に聞いてみると、キャスターの堀潤、株式会社ABABA代表の久保駿貴さん、コラムニストの河崎環さんは「あり」。キャスターの豊崎由里絵と環境アーティビストの黒部睦さんは「なし」でした。
2児の母である河崎さんは、自身が過保護であることを認めた上で、過保護になる理由に“少子化”を挙げ、「子どもの数が少ないと親が子どもに注ぐことができる時間と経済が増え、そうなると“投資”みたいな感覚が出てくる。それゆえに親が(子どもに)入れ込んでしまう。都市部は特にこの傾向が強い」と持論を述べます。
株式会社ABABA代表の久保駿貴さんは、この傾向に関して「本人の意思決定が理想だが、今はオヤカクも仕方ない」、「親が積極的に介入してくるというより、親の介入を学生も了承し、むしろそれを求めている」と私見を語った上で、「会社のことを親にも知ってもらい、親も一緒に応援してくれたら会社としても嬉しいし、学生も会社に入ってからのモチベーションが上がるのではないか」とオヤカクのメリットを挙げます。
そして、堀は「大企業でも人をコストと見做してきた。採用にコストをかけないといけなくなったのも自業自得。(オヤカクで)どんどん企業への監視の目を光らせ、(企業を)変えていってほしいので『あり』」とまた別の視点からオヤカクを肯定します。
一方、黒部さんは「なし」とした理由に、例えば、親と不仲の学生、ハラスメントを受けている学生が自立のため就職しようとするも、オヤカクによって不利益を被る可能性を懸念。「そうしたところまで考慮できないようであればオヤカクは良くない」と訴え、さらには「親が子どもの就職先を気にする・しないと、企業が親の意見で内定を決める・決めないは別。企業側は家庭環境などを判断軸にしてはいけない」とも。
また、黒部さん同様「なし」とした豊崎は、就活のときに実母と意見が分かれたことを告白。そして、結果的に自身が希望する会社に就職し、後悔はしていないと言います。「自分で決めて選んだ道で失敗しないほうがいいけれど、失敗したっていいと思う。失敗して次に向かうことが素晴らしいかもしれない。それに、当時は長い目で見てほしいと思ったので『なし』」と自身の経験を踏まえて語ります。
◆オヤカクのメリット、デメリットは?
街頭で子どもを持つ親に話を聞いてみると「やはり心配なところはある」、「ある程度、安定したところに就職してほしい」、「過干渉、親のエゴ」、「自分の人生は自分で決めるべき」など賛否両論ありました。
河崎さんは双方の意見を慮りつつ、何より親子間のコミュニケーションの重要性を主張。その上で、「キャリアを決めることについて成人が(親ブロックを)言い訳にしてはいけないし、本当は子ども自身も企業も自分で決めてほしい」と子どものことが心配ながら、それぞれが独立した存在であることを望みます。
企業への採用戦略のコンサルティングなどを行うアローリンクの蘓さんによると、オヤカクのメリットは、内定承諾後の辞退の防止。加えて、入社後の働き方の検討材料になること。例えば、転勤や配属先が実家より遠い場所になると一人暮らし経験のない学生やその親は不安要素が大きくなるため働き方を考慮する材料になるそうです。
一方、デメリットは、学生からの信頼感の低下。そしてもうひとつは、一度親との接点ができてしまうと、入社後も親からの意見や連絡が来ることに繋がりかねないと危惧します。
オヤカクに対しては企業側もさまざまな対策を実施しており、例えば、千代田区にある「アシスト」では、内定者とその家族を招待し、会社の様子を見て回るツアーや仕事内容や会社の業績、今後の方針などの説明会、さらには役員も含めた懇親会をおこなっています。
これを久保さんは「ファンづくりの一環」と高く評価。そして、企業が家族を重視する背景に関して言及。「社会的にコロナの影響が大きいと思う。これまで意思決定をするときには経験や体験をもとにしていたが、コロナになってOB訪問など何もできないなかで就活だけ進む。自分のことを一番理解してくれている親に意見を求めるのは自然の流れ」と語ると、河崎さんも「もう1回家族主義的なところに戻ってきた」と言います。
◆親は子どもの就職にどこまで関わるべきか?
最後に今回の議論を踏まえ、子どもの就職に親はどこまで関わるべきかコメンテーター陣が提言を発表。
黒部さんは企業側に対し、親との関係が就活生にとって“不利益・プレッシャーにならないように工夫すること”を望みます。
久保さんは、「(親が就職に)関わるべき論ではなく、関わってしまうものだと思うので、そこで最後に本人の意思を尊重してあげたり、後押ししてあげるような親が増えると企業とのよりよい関わり方ができると思う」と親に向けて要望。
河崎さんは、「自分で意思決定できる状態が最もいい状態で、それは社会が成熟していることだと思うが、これができていないからブラック企業に対して親が監視した方がいいとなる。企業も学生も親もそれぞれが成熟していれば、理想は親の出る幕なんか(1mmも)ない」と主張します。
豊崎は「親と子どもは別人格。親がいいと思った企業が子どもにもいいとは限らないので、これを自分に言い聞かせて子育てをしていきたい」と考えを述べます。
堀は、過去に過労死やパワハラなどで命を失った方々を惜しみ、「(そうした方々の)親御さんは“なぜ”と苦しんでいるが、より苦しむべきは会社。(会社は)最大限の努力をして働きやすさの改善をやりきってほしい。親だろうとなんだろうと(会社はそれを)ちゃんとやっているのか言うべき」と会社の変革を訴えていました。
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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag