世界を見ると民主主義の考え方は圧倒的少数…フランスから考える民主主義のあり方

2024.07.30(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、フランス総選挙から鑑みる民主主義のあり方について取り上げました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、フランス総選挙から鑑みる民主主義のあり方について取り上げました。

◆フランス総選挙、極右が失速した理由とは?

先日、フランスで総選挙がおこなわれ、移民問題に厳しい姿勢を示す極右政党「国民連合」は1回目の投票で過半数を獲得する勢いだったものの、2回目の決戦投票で失速。左派が逆転勝利を収めました。ただし、左派連合、第二党の与党連合ともに主導権を握る議席数を獲得するには至らず、フランスの政治の不安定さが注目されています。

今回のフランス総選挙の投票率は約66%。とりわけ決選投票は約71%と跳ね上がりましたが、キャスターの堀潤は、「やはり極右に振れることに対し、フランスの多岐にわたる方々がフランス革命の精神にまで遡り、自分たちが大切にしなければならない人権、フランスらしさとは何かが問われた結果、票を分け合う結果となった」と総括します。

では、なぜ極右が失速したのか。今回は日本とフランスの両方で弁護士資格を持つ金塚彩乃さんに話を伺いました。

まず金塚さんは、「2回目の決戦投票が重要で、それを支えたのが市民社会の反応。市民社会が何を言っていたのかといえば“自由”と“平等”。国民連合に(与党に)なると自由も平等も守られなくなる」と言います。

とりわけ“平等”については、「外国人の権利という意味で主張し、面白いのは“ソシアル=国民的連帯”という考えに繋がり、日本だと“国民=日本国籍の人”となるところ、フランスは外国人も含め、(国内に)住んでいれば国民連帯で助けなければいけないとなる」と語り、さらには、「あとは民主主義、法治国家」とフランス市民社会には“自由と平等”、“ソシアル”、“民主主義”、“法治国家”の4本柱があることを示唆。

一方で、極右政党が掲げる政策は“自国民優先”、さらには“二重国籍者の公職就職制限”です。市民社会はこれがフランス憲法に反するとし、“自由”と“法の支配”を守らないといけないとさまざまな声明や警告を表明。

「例えば、パリ弁護士会は法と自由の敵に何も残さないようにして共和制とヒューマニズムの価値を守り続けるとし、パリ司法裁判所副所長はフランスの裁判官は人権尊重と法の支配の保護とは切り離せない自由の守護者であることを忘れない、それを国民に伝えなくてはならないと見解を出した。歴史家もフランスは歴史に背けてはならない、軍事的敗北や外国による占領の混乱期に立ち戻ってはいけない、戻るべきところは1789年以来築き上げてきたものだと声明を出している。フランス革命に立ち戻り、この選挙は民主主義と共和制を敵から守り、私たちの歴史に恥じないようにすべき、国民連合候補を打ち負かすべく投票を呼びかけていた」と金塚さんは解説します。

また、金塚さんは、「立ち返るべき価値がないのが日本の政治の舞台の問題」と日本の政治についても言及。「いろいろな見解の違いがあっても、ここだけは守るというものが私たちにあるのかというと多分ない」と信念のなさを案じていました。

◆フランス総選挙の結果は民主主義の希望

今回のフランス総選挙について、堀は「例えば、元サッカー選手の(ジネディーヌ)ジダンや俳優のジャン・レノも二重国籍で、フランスを支えてきたのはこうした多様なバックグラウンドを持つ人々じゃないかといったキャンペーンもおこなわれていた」と補足しつつ、さらには、「興味深かったのは、海外に住んでいるフランス人の投票というのもあって、それは世界に散らばるフランス人たちの権利を支えようとか、内外含めてボーダレスに人権を捉えていた」と感心します。

そんなフランスに対し、ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは「ドイツも今月から二重国籍を導入した。以前はEU圏だけだったが、全ての国に対して。(そういう意味では)フランスはいつも(ドイツの)一歩前を進んでいる革命の国という感じがある」と素直な思いを吐露。

元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんは、「(フランスの)裁判所はかつて法服貴族と言われ、支配階級だった。それが革命で共和制が導入され、そのなかで自由、民主、そして法の支配を守る役割を担っている」と歴史をなぞる傍ら、「180近くある国連加盟国のなかで、自由、民主、法の支配が共存しているのは30弱しかない。実は私たちの考え方は圧倒的に少数。なので、フランスがここで踏みとどまったのは非常に大きなこと」と今回のフランス総選挙の意義を語ります。

また、microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、左派逆転という結果を希望と言います。「アメリカを見てもそうだが、自国民を保護したり、優先している。しかし、地球という観点で見たときに、人類の幸福を考えたら自分が居やすい場所で最適な人生を送れるのが幸せであり、その手段として二重国籍というものがあったり、移民・移住の自由がある世界がベスト。そこに対しての権利が守られた結果がこの表れで、社会不安のなかでのこの結果は、“希望”と見ていいと思う」と前向きに捉えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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