TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、昨今激増している“SNS型投資詐欺”について、専門家を交えて議論しました。
◆投資ブームの裏に巧妙な落とし穴あり!
空前の投資ブームが巻き起こる一方で“投資詐欺”が増加しています。警察庁が公開したデータによると、去年のSNS型投資詐欺とロマンス詐欺による被害額の合計は455億円。特殊詐欺の被害額441億円を上回りました。警察庁の幹部は、ネット上で投資できる環境の拡大や投資ブームが被害急増の背景としています。
電話などで親族を名乗り、還付金などの名目で信じ込ませ、金を騙し取る“特殊詐欺”に対し、“SNS型投資詐欺”は著名人などの名前や写真を勝手に広告に使うことで相手を信用させ、SNSに誘導し儲け話をして金を騙し取ります。また、“ロマンス詐欺”は、SNSで接触した相手に恋愛感情を抱かせ、金を騙し取る手法です。
この現状を元警視庁刑事の吉川祐二さんは、「SNSを使うことで(詐欺の)間口が広くなってきている。犯罪者側は今、多種多様な手口を作ることができる」と分析し、「なので今後も(SNS型投資詐欺は)増えていく」と断言。対策の強化を訴えます。
microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、昨今、SNSの偽アカウント作りや媒体によっては広告出稿が簡単に行えることから「詐欺がやりやすくなった環境にある」と指摘。そして、「新しいインターネットサービスは、最初はとりあえずサービスを立ち上げたいから(規制を)緩くしてスタートすることが多い。ユーザーを増やしてから規制していく流れがある。そうしたネット環境の発達に伴い、詐欺が増えているのではないか」とSNS型投資詐欺増加の背景を推察します。
実際に詐欺にあった70代男性に話を聞いてみると、きっかけはFacebookの広告をクリックしたことで、その後、約30人のLINEグループに加入させられ、偽の著名投資家から投資を呼びかけられたとか。そして、そのLINEグループでは実際に儲かった体験談の書き込みや虚偽のグラフの投稿が多数あり、それを信じてお金を入金してしまったそうです。
一般の方が騙されるポイントとしては、「著名人の名前を騙る」、「サクラの存在」、「偽サイトのグラフ・データ」と言われていますが、こうした手口、システマチックな犯罪から、吉川さんは最近の詐欺グループは会社組織の形式になっていると言います。
また、実際に詐欺で自身の名を悪用された経験のある経済ジャーナリストの荻原博子さんは、「私はSNSをやっていないのにいくつも(自身の名前を名乗る)アカウントがあり、無断で写真を使われている。弁護士に頼んで削除してもらっているが、追いつかない」と悲嘆。
荻原さん同様、詐欺の広告塔に使われたというジャーナリストで海洋冒険家の辛坊治郎さんは、「世の中にはそんな甘い話があるわけないと普通は思う。ところが、何千万円も受け取りながら税金も申告せず懐に入れる人もいる。そういうニュースを見ていると『俺もそういうのに預かりたい』と思ってしまう」と被害者の胸中を慮りつつ、「ただ、世の中においしい話はない。もしもそういうものがあったら人に教えずに自分でやる」とも。
なお、去年1年間の特殊詐欺の被害額は441億円。一方、SNS型投資詐欺とロマンス詐欺による被害額の合計は455億円ですが、被害件数は前者の約1万9,000件と比べ、後者は合計でも3,800件程度。吉川さんは「犯罪者側もひとつの詐欺を行うことで得る利益が後者のほうが多い」とSNS型投資詐欺増加の要因を分析します。
◆中高年は狙われやすい!? 詐欺に遭いやすい人の傾向
では、なぜ騙されてしまうのか。犯罪心理に詳しい東京未来大学 こども心理学部長・出口保行教授に話を聞いてみると、「SNSが世の中で浸透してきている、こうした詐欺が世間で起きていることを知らない人はいないと思うものの、自分がまさか引っかかると思っていない人がほとんど。(詐欺は)あくまで架空の世界のこと、自分に危機があることを想定していないので取り込まれてしまう」と言います。また、「犯罪をする側も自分たちの匿名性が非常に高いなかで犯罪行為に取り掛かれる。それは犯罪者側に非常に有利に働いている」と現状を示唆。
加えて、「NISAをはじめ、投資に関して国民が非常に強い興味を持ってきた。身近になってきたことを悪用する詐欺が出てきている」と語り、「若年層はそんなに自由になるお金がない。投資すると言っても少額。しかし、中高年になると投資に回せるお金がある」と中高年がターゲットになりやすいと警鐘を鳴らします。
さらに、吉川さんは騙されやすい人の傾向として、「客観的に自分のことが見られない人」、「悩みを抱えている人」、「相談できる人が周囲にいない人」、「デジタルに不慣れだがSNSをやってみたい、SNSをやることがステータスになると思っている人」を挙げた上で、注意喚起。
SNS型投資詐欺については、その舞台となるSNSのプラットフォーム側の対応に実業家の堀江貴文さんや前澤友作さんが苦言を呈しています。また、オーストラリアやマレーシアなど当局が法的措置をとっている国もあり、渋谷さんはこうした国の対応を称え、「日本も絶対にやるべき!」と力を込めます。
一方、個人でできる対策として、SNSのリテラシーを高めていくことも重要です。有効的な手段としては「安易に友達承認をしない」、「友達リストを非公開にし、公開範囲を友人に限定する」、「アカウントと連携するアプリは簡単に承認しない」といったことがあります。
◆SNS投資型猜疑に騙されないようにするためには?
最後に、今回の議論を踏まえて「SNS型投資詐欺で騙されないために必要なこと」をコメンテーター陣が発表。
microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、“プラットフォーム側の規制”と“賢くなること”。「プラットフォーム側は規制を強めても裏ではアカウントを借りてきて広告を配信するなどいろいろあるので、そうしたところまで含めての規制」とより強固な対策を求めるとともに、各々のリテラシー強化を切望。「最後は自分たちが賢くなるしかない。自分でわからないものは、投資しない」と注意を促します。
荻原さんの意見は、シンプルに“お金を払わない”。「どんな詐欺でもそうだが、最後にお金を払わせる。これが一番危険で、『お金を払え=詐欺』と思ったほうがいい」とアドバイス。そして、キャスターの堀潤の代演・キャスターの荘口彰久さんは“おいしい話はない”、辛坊さんも「デジタル時代になっても人間なんて対して変わらない。昔からの格言“人を見たら泥棒だと思え”」と甘い話に乗らないよう忠告します。
最後に吉川さんは、“インターネットを利用して詐欺が横行していることをしっかりと理解認識しておく”、“一人で抱え込まない”と提言。「まずは理解、認識を改めること。自分にはないと思わないこと」と釘を刺し、「絶対に一人で抱え込まない。どんな些細な被害でも、その前に何か前兆を感じたら必ず警察に相談すること。そうすれば自分を守ることに繋がるし、相談リストにも乗る。警察は敷居が高くないですから」と話していました。
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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag
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