大型プール施設はにぎわうも…多摩地域で公営プールの中止相次ぐ

2024.07.25(木)

10:00

夏真っ盛りとなり、東京都内にある大型のプール施設は連日多くの客でにぎわいを見せています。しかし多摩地域の公営プールは、老朽化や少子化などのため中止が相次ぐ事態となっています。

夏真っ盛りとなり、東京都内にある大型のプール施設は連日多くの客でにぎわいを見せています。しかし多摩地域の公営プールは、老朽化や少子化などのため中止が相次ぐ事態となっています。

国内最大級の流れるプールがあるあきる野市の東京サマーランドでは、きょうも夏休みの子どもたちなど多くの人でにぎわいました。猛暑が続く中、こうした民間のプールに多くの人が詰めかける一方で、多摩地域の公営プールでは異変が起きています。

東村山市が運営する運動公園プールは毎年7月中旬から8月末まで開かれていましたが、2024年3月に廃止が決定しました。

その理由は「設備の老朽化」と「利用者の減少」です。東村山市によりますと利用者数は最も多い時で年間10万人ほどでしたが、近年は1万人程度にまで減っていたということです。また、運営費を調査したところ、これからの30年間で9億円以上がかかるという試算が出たため、費用対効果を考え、プールを閉鎖する決断に至りました。東村山市の渡部市長は2月の会見で「適切なビルドとスクラップを組み合わせることで、街の価値を上げつつ、財政の持続可能性を維持・強化していきたい」と述べました。

市民の憩いの場だったプールの閉鎖に、近隣住民からは「みんな楽しんでいた。子どももお世話になったから、なんとも言えない」「(利用客が)減ってきていた。だけど、本当はあった方がいい。廃止廃止と言っているが、維持費がなかなか大変なのではないか」などといった声も聞かれ、元・東村山市民という人は「ショック。ここで生まれ育って入ってきたので、子どもも生まれて行かせたかったが残念」と話していました。

こうした公営プール閉鎖の波はいま、多摩地域に押し寄せています。TOKYO MXが調べたところ、多摩26市のうち、老朽化などの理由から一部の市民プールを中止しているのは、東村山市のほかにも八王子市・昭島市・調布市・小平市・清瀬市・羽村市・あきる野市の7つの自治体がありました。

こうした現状に、自治体の財政に詳しい専門家は「地域の人口減少」を主な要因に挙げています。デロイトトーマツグループ・パートナーの小室将雄さんは「公営プール自体、1970年代・80年代に建設されたものが多く、古くなっている。その中で人口減少などもあり利用者も減ってきている中で、今後の必要性や在り方を検討する時期に来ているのでは」と話しています。また、自治体が今後のプール運営を考える上で「施設の安全性と限られた財政とのバランスをどう取るかが課題」だと指摘しています。

<閉鎖相次ぐ公営プール 原因と対策は?>

公営プールの廃止は多摩地域だけでなく、全国でも起こっています。総務省がまとめた資料によりますと、全国の公営プールの数は2010年には4006カ所ありましたが、2020年には3426カ所となり、10年間で580ものプールがなくなっています。

その原因となっている問題の一つが「施設の老朽化」です。公共施設のマネジメントに詳しいデロイトトーマツグループ・パートナーの小室さんによりますと、施設を継続するには給水設備や電気設備の更新だけでなくプール本体の大規模改修も必要となり、多額の費用がかかるため、小さい自治体ほど改修に踏み切れず廃止しているといいます。さらに、そこに追い打ちをかけているのが「少子化」です。利用者は今も減少していて、今後も減少が見込まれる中、多額の費用がかかるプールを継続する判断をするのは難しいとしています。

ただ、こうした中でも公営プールの存続を実現した例があります。その自治体は茨城県の鹿嶋市です。ここでは複数の市営プールと小学校や中学校などの学校用プールを統合し、夏の平日は学校の授業で使用し、それ以外は市民に開放する形で公営プールの存続を実現しました。小室さんは「今後は自治体ごとの実情に合った公営プールの在り方を検討する必要がある」と話しています。

 

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