TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、世界で増加している“気候変動訴訟”について取り上げました。

◆サウジアラビアで日陰の気温が51.8度!?
イスラム教最大の聖地サウジアラビア西部のメッカでおこなわれた大巡礼で、6月20日までに750人を超える死者が出ています。巡礼は14日に始まりましたが、メッカの6月17日の気温は日陰でも51.8度。多くの巡礼者が熱中症に罹ったと見られています。
サウジアラビア巡礼省によると、今年は国内外から180万人以上が参加。巡礼の時期は太陰暦によって決まり、2040年代にはサウジアラビアの夏のピークと重なると言われています。去年は2,000人以上が暑さによって体調を崩しており、今後地球温暖化が進むにつれて、状況はさらに悪化すると予想されています。
こうした猛暑をはじめ近年、世界各地で豪雨やかんばつなどの問題が続発。そうしたなか、気候変動に対し“訴訟”という形で声を上げるムーブメントが拡大しています。実際、訴訟件数は2017年の884件から2022年は2,180件。5年間で2.5倍となっています。
その背景にあるのは、2022年に国連総会が清潔で健康的かつ持続可能な環境への権利を人権として認めたこと。気候変動による環境変化に対し、国や企業は相応の対策をとる責任があるとしています。
ここで臨床心理士のみたらし加奈さんは、気候変動とメンタルヘルスの因果関係に言及。あまり知られていませんが、気候変動はメンタルヘルスに大きく影響しているそうで、「アメリカで200万人を対象とした調査で(気候変動は)明らかにメンタル不調に直結し、降水量が多かったり、気温が高いことがメンタルヘルスの不調に関わっている。(気候変動が)体の健康だけでなく心の健康にも直接影響をすることをもう少し知ってほしい」と視聴者に呼びかけます。
◆日本でも気候変動訴訟の動きが
気候変動訴訟の動きは日本でもあり、市民団体「気候訴訟ジャパン」は6月、気候変動による猛暑や豪雨で被害を受けるのは人権侵害だと日弁連に対して人権救済を申し立てました。気候変動を理由とする申し立ては国内初です。
また、政府や裁判所に対しての勧告要請もおこなわれています。気候変動への強固で具体的な政策や法整備、さらには訴訟を起こすには事件の成立が不可避なため、被害を人権侵害と認定することや原告になる資格を認めるよう求めており、例えば、不作にあった農家やサンゴ白化を目撃したダイバー、子どもを外で遊ばせられない住民など幅広く当事者として認定するよう訴えています。
世界では、すでに気候変動訴訟に関する判決も出ています。例えば、オランダでは2019年に環境NGOが音質効果ガス削減目標の引き上げを求め勝訴。政府は2020年末までに1990年比で25%削減を命じられています。また、ドイツでは2021年に若者グループが、削減策が不十分で人権侵害であると主張し勝訴。政府は温室効果ガス排出ゼロ目標を5年前倒すなど対策を施しています。さらに今年、スイスでは政府の対策が不十分で生活の質が脅かされたと訴え、欧州人権裁判所が原告の訴えを認めています。
総じて、落語家の林家三平さんは、「公助という意味では(訴訟も)必要かもしれない。そして自助、自分自身でも、例えば保険に入るなりし自分を助けないといけない、そういう考え方に変える転機がきているのではないか」と所感を述べます。
一方、キャスターの豊崎由里絵は、「気候変動を食い止めるために自分ができることを考えると、節電とかどうしても小さくなりがちだと思っていたけど、こういうやり方があるんだなと思った」と感心しつつ、「あらゆる切り口から考えていかないといけないし、(気候変動対策は)やったほうがいいことではなく、やらなくてはいけないこと」と再確認。
なお、キャスターの堀潤によると、民間企業に対しては株主総会などで訴えていくという動きも広がりつつあるそうです。
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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag