本格的な夏休みシーズンを迎える中、東西を結ぶ交通の要がストップしました。東海道新幹線は7月22日、保守用の車同士の衝突により脱線した影響で、始発から一部区間で運転を見合わせました。

7月22日午前3時40分ごろ、東海道新幹線の豊橋駅と三河安城駅の間の上り線で、保守用の車両同士が衝突し、脱線しました。JR東海によりますと、作業員2人が負傷しましたが、命に別条はないということです。
この脱線の影響により、東海道新幹線は、始発から浜松駅と名古屋駅の間で、運転を見合わせ、東京駅と浜松駅の間と、名古屋駅と新大阪駅の間の上下線で、それぞれ1時間当たり2本程度の運行となりました。
本格的な夏休みシーズンを迎えたこともあり、東京駅では足止めされた乗客らで混雑しました。
記者:「一部運転見合わせが始まってから10時間以上経ちましたが、未だ多くの人がチケットの変更のために並んでいます」
足止めされた乗客:「3時の新幹線で帰ろうと思って来たらもうパニック状態で。明日に変更しないといけないと言われ、東京駅が全然交換できる状態でなかったので、お茶の水駅までひとりで行って交換した」「4時の新幹線を取っているが動かないのでどうしようかなと思って。明日朝一から仕事があるので、間に合って帰らなければいけない。何とか帰りたいんです」
フィリピンからの観光客:「午後1時に出て新幹線で京都に行くつもりだった。明日の朝東京を出るまで1泊分、東京でホテルを探さなければいけない」
東海道新幹線の運転見合わせを受け、全日空と日本航空は、羽田空港と大阪の伊丹空港を結ぶ臨時便を出しました。
記者:「臨時便ですがまだパネルに反映されず、パネルを確認する人の姿が目立ちます」
臨時便を予約した人:「朝7時くらいに新幹線の乗り場に行き昼まで待っていた。(新幹線の)迂回ルートも考えたが、どないもこないも埒が開かず、東京にいる友達に飛行機取ってもらって助かった」「明日仕事なので今日行かないと間に合わない。きょう運休、動かないと聞いたので早めに行こうと来ました」「朝ホテルで起きたらこんなことになっていて、慌てて調べたらANAが緊急で便増やしていたニュースを見たので取った。何とか今日中に帰れるのでまあ何とかなったかなと」
今回の事故による影響について、専門家からは日本のインフラの弱い部分が出たと指摘しています。
鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは「日本の鉄道は安全運行という面では優秀だが、列車1本当たりの移動人数が多いので、一度災害やトラブルが起こると他の乗り物で代わりがきかない」と話しています。
事故のあった東海道新幹線の1日の輸送人数は約46万人。また梅原さんによりますと新幹線が1回に運ぶ輸送人数は約1300人で、例えばこれを全て航空機で運ぶとなれば、輸送人数を最大級の400人としても3便以上が必要となり、とても現実的ではないと言います。
そこで今、期待されているのが、リニア中央新幹線。もう一つの東西を結ぶ交通の要の誕生です。当初予定していた2027年の開業は断念されましたが、工事再開に向けJR東海と静岡県・山梨県の3者で合意され、開業に向け前進しています。時速500キロという未来のインフラを確保することによって梅原さんは「インフラ二重化の実現だけでなく高速輸送による慢性的な混雑解消にも期待できる」と話しています。開業延期以降まだ詳しい開業の時期は発表さていませんが、その動向が注目されます。