高齢者の5人に1人が患う恐れがある「認知症」を巡って、板橋区で7月17日、「認知症になっても希望を持って暮らし続けられる社会」を目指した協議会が開かれました。出席者からは「周囲の人が認知症を理解し、積極的に手助けすることが大切だ」という意見が出されました。
板橋区で開催された認知症協議会は、都内で唯一という官民が連携して認知症の対策を話し合うもので、区内の公共施設の職員や地域の民間企業の担当者に加え、認知症の当事者も出席しました。
東京都健康長寿医療センターの岡村毅医師は「いまや認知症、長生きすればなるのは当たり前。認知症があってもなくても幸せに暮らせばいいというのは医学教育の常識になっている」と話しました。また、認知症当事者が「すごく簡単な作業だと思っていたのができないことが、顕在的にポンとある。やりたくないわけではないのです。やりたいけれどやれない。会社を辞めざるを得ない状況に追い込まれてしまって、収入を得ることが難しくなってくる」「認知症の人は病気に見えない。診断書をかばんに付けて持ち歩いているが『病気を言い訳にしている』と言われ、受け止めてもらえないような状況」などと語りました。
認知症の当事者が抱える“生きづらさ”を聞いた出席者はまず、多くの人が認知症について正しく理解し、地域で積極的に手助けしていくことの重要性を共有しました。
グループワークに参加した民間企業・取締役の男性は「認知症、特に現役世代の若年性認知症の人がいることへの社会の理解は少ない。勉強する機会というのが一番大事かなと思う」、区の施設職員は「われわれから(認知症を)察知して声かけをすることができればいいが、なかなか現実としては難しい。ぜひ助けを求めてもらえれば、そこがきっかけでいろいろできることもあるのではないか」などと話しました。
<“地域で支える”広がる認知症対策>
板橋区では「認知症になっても自らの権利や意思が尊重され、能力を発揮し、希望を持って暮らせる社会」を『認知症フレンドリー社会』と定義しています。その実現に向け、今回紹介した協議会や正しい理解を深めるための講演会、もの忘れについての無料相談会などを開いています。また、地域での見守り体制を強化するため、道が分からなくなって困っている人に対して声をかける訓練を行っているほか、認知症の人の集い場を目指したカフェの登録も進め、区内に34カ所登録されています。
多摩市では「認知症を自分事として捉えている高齢者だけでなく、子どものうちから認知症に関する知識を身に付けてもらい、身近な人が認知症になった時の受け止め方を学んでもらう」取り組みを進めています。市役所や市内の公共施設で認知症について“子ども向けのパンフレット”を配布していて、漫画やイラストを用いて「身近な人が認知症になった場合の具体例」や、認知症の患者と関わる上で必要な知識を分かりやすく説明しています。そのほか、地域のイベントなどで認知症を題材とした絵本やワークシートを用いた子ども向けのミニ講座も開催しています。
子どもを含めたさまざまな世代や地域全体で認知症の人を見守り、支え合う体制づくりが広がっています。
この記事が気に入ったら
「TOKYO MX」 公式
Facebookアカウントを
いいね!してね