今回の東京都知事選挙ではポスターの掲示板の枠が不足し、一部の候補者が枠の外にクリアファイルを使って設置する前代未聞の事態となりました。この「選挙ポスター」掲示を巡って、東京都選挙管理委員会の対応について候補者らが相次いで異議を申し立てています。専門家は設置作業に伴う不公平さを指摘しています。
選挙後の7月10日に会見を開き「平等ではない」と声を荒らげたのは、都知事選に立候補した小林弘さんです。小林さんは「6月20日(=告示日)くじ引きの当日、くじが終わった後に『このように小林さんは貼ってください』と言われた。誰がどう考えたって平等じゃない。こんな平等じゃない選挙、認めていいんですか?」と訴えました。
都選管は今回の都知事選に向け、都内1万4000カ所に48人分のポスターが貼れる掲示板を用意していました。しかし都知事選に出馬したのは過去最多の56人で、48人を超えた49番目以降に立候補を届け出た8人の候補者は、掲示板の枠の外にクリアファイルで固定しポスターを掲示することになりました。告示日、都選管の担当者はこの設置方法について「ポスターをしっかりと掲示するための対応」だと説明していました。当時、担当者は「実際に掲示場の増設が物理的に困難な場合、候補者のポスターをしっかりと掲示できるようにするというのが法の趣旨。候補者にわれわれができる精いっぱいの対応だと考えている」と話していました。
50番目に立候補をした小林さんは告示日の段階ではクリアファイルによる掲示を受け入れていました。「掲示板のポスターと比べてどうか」と記者団に問われた小林さんは、告示日当時「うーん、まあね。僕のポスターが一番かっこいいと思うからいいかなと思う」と話しました。しかし、選挙終了後に実際に掲示板を見てみると、かなり補強はしてあるものの、強い風が吹くと剥がれてしまいそうなポスターや、剥がれて地面に落ちてしまっているポスターなども見られました。
小林さんは選挙期間中に10回ほどポスターが剥がれ落ちたことで、毎回貼り直しの作業を求められ、日常の仕事や選挙活動に支障を来したことなどから、都選管に対して選挙無効の異議を申し立てるとともに、選挙費用2000万円の損害賠償を求めて提訴しました。ポスターなどの対応を巡ってはこれまでに小林さんを含めて3人が都選管に異議を申し立てていて、その他、一部の候補者も不公平さを主張しています。
選挙制度に詳しい日本大学の安野修右専任講師は、候補者に追加の作業を伴うポスター掲示の対応は「公職選挙法の理念」に反すると指摘します。安野専任講師は「『まずいなんてものじゃない』っていう考え方になるのではないか。公選法全体の理念は、立候補した候補者に対してなるべく均等な選挙機会を与えるのが一番根本的な理念、考え方。超える見込みができた段階で、選択肢としてはポスター掲示場の枠そのものを大きくする以外ない」と指摘しています。
小池知事は12日の定例会見で、クリアファイルによる掲示について「都選管はご承知のように独立した機関。今回の判断については選管にお聞きいただければ」と述べました。一方、都選管の担当者は候補者らの訴えについて「受け取った異議申し立てについて内容を確認し、精査しながら適切に対応していく」と話しています。
この記事が気に入ったら
「TOKYO MX」 公式
Facebookアカウントを
いいね!してね